ロシア連邦:弾圧の手は教育にまで 教師の解雇、生徒の教化

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2022年5月30日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ロシア連邦
トピック:

ロシアでウクライナ侵攻反対などを唱える者に対する弾圧は、市民社会組織に対してだけではない。教育や学習の自由も踏みにじられている。教育者たちは反ウクライナのプロパガンダを広め、ロシアのウクライナでの「特別作戦」を美化するよう強制され、従わない者は職を失う。

アムネスティのもとには、反戦を口にした教師が解雇され、子どもたちはウクライナ侵攻を正当化する政府の主張を授業で押し付けられているという、憂慮すべき情報が届いている。

反戦への報復

何十人もの学校の先生や大学の講師が、ウクライナでの戦争に反対する発言をしたために、厳しい報復に遭っている。ある者は、公の場や授業で意見を述べただけで、行政処分で投獄され、あるいは高額の罰金を科されている。また、解雇や懲戒処分を受けた者もいる。

ボルゴグラード州立大学の准教授は、SNSで他ユーザーの反戦メッセージを再投稿して、「倫理・道徳的規範に反する」として、4月19日に懲戒解雇された。大学は、地元検察から、准教授に対する行政処分手続きの通告を受けていた。

生徒や同僚に警察に突き出された教師もいる。サハリン島コルサコフの英語教師は、休憩時間中の生徒との会話で戦争は「間違いだった」と口にしたために、4月5日に解雇された。生徒がその会話をビデオに録画しており、それを見た別の生徒の母親が、教師を警察に通報したのだ。裁判所に呼び出され、「軍隊の信用を傷つけた」として3万ルーブル(約6.5万円)の罰金を科された。

ロシア中部ペンザ市の英語教師は、ロシア軍に関する「偽のニュースの流布」という新たに設けられた刑事罪で、実刑判決を受ける可能性がある。3月30日、彼女は侵略を批判し、ロシアを「あらゆる異論が思想犯罪とみなされる全体主義国家」と呼んだことで、起訴された。通報したのは、担当クラスの生徒(8年生)だった。

戦争プロパガンダの授業

学生は、教化に等しい戦争プロパガンダを受けているようだ。これは、ロシアが遵守すべき国際法に定められた権利としての教育の目的に反するものだ。ロシアの独立系新聞「コメルサント」によると、2月28日には早くも、7年生から11年生までを対象に「戦争」に代わる用語として強要される「特別軍事作戦」についての授業が行われた。

教師からのリーク情報をもとにした同メディアの報道によると、生徒たちはウクライナでの戦争は「戦争ではなく、ドネツク、ルハンスクの両人民共和国の住民を守る」ための「特別平和維持活動」だと教えられているという。また、子どもたちは「反ロシア制裁」が国民経済に良い影響を与えるとも教えられている。

こうした授業は、非常に強く推奨されているものの、義務化はされてはいない。しかし4月20日、ロシアの教育大臣は、9月1日から全学校において「特別平和維持活動」の目的に関する授業を設けると発表した。

また、コメルサントによれば、ロシア政府は教育機関に対し、建物の外壁や教室に(ウクライナでの戦争を支持することを示す)「Z」のシンボルを設置するよう「強く」推奨している。さらに、多くの学校や幼稚園が、「特別平和維持活動」を支持する国主導の「フラッシュモブ」への参加を誘導され、集会参加の自由を謳う国際人権法に反して、子どもたちが参加させられているという。

どんな形で反対しても摘発が繰返されているため、これまでに何人の教師や生徒が、反戦を表明しただけで教育から排除されたか、知る由もない。国家ぐるみの洗脳を受けた子どもたちの数も、永遠にわからないだろう。

教育者は、政治的干渉を受けず、報復をおそれず、自由に意見を述べたり、教えたりする権利を持つ。教育者と生徒の間でいろいろな考えや情報を交換する自由もなしに、将来の世代の健全な発展や多様で活気ある社会の創造は望めない。

教師や生徒の意見を封じるのは、表現の自由の権利を侵害するだけでなく、知的空間への攻撃であり、教育を受ける権利を踏みにじるものでもある。ロシア当局は、子どもや若者に対する教化を直ちに中止し、反対意見を表明しただけの教育者を罪に問うのをやめなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2022年5月12日

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