ミャンマー(ビルマ):地雷で多数の市民が犠牲に 問われる国軍の戦争犯罪

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2022年8月 1日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:

ミャンマー国軍は、南東部カヤー州や周辺地域に対人地雷を敷設し、多数の民間人を殺傷してきた。この行為は戦争犯罪にあたる。

無差別に人を殺傷する地雷は、国際的に禁止されている。埋設された地雷は、避難者の帰還や農地の耕作などに長期にわたり深刻な影響を及ぼす。にもかかわらず、国軍は、民家の庭や室内、教会の周囲などに多数の地雷を仕掛けてきた。

国際社会はミャンマー国軍による市民への残虐行為に何らかの対応を取るべきだ。ミャンマーへの武器の流れを断ち、戦争犯罪に加担した者の責任を問う取り組みを支援しなければならない。

6月25日から7月8日にかけて、アムネスティの調査員はカヤー州デモソ、プルソ、ロイコーの各郡区の住民、合わせて43人に聞き取りをした。また、地雷の被害者、爆発の目撃者、被害者の対応に当たった医療従事者、地雷を除去した人たちなどにも話を聞いた。

昨年5月、カヤー州で国軍と少数民族カレンの武装勢力との間の紛争が再燃する事態になったが、この3地域は激戦地になっている。

国軍は地雷を自ら製造するが、その代表的なものがM-14とMM-2だ。M-14は、人の足やくるぶしを削ぎ落とし、MM-2は人の脚や膝も吹き飛ばすほどの破壊力を持つ。MM-2で出血死に至ることもある。

相手を選ばず殺傷する地雷の使用は、慣習国際人道法や対人地雷禁止条約で禁止されている。世界の地雷やクラスター爆弾の問題に取り組む市民団体ランドマインモニターによると、2020年、2021年で一国の軍が対人地雷を使用した国はミャンマーだけだったという。

被害者は民間人

デモソ郡区の村に暮らしていたルーレーさん(62歳)一家は、国軍の空爆を受けた近隣の村で犠牲者が出たため2月末に村を脱出した。3カ月後の6月10日、自宅の所持品を持ち出すために自宅に一度戻ることにして、他の住民とともに帰路についている時に悲劇に見舞われた。

野草の実を採ろうとして未舗装の道を歩いているときに地雷を踏んでしまったのだ。右脚の膝から下が吹き飛ばされたルーレーさんは病院に搬送中に大量出血で亡くなった。

ミャンマーの人権団体「カレンニー人権グループ」によると、昨年6月以降、カヤー州では地雷による民間人の死傷者は少なくとも20人いるという。地雷の除去に取り組む活動家や地元の支援者などによると、国軍が埋設する地雷の数が急増している。

ロージーさん(52歳)とマテインヤーリンさん(17歳)の母娘も同様の悲劇に遭遇した。4月初め、ロイコーにある自宅に戻る途中、地雷を踏んでしまった娘のマテインヤーリンさんは、右脚の膝から下を吹き飛ばされ、左脚には地雷の断片が刺ささる大怪我を負った。今は、友人が贈ってくれた車椅子を使っている。その後、自宅が破壊されたこともあり、2人はもう村には戻れなくなった。

彼女は新型コロナウイルス感染症がまん延する前に11年生(高校2年生)になっていたが、国軍のクーデターで学校に行けない事態が続いている。しかし自分の身に起きたことにはめげずに、「勉強を続けたい。いずれは義足をつけたい」と目を輝かせた。

教会への襲撃

アムネスティは6月27日、プルソ郡区のドーンガイクー村の聖マタイ教会を訪ねた。この地域で戦闘のあった6月半ば、国軍は教会の敷地に少なくとも8個の地雷を仕掛けた。

アムネスティは、正面入り口への通路や教会の裏手など地雷が取り除かれた跡を確認した。地雷を撤去した人たちによると、まだ見つかっていない地雷があるという。地雷は、教会だけでなく家屋の中や周辺にも仕掛けられた。国軍兵士が捨てていった制服や薬きょう、使用済みの弾薬なども散乱していいた。

教会と司祭館は、兵士に焼き払われていた。アムネスティの調査は12日後のことだったが、司祭館内の穀物はまだくすぶっていた。

ドーンガイクー村から来た女性(41歳)はアムネスティにこう話した。「教会は村の象徴だった。自分たちの所有物が心配だったので、運べるものは教会に持ってきた。教会は神聖な場所だからまさか攻撃されることはないと思っていたのに」

増える避難民と深まる恐怖

アムネスティが入手した情報によると、国軍はこの数カ月間にプルソ、デモソ、ロイコーにある少なくとも20の村に地雷を埋めていた。カヤー州の他の村やシャン州南部の村全体では、さらに多くの地雷が埋設されている可能性がある。

国軍は駐屯地の近くや撤退した地域にも地雷を敷設していた。シャン州南部メビエとカヤー州プルソを結ぶ道路沿いの地域は、特に地雷の数が多いという。

これらの地域の避難民の話では、民族武装組織の戦闘員から「地雷があるから戻ってはいけない」という警告を受けていた。この警告もありこれまでの犠牲者は比較的少なかったが、避難した人たちの多くは「自宅の物が大丈夫か確認したい」「植え付け期に畑仕事をしたい」という思いが強い。

地雷汚染は広範囲に及んでいるが、地雷除去作業の大半は、専門的な訓練を受けていない武装組織の隊員の手作業で行われている。

紛争と地雷をめぐりミャンマーの紛争地やその周辺で暮らす人たちが抱える問題の根は深い。深刻化する食糧不足、地雷被害者のリハビリや心のケア、紛争終結後の地雷除去作業とその資金調達などが山積する。これらの課題に対応するには、人道的対応の強化が早急に求められることも忘れてはならない。

国軍は地雷の使用を直ちに停止するとともに、世界の大多数の国が参加する地雷禁止条約に加盟すべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2022年7月20日

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