- 2022年11月11日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ミャンマー(ビルマ)
- トピック:企業の社会的責任
アムネスティはミャンマー空軍の航空燃料のサプライチェーンを調べる中で、多数の市民を巻き込む空爆に使用される航空燃料の提供に関与する企業名が明らかになった。国際社会は、ミャンマー国軍への航空燃料の出荷を早急に停止させる必要がある。
調査でアムネスティは、2021年2月の軍事クーデターで国軍が権力を握って以降の航空燃料のサプライチェーンだけでなく、荷積された燃料がミャンマーの港で陸揚げされ、民間人を殺害する違法な空爆に使われるまでの経路を調べた。
戦闘機による空爆は、民間人を恐怖に陥れ、多数の犠牲者を出してきたが、燃料がなければ戦闘機は飛び立つことも攻撃することもできない。
国軍への航空燃料の供給に関わる船舶代理店、船主、海上保険会社は、ミャンマーの人びとの人権を蔑ろにし、戦争犯罪、人道に対する罪などの重大な人権侵害を批判されてきた国軍に加担することになる。これらの企業はサプライチェーンから即刻、離脱すべきだ。
今回の調査では、ジャスティス・フォー・ミャンマー(JFM・正義と説明責任を求めるミャンマーの活動グループ)の参加と、ビルマ・キャンペーンUKなどの市民団体の協力を得た。調査では、関係企業から漏洩した社内文書や企業が提出した文書、船舶追跡データ、衛星画像、ミャンマー国軍の脱走者やプーマ・エナジー社の関係者への聞き取りなどを実施した。
空爆を受けた人たちからの証言も得た。昨年2月のクーデター以来、国軍による空爆で民間人2,300以上が亡くなっている。
東部カヤー(カレンニ―)州の村への空爆を目撃した男性(73歳)は、「巨大な騒音とともにジェット機が低空飛行でやってきて、最初は爆撃し、その後旋回して機関銃で撃ってきた」と話した。
サプライチェーン企業
企業には、その事業場所を問わず人権を尊重する義務がある。しかし、今回の調査で複数の企業がミャンマー国軍の戦争犯罪に関わっていることがわかった。
2015年以降、ミャンマーで航空燃料の輸送、保管、流通に関わってきた外国企業の筆頭は、多国籍商社大手トラフィグラ傘下のエンジニアリング企業プーマ・エナジーだ。同社は、子会社のプーマ・エナジー・アジア・サン(PEAS)と合弁会社のナショナル・エナジー・プーマ・アビエーション・サービス(NEPAS)を通じて、ミャンマーで事業を展開してきた。
プーマ・エネルギーによると、昨年2月以降、今年10月5日までは、民生用航空燃料に限定していたというが、アムネスティの調査結果はそうではなかった。
調査によると、国軍の航空機燃料の大部分は、PEASが管理するヤンゴン・ティラワ港経由でキャンマーに入っている。その後ターミナルで保管され、タンカートラックで空軍基地とNEPASに輸送されていた。NEPASの貯蔵施設の中には空軍基地に隣接する施設もあった。
アムネスティは9月26日、プーマ・エナジーにこれらを裏付ける証拠を提示すると、その10日後、同社はミャンマーから撤退し、ミャンマーでの事業を売却すると発表した。
プーマ・エナジーは撤退するだけでなく、市民が受けてきた損害に責任を持って対応する必要がある。まずは、空爆を受けた地域の代表者との協議の席につき、賠償手段を検討することから始めるべきだ。
空軍基地までの物流
プーマ・エナジーだけでなく他の企業も、国軍向け航空燃料のサプライチェーンに深く入り込んでいる。
昨年2月から今年9月17日にかけて、PEASが管理する港湾ターミナルで少なくとも7隻の石油タンカーから航空燃料の積み下ろしがあった。
アムネスティは、このうち4つの出荷先と日付を確認した。ペトロチャイナ100%出資のシンガポール石油会社(SPC)(2021年12月)、ロシアのロスネフチ(2021年12月)、シェブロンシンガポール(2022年2月)、タイ石油(2022年6月)である。タイ石油とペトロチャイナSPCの船荷は、ミャンマー空軍向けであることがわかっている。また、エクソンモービルが2022年6月の出荷に関係している。
ロスネフチ、シェブロン、タイ石油の各代表によれば、ミャンマー当局から「燃料の利用は民生目的に限定する」との確約を得ていたとのことだ。タイ石油は「そのような懸念すべき問題がなくなるまでミャンマーへの航空燃料の販売を停止する」とコメントした。ペトロチャイナSPCからの回答はなかった。
ノルウェーの船会社ウィルヘルムセンと韓国の船主パンオーシャンも、国軍への航空機燃料の運搬に大きく関与していることが判明した。
ウィルヘルムセンは、船荷は非軍事目的だとの見解を示す一方で、「ミャンマーの港で航空燃料を荷下ろしする船舶や荷主に対する代理業務も内容を問わず直ちに停止する」とした。パンオーシャンからの回答はなかった。
空爆の惨禍
アムネスティは調査の中で、昨年3月から今年8月にかけて、カヤー州、カイン(カレン)州、チン州、サガイン州であった16回の空爆についても調べた。その中には、無差別に犠牲者を出すとして国際的に禁止されているクラスター弾が使用された例もあった。
これらの空爆により、少なくとも15人の民間人が死亡し36人が負傷した。また、住宅、宗教施設、学校、医療施設、避難民キャンプが破壊された。
メディア報道や別の人権関連文書によれば、民間人が犠牲になった空爆はミャンマー全土であり、民間人死傷者の実数は公表されている数字よりずっと多い可能性がある。空爆のほとんどで、攻撃対象となった地域にいたのは無防備の民間人のみだったようだ。
空爆を仕掛けるミャンマー国軍にとって、航空燃料の購買、輸入、保管、運搬に関わる企業の存在は不可欠なだけに、関係企業は今こそ、サプライチェーンから離脱し、国軍との関係を断ち切るべきだ。
アムネスティ国際ニュース
2022年11月3日
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