日本:終わりなき収容 入管法改悪の動きに声を上げる移住者

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2023年3月18日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:日本
トピック:難民と移民

日本政府が、国会に提出した「出入国管理及び難民認定法等の一部を改正する法律案」には、当局が移民らを無期限に収容する権限を強化する抑圧的な内容が含まれ、庇護希望者などから日本の出入国管理制度が抱える非人道性を批判する声が上がっている。

今回、アムネスティ・インターナショナルは数年間も収容されている人を含む、30人あまりの移民や庇護希望者に聞き取りを実施した。その証言から、入管収容の過酷な状況や当局の対応の中で、被収容者の中にはハンガーストライキや自死に追い込まれている人たちがいる実態が明らかになった。

国会では移民の権利を侵害する入管法改正法案の手続きが始まっている。

「移民や庇護希望者の証言は、日本の難民申請に関わる過酷な現実を浮き彫りにしている。彼らが語るのは、必要な時に誰からも支援を得られず、監獄のような入管施設での恣意的で終わりの見えない収容の実態だ」とアムネスティ日本の中川英明事務局長は言う。

「日本の入管収容制度に改革が必要なのは明らかであるにも関わらず、当局は庇護希望者や非正規移民の収容を可能にする改正法案の成立に向けて動いている」

2度目の改正法案提出

日本政府は、庇護を求めて入国した人や入国後に庇護を求めようとする人を含む非正規移民を無期限に収容することを可能にする入管法改正法案を国会に再提出する予定だ。

同法案では、恣意的で国際法違反となる収容を前提とする現行の入管法の根幹が維持されている。

政府は2021年2月に改正法案を国会に提出したが、その翌月、スリランカ国籍の庇護希望者ウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が入管施設内で亡くなったことに対する世間の激しい非難を受け、法案を取り下げた。

ウィシュマさんは繰り返し痛みを訴えていたにも関わらず、治療を受けられなかった。医者の診察を求めて何度も申請書を提出し、仮放免を求めた。最後に提出した申請書の文字は判読が困難なほどだった。

2022年8月に入管が実施した内部調査で、職員は仮放免を求めるウィシュマさんの嘆願を黙殺していたことが発覚した。また、職員はウィシュマさんが外に出たいがために仮病を使っていると考えていたことも明らかになっている。さらに、職員はウィシュマさんに「自分の置かれている状況を理解させるため」として、仮放免の申請を意図的に却下したことも判明している。

同法案は6月までの今国会の会期中、いつ通過してもおかしくない状況にある。

アムネスティ・インターナショナルは、現在収容中、あるいは過去に入管施設に収容された経験を持つ人たちを対象とする聞き取り調査を2022年10月から11月にかけて実施した。また、法務省管轄の出入国在留管理庁(入管庁)の職員や入管収容の問題に取り組むNGOの関係者にも話を聞いた。

これらの聞き取りを通じて、恣意的かつ無期限の収容や、暴行、独居拘禁、不適切な医療など入管職員による不当な扱いなど、被収容者に対する人権侵害事例が確認された。

日本の難民認定率はG20加盟国でも際立って低い水準にあり、2021年に認められた事例はわずか74件に留まっている。この年には1万件以上の申請が却下されており、認定率は1%未満とみられる。

庇護の拒否 自由のはく奪

聞き取りでは、被収容者の口から「懲罰」という言葉が何度も聞かれた。入管施設では、職員が「問題を起こした」被収容者に「懲罰」を与えることが常態化しており、中には独房に監禁されることもあるという。

ネパール人の元被収容者は、職員から身体的な虐待を受け「懲罰室」に放り込まれたと証言する。運動中だった当人が運動を中断して職員の話を聞かなかった、というのがその理由だという。

「何十人もの職員がやって来て、私を殴ったり平手でぶったりし、隔離室に連れ行かれた。その後の記憶はないが、気が付いた時には6時間が過ぎていた。また、医療や食事の対応がひどいと言っただけで何度も隔離された」

入管はウィシュマさんが亡くなってからは医療体制の改善に努めていると言うが、アムネスティが行った一連の聞き取りでは、ウィシュマさんの件に関する調査後も医療面での対応に改善があったと感じている人は1人もいなかった。

ソマリア出身の男性は次のように語る。「朝起きた瞬間から私たちは動物のような扱いを受ける。勉強したり学んだりする機会はないし、何もすることがない。あそこにいれば洗脳されてしまう」

ハンガーストライキと自殺未遂

収容施設から解放される方法は限られているが、その一つに期限付きの「仮放免」と呼ばれる措置がある。だが、仮放免が認められるのは稀であり、そもそもその要件に関する明確な基準がないため、認定プロセスは職員の裁量次第となっている。

たとえ仮放免されたとしても、財政的な支援を受けたり仕事に就いたりすることができず、医療保険など公的支援を得ることもできない。その結果、基本的な権利を享受することすらできない。にもかかわらず、被収容者は仮放免を求めて極端な行動に出ることもある。

「入管収容施設を出る唯一の方法は、病気になるか餓死寸前までハンガーストライキを続けるかしかない。ただ、仮放免を認められても外にいることができるのは2週間だけで、その間に病気を治さないといけない」と被収容者は語る。

入管庁は「この5年で餓死したのは1人だけだ」と話す。

今回聞き取りをした被収容者や元被収容者の中には、自殺未遂を目にしたという人が複数いた。

被収容者の1人は、「自分の喉を切って死のうとしていた人がいたし、洗剤を飲んで死のうとした人もいた」と語った。

他にも首を吊る、自分の首を絞める、大量の薬を摂取して自殺を図るなどの目撃談があった。聞き取りに応じた1人は、自らも自殺を図ったことがあると話した。

2022年11月18日には、東京出入国在留管理局に収容中の50代のイタリア人男性がテレビのコードで首を吊って亡くなった。仮放免許可が取り消され、再収容された直後のことだった。

アムネスティの調査によれば、2007年以降、入管施設で亡くなった被収容者は17人で、そのうち自死と見られるのは本件で6例目になる。

「こうした証言からも、日本政府が入管施設への一律収容、長期収容を廃止すべきなのは自明だ。収容する場合でも、その期間は可能な限り短期間で、残虐で非人道的または品位を傷つけるような取り扱いをしてはならない」(アムネスティ・インターナショナル日本・中川英明事務局長)

「収容の要件やその法的根拠、収容期間に異議を唱える権利を被収容者に与えるべきであり、収容中は適切で迅速な医療を提供しなければならない。今回、政府が提出した改正法案は、こうした点をすべて素通りしている。即刻廃案とし、庇護希望者や非正規移民の尊厳が保たれるような内容の法案に差し替えるべきだ」

背景情報

国際人権法に基づき、移民、難民、庇護希望者は自由であるという法的推定を受けなければならない。仮に被収容者の自由を奪うのであれば、その行為は法律で明確に規定され、正当な目的により厳格に正当化され、必要かつ妥当で、非差別的なものでなければならない。

国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会は、出入国管理上の無期限の収容は市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)に違反するとしている。また、現在の日本の収容方針は恣意的拘禁にあたり、司法審査の機会が与えられていないことは自由権規約に違反するともしている。

アムネスティ国際ニュース
2023年3月14日

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