トルコ:震災後の対応で軽視される障がい者

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2023年5月16日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:トルコ
トピック:

大地震発生後のトルコにおける人道的対応で、避難生活を送る障がい者が見過ごされている。当局や人道支援団体の支援不足の中、障がい者は人としての尊厳や健康の権利が損なわれ、不自由な避難生活を強いられている。アムネスティの現地調査で明らかになった。

2023年2月6日、トルコ・シリア地震に見舞われたトルコでは、48,000人以上が亡くなり、10万人以上が負傷した。負傷者の多くが手足を失ったり大怪我を負ったりした。避難民は330万人にのぼるとされ、そのうちの約230万人が、テントやコンテナ生活を強いられている。トルコ政府と国連の合同評価では、負傷者の7割が障がいを抱えることが予想されるという。

大災害時の被災者対応が画一的なため、障がい者が尊厳ある生活を送るのに必要な要件が抜け落ち、多くの障がい者が健常者と同等の支援を受けることができていない。トルコ政府と支援機関は、障がい者への人道的対応で特段の配慮を早急に検討し実施すべきだ。

今回の地震が引き起こした人道危機の規模は尋常ではなかったとはいえ、アムネスティは障がい者の権利はいかなる場合も十分に尊重されるべきだと考える。

アムネスティは震災翌月の3月と4月に、主にトルコ南部の4県(アディヤマン、ガジアンテプ、ハタイ、カフラマンマラス)、21カ所を訪れ、障がい者34人(女性10人、男性15人、子ども9人)に計131回の聞き取りをした。

避難所で不足する対応

アムネスティが訪れた21カ所のいずれの被災者キャンプでも、身体が不自由で移動に難がある人たちにとってトイレや水などの衛生施設の利用が困難な状況にあった。そのため、利用できない人は介護者に頼る、あるいは大人用おむつなどを利用していた。

糖尿病で両足の一部を失ったシリア難民女性(48歳)は、「共用トイレを使えない。車椅子からコモード(トイレ椅子)への移動に家族の手を借り、利用のたびにコモードを空にしないといけないから」と話した。

母親を失い、自身も右足を失った少女(13歳)は、おむつの使用を余儀なくされ、着替えと体の手入れを姉(18歳)に頼っていた。姉は「時々、『悪夢か』と思ってしまうけれど、『現実だ』と言い聞かせる」とアムネスティに語った。

この緊急対応は、人権への義務だけでなく、包括性と非差別性の人道原則から見ても不十分だ。アムネスティが聞き取りをしたほぼすべての障がい者や移動困難な高齢者は、食糧や衛生用品などの配給物資を手にすることができず、親族に頼るしかなかった。

専門医療が急務

アムネスティの調査で、車椅子などの補装具不足や、リハビリ支援の中断などが起きていたことも明らかになっている。

ハタイ県のアンタキヤ中心部にある避難民キャンプにいる身体に障がいのある娘2人を持つ女性(58歳)は、「地震で自宅が倒壊し、代替の住居はまだ提供されていない」と話した。

大地震で被災地の障がい者施設の倒壊や損傷、職員の死亡、負傷、避難などがあったため、障がい者を含む保健サービスの提供が全面的に滞る事態も起きていた。

既存のニーズと発展途上のニーズに対応するために、メンタルヘルスと心理社会的支援サービスの規模拡大が急務となっていた。

アルツハイマー病の夫と障がい児2人と暮らし、自身もがんを患う女性(51歳)は、カフラマンマラシュ県の3階建ての自宅が倒壊した。夫婦と子ども2人は5日後瓦礫の下から助け出されたが、残る家族数人が亡くなった。その女性は、精神疾患を持つ息子のことが常に気がかりだと言う。「息子は時々、(見ず知らずの)女性の頭巾をつかんでしまう。すると、(女性に)叩かれ、罵声を浴びる」と話した。また、仮設住宅近くの交通量の多い道路に座り込むこともあるため、「日中はテント外の木製パレットの板に息子の片足を縛り付けないといけない。自宅だったら自由にさせているのに」と嘆いた。

カハラマンマラス市郊外の仮設テントでは、女性(35歳)が3人の子どもと義理の両親と避難生活を送っていた。被災後、苦痛の表情を浮かべることがある5歳の娘が寝言を言う。夜中、トイレに連れて行こうと娘を起こすと、「地震があったの」と聞いてくるという。

求められる包括的対応

障がい者の権利に関する条約の締約国のトルコは、障がい者の人権と基本的自由の享受を促進・保護・保障するための措置を取ることが求められている。

トルコ政府と人道活動家は、障がい者や介護者が衛生施設利用の便宜を図る、あるいは支援全般を受けやすくするなどへの一層の努力が求められている。

これらの取り組みには、年齢、性別、障がい別のデータを集積したデータベースを構築し、人道支援者や医療従事者らの利用に供する必要がある。

今回の震災後の障がい者対応には明らかに問題がある。この人道支援上の失策の影響は、数世代先まで残るだろう。それだけに障がい者が各種施設やサービスを健常者と同様に利用できるようにすることが極めて重要と言える。

支援国は、トルコがかつてない危機に直面する中、人道的対応への支援や障がい者のニーズへの迅速な対応などの技術的、財政的支援の拡大に向け、一層の取り組みが必要だ。

アムネスティ国際ニュース
2023年4月27日

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