- 2025年10月 1日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
- トピック:企業の社会的責任
世界中の国々、公的機関および企業は、イスラエルの長期に及ぶ国際法違反の共犯者であり、支持者であり、あるいはあえて何もしないことで、それを可能にし、利益をあげている。国際法違反には、今なお続いている占領下のガザ地区に住むパレスチナ人に対するジェノサイド、被占領パレスチナ地域全土の違法な占領、パレスチナ人全員の権利を支配することによる残虐なアパルトヘイト制度がある。アムネスティは9月18日、各国および企業への緊急要請をまとめた報告書を発表した。
国家、公的機関、企業、大学や民間組織による、人命を犠牲にしてでも突き進んできた利益追求を終わらせる時だ。イスラエルの違法な占領および数十年にわたるアパルトヘイトは、経済関係と貿易によるイスラエルへの徹底した持続支援を必要としてきた。2年におよぶ容赦ない爆撃と進行中のジェノサイドは、武器や監視設備の継続的な供給を必要としてきた。今の惨状は、特権的な貿易関係、そして弁解の余地のないものには無視を決め込む国々と企業に支えられている。
これは止めなければならない。人間の尊厳は商品ではない。ガザのパレスチナ人の母親が、イスラエルのジェノサイドのため飢餓で衰弱する自分の子供を見守るほかないとき、軍需企業などは莫大な利益を手にし続けている。アムネスティは世界中のメンバーと支持者に対し、イスラエルの国際犯罪を支える政治がからんだ経済の即時終結を要求するよう呼びかけている。
この報告書は、各国がその義務を果たさなければならないと明確に述べている。それには、企業がイスラエルの犯罪に寄与、あるいは直接関わることを禁じることから、効果的な法律や規制を設け、購入や契約を破棄し中止させることまである。また各企業がとるべき行動も列挙している。販売や契約の停止、撤退などがある。
また、アムネスティは、イスラエルの違法な占領、ジェノサイドなど国際法違反の犯罪に加担していると特定した15の企業の名前を挙げている。米国の多国籍企業、ボーイング、ロッキードマーティン、イスラエルの軍需企業、エルビット・システムズ、ラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズ、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ、中国企業のハイクビジョン、スペインの製造業、コンストルクシオネス・イ・アウクシリヤル・デ・フェロカリレス、韓国の複合企業、HD現代、米国のソフトウェア会社、パランティア・テクノロジーズ、イスラエルのテクノロジー企業、コルサイト、イスラエルの国営水企業メコロットなどだ。
これらの15社は、一般市民を飢饉に追い込み、大虐殺を行い、数十年にわたりパレスチナ人の基本的人権を否定してきた政府を支えているほんの一部にすぎない。あらゆる経済分野、大多数の国々、多くの民間組織が、ガザにおけるイスラエルのジェノサイド、残酷な占領、被占領パレスチナ地域におけるアパルトヘイトを、承知の上で助長し、恩恵を受けてきた。
2024年9月18日の国連総会の決議から1年目に当たり、アムネスティは、各国と企業に対し、これらの緊急要請を発表する。同決議は、採択から12カ月以内にパレスチナ地域の違法な占領を終わらせるようイスラエルに求めていた。この決議は、2024年7月に国際司法裁判所(ICJ)が出した勧告的意見を実現するために採択された。同意見は、イスラエルによるパレスチナ地域の占領は違法であり、被占領パレスチナ地域におけるパレスチナ人に対する差別的な法律と政策は人種隔離・アパルトヘイト禁止に違反し、被占領パレスチナ地域におけるイスラエルの存在はすみやかに終了させなければならないとするものだ。
国連総会はその後、イスラエルの占領を終わらせるため、加盟国に対しICJ裁判所の指示を実行するために次のような具体的な措置を講じるよう求めている。自国民、企業、管轄下の組織がイスラエルの占領を支援・維持する行動をさせない、イスラエル入植地で生産された物品の輸入を止める、被占領パレスチナ地域での使用が合理的に疑われる場合、武器、弾薬、関連装備のイスラエルへの移転を停止する、パレスチナ地域でのイスラエルの違法な存在の継続に関わっている個人および団体に対し、渡航禁止、財産凍結などの制裁を科す、などである。
国連総会が定めた、イスラエルが被占領パレスチナ地区から撤退する12カ月の期限は2025年9月18日で切れたが、イスラエルは相変わらず日々、パレスチナ人を飢えさせ、殺りくしている。ほとんどの加盟国は、イスラエルが国連決議に従うよう圧力をかけることはほぼ何もしていない。各国は、自らが選択した正当化のできない無為を終わらせ、イスラエルの国際法違反に加担しているあらゆる行為を直ちに停止しなければならない。そうでなければ、アパルトヘイト、ジェノサイドなど国際法違反の人道に対する罪の共犯となるリスクを負うことになる。
アムネスティは、各国に対し、イスラエルへのあらゆる武器、軍事・治安装備およびサービス、監視、治安、軍事活動の支援に使用される監視機器や人工知能(AI)、クラウドインフラの供給を即時禁止するよう求めている。これには、自国の管轄地域を通り、港湾、空港、領空、領土経由で、イスラエルに向けた、武器、軍用・治安装備および関連部品の輸送、積み替えの禁止も含まれる。
アムネスティはまた、イスラエルのジェノサイド、アパルトヘイト、違法な占領に加担している世界中の企業との取引および投資の停止を、その企業の拠点がどこであろうと、求めている。これらには最低でも、占領下のパレスチナ地域における人権状況に関する国連特別報告者の報告書と違法入植に寄与している企業の国連データベースにリストアップされている企業が含まれる。各国は、自らの管轄内で事業活動をしている会社がこれらの禁止措置を確実に守るようにしなければならない。
イスラエルの違法な占領と国際法違反の犯罪、またはいずれか一方に加担している企業
アムネスティは、これらの企業の数社が何年にもわたり行ってきた人権侵害を記録しており、今回の報告書で名指ししたすべての企業に、イスラエルと被占領パレスチナ地域における事業活動に関する質問とともに、報告書で記述した人権侵害への懸念を表明する書簡を送った。2025年、5社のみが回答を寄せ、報告書にはその内容が反映されている。
アムネスティは、占領下にあるガザ地区で行われた違法な空爆に、ボーイング製の爆弾と誘導キットが使用されたことを記録している。特に、イスラエル軍は、ガザ全土で多数の子どもを含む多くのパレスチナ人市民を殺害した一連の空爆で、統合直接攻撃弾やGBU-39小直径爆弾などのボーイング製の武器を使用した可能性が高い。
ロッキードマーティンは、F16戦闘機と、イスラエルの艦隊強化を支えるF-35戦闘機(ガザの爆撃に大規模に使用されたイスラエル空軍の屋台骨)を供給し補修を行っている。
イスラエル最大の軍需企業3社(エルビット・システムズ、国営ラファエル・アドバンスド・ディフェンス・システムズ、イスラエル・エアロスペース・インダストリーズ)は、イスラエル軍に年間数10億ドル規模の軍事・治安関連製品・サービスを提供している。その中には監視用および武器を搭載したドローン、徘徊型兵器、国境警備システムが含まれ、イスラエルはこれらをガザを含む被占領パレスチナ地域全土で軍事攻撃に継続的に使用している。エルビット・システムズ(アムネスティの追加情報提供要請に回答した唯一の軍需企業)は、アムネスティの懸念を否定し、自分たちは合法的に事業活動を行っており、「国際社会で認められた主権国家で制裁対象ではない政府」に供給していると反論した。
ハイクビジョンの監視製品・サービスは、パレスチナ人に対するアパルトヘイト体制に使われ、コルサイトは、イスラエル軍がガザでの攻撃に利用している顔認識ソフトウェアの開発と販売を専門としている。
米国の人工知能の企業、パランティア・テクノロジーズは、ガザでのイスラエルの軍事活動に関わるAI製品・サービスを、イスラエル軍と諜報機関に提供している。
メコロットは、パレスチナ人を差別し、違法な入植のイスラエル人に都合の良い形でヨルダン川西岸地区の水道施設と水路網を運営し、イスラエルの違法な占領を支えている。 コンストルクシオネス・イ・アウクシリヤル・デ・フェロカリレスは、イスラエルの入植地拡大を促進するエルサレムのライトレール(新型路面電車交通)プロジェクトを支援し、HD現代は、被占領パレスチナ地域での違法な取り壊しに使用される重機の製造・保守・サービスを行っている。
また、大手オンライン旅行会社のエアビーアンドビー、ブッキングドットコム、エクスペディア、トリップアドバイザーが、被占領パレスチナ地域におけるイスラエルの違法な入植の維持、強化、拡大に加担していることを、アムネスティは2019年に指摘している。これらの企業には、イスラエル入植地での事業から責任を持って撤退するよう要請したが、宿泊施設や観光情報などが掲載され続けている。
これらの企業は、人権に対する責任を果たさなければならない。さもなければ自らの行動の報いを受けることになる。どのような形であれ、イスラエルの違法な占領と国際法違反の犯罪に加担してはならない。それを怠れば、企業、従業員、役員は民事責任を問われる危険を冒すことになり、場合によってはイスラエルの犯罪をほう助した刑事責任を問われる可能性すらある。
アムネスティは、これらの企業に対し、武器、その他軍装品、治安装備、監視機器、被占領パレスチナ地域での人権侵害を助長、あるいは直接かかわる重機、部品、物品、サービスなどのイスラエル向け販売、納入を即刻停止するよう求めている。各国、公的機関、その他の企業は、これらの企業への投資を通じて、それぞれの影響力を行使し(責任を持った撤退や購入停止など)、このような販売活動を止めなければならない。
各国は、イスラエルへの販売製品に関連する見本市、政府の会合、契約、研究助成金、公共団体との活動から、これらの企業を締め出すべきだ。これらすべての措置は、当該企業がイスラエルの違法な占領、あるいは国際法違反の犯罪に加担していないと示すまで、継続しなければならない。
アムネスティは、世界の人びとに平和的な行動を取るよう要請する。市民社会、一般市民は、すべての国が義務を順守し、イスラエルの犯罪に加担、あるいは直接関わった企業に責任をとらせるため、結集し、運動を展開するべきだ。国や企業が、パレスチナ人の死、破壊、途方もない苦悩から自分たちの収益が生まれていると知りながら、目を背け、犠牲者をものともせず、事業の仕組み・収益構造を維持し、富をほしいままにしていることは、到底許されない。パレスチナの人びとの計り知れない苦しみを、これ以上一刻たりとも、容認することはできない。
背景情報
2024年1月、国際司法裁判所(ICJ)は、ジェノサイド条約の下、ガザのパレスチナ人の権利が、回復不能な損害が生じる、現実的かつ差し迫った危機にあると認め、イスラエルにジェノサイドの行為を防止するため、その権限の及ぶ限り、あらゆる措置を取るよう命じた。ICJはまた、すべての国にジェノサイドを防止・抑止・処罰する義務があることも断言した。ICJは、2024年3月と5月に、さらに2つの命令を出して、イスラエルにその要請を繰り返し伝えたが、これらすべては今なお、無視されている。
2024年12月、アムネスティは、イスラエルがガザのパレスチナ人に対し、ジェノサイドを行っていることを明らかにし、それ以来、国際社会の専門家たちの間で、ジェノサイドが進行中だとの意見の一致が広まっている。
2024年9月、国連総会は、イスラエルに12カ月以内に被占領パレスチナ地域から撤退することを求める決議を採択した。2024年12月には別の決議を採択し、「1967年以降イスラエルが占領している、東エルサレムも含むパレスチナ地域からの撤退と、パレスチナの人びとの不可侵の権利の実現」を求めるとともに、各国に対しては「被占領パレスチナ地域の入植活動への援助・支援を行わないこと、特に入植に関わる目的で使用される、どのような支援もイスラエルに提供しないこと」を要請している。
アムネスティ国際ニュース
2025年9月18日
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