- 2026年9月 8日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:アルゼンチン
- トピック:

ハビエル・ミレイ政権下のアルゼンチンで、国家による監視が強まっている。政権発足から2年間で監視能力が強化され、プロファイリング(個人・集団の特性や行動パターンなどを分析し分類すること)の実施が広がり、異議を唱える人びとへの報復措置が増えた。これによりプライバシーの権利が脅かされるだけでなく、人びとが自由に発言し、平和的に集まり、団体を結成することをためらう状況が生まれている。
アムネスティは新しく発表した報告書で、ミレイ政権が大規模な制度改革を進め、情報収集能力を高めることで、監視の仕組みを強化してきた実態を明らかにした。制度改革は大統領令や省令によって行われ、2024年、25年には、SNSを監視するツールや顔認証技術、航空機やドローンを利用した空中監視システムなど、少なくとも120万ドル相当の関連技術を導入している。このように、制度改革と監視技術の導入が重なり、広範な監視体制につながっている。
オフラインでもオンラインでも行われる監視が、アルゼンチン市民に与える影響は深刻だ。監視技術は、異議を唱える人びとを標的にし、抗議活動を萎縮させ、社会的に弱い立場にある人びとへの嫌がらせに利用されるなど、権威主義的な社会統制の手段になっている。責任追及を逃れようとする権力者が、疑問を投げかける人びとを攻撃し、あらゆる手段を使って監視し、統制し、弾圧しているのだ。
今回の報告書は、ジャーナリストや活動家、年金生活者、若者、人権活動家ら21人への聞き取りに加え、監視技術の調達に関する多数の文書やデータ、情報公開請求で入手した情報をもとにしている。
広がる監視体制
アルゼンチン政府が調達した監視技術の中には、SNSやウェブサイト、ダークウェブ、個人データ、技術インフラ、その他公開データベースから大量の情報を横断的に収集・分析し可視化するシステムもある。
政府は顔認証ソフトのライセンスも購入しており、調達先には法的根拠がないまま生体データを大規模に利用してきた企業もある。さらに、自動追跡機能や赤外線カメラ、映像のリアルタイム送信機能を備えたドローンと、そのドローンを操作するための地上設備も調達している。
「私たちはずっと前から監視されています。歩いてどこかに行くと、突然、頭のすぐ上にドローンが浮かんでいることがある。2メートルも離れていない時もあります。どうしてそんなに近づくのでしょうか。プライバシーに踏み込み過ぎではないでしょうか」と、年金生活者の運動団体「Jubilados Insurgentes」のメンバー、アナ・タピアさんは話す。
ブエノスアイレスでは、年金生活者たちが毎週水曜日、政府の年金削減に抗議して国会までデモ行進している。
報告書によると、監視強化の影響はジャーナリストや活動家、移民など、さまざまな人びとに及んでいる。SNSや公共の場での発言や行動を自ら控えたり、特定されて狙われることを恐れて抗議活動への参加を減らしたりする人がいるほか、公の活動を計画する際により慎重な対応を取るようになった人もいるという。
世界に広がる監視技術を使った権威主義
これまでアムネスティは、監視技術の不適切な使用や悪用を世界各地で記録してきた。アルゼンチン当局によるAI監視の拡大も世界的な流れのひとつだ。国家によるこうした技術の利用が、大規模監視を商品として提供する企業の事業を後押ししている。その結果、プライバシー権や平等権、差別を受けない権利、表現の自由、平和的な集会の権利などがさらに脅かされるだけでなく、透明性や知る権利も危機にさらされている。
ここに述べた事態は、アルゼンチンだけの問題ではない。世界各地で、権威主義的な国家が監視技術の利用を拡大している。標的となっているのは人権活動家や若者、移民、社会的に不利な立場に置かれた人びと、故郷を追われた人びと、そして政権に批判的な人びとだ。その一方で、こうした監視を監督する仕組みや透明性は十分に確保されておらず、責任の所在も不明確なままだ。
アムネスティはアルゼンチン当局に対し、離れた場所から個人を識別する顔認証などの生体認証技術について、大規模な監視や特定の人びとを狙った差別的な監視を目的とした開発や製造、販売、利用を禁止するとともに、政府や企業による違法な利用をすべて禁じるよう求めている。
当局には、監視技術の調達や開発、製造、販売、輸出入を適切に規制する仕組みを整え、利用に関する明確な公的ルールを設けることも求められる。
アルゼンチンは、人権を守る姿勢を行動で示さなければならない。そのためにも、AIを使った監視を野放しにせず、こうした仕組みが引き起こした人権侵害については、加害者の責任を問うべきである。
アムネスティ国際ニュース
2026年8月19日
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