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性的指向と性自認

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アムネスティは、性的指向(セクシュアル・オリエンテーション)や性自認(ジェンダー・アイデンティティ)に関わらず、全ての人びとが世界人権宣言に記されている全ての権利を享受すべきであると主張します。

世界中で、ある人の性的指向や性自認が大多数を占める人びとと同じでない場合、その人は差別や虐待の対象とみなされることがよくあります。アムネスティは、このような性的指向と性自認に基づく人権侵害をなくすため、政府や、国際機関などへ要請文を送るなどの働きかけを行っています。また、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の人びとの権利のための活動している組織や活動家を支援しています。

【この記事の目次】

LGBTとは(用語解説)

性的指向:いずれの性別を恋愛や性愛の対象とするかといった概念。
性自認:生物学的性に関わらず自分の性別をどう感じているか、といった自己の性別に関する認識。必ずしも男と女に分かれるものでもありません。

LGBTとは、
L(レズビアン=女性同性愛者)、
G(ゲイ=男性同性愛者)、
B(バイセクシュアル=両性愛者)、
T(トランスジェンダー=生まれたときの法的(生物学的)・社会的性別とは一致しない、または囚われない生き方を選ぶ人などを表現する包括的な言葉。一般的に性同一性障がいも含む)の総称です。

「性的少数者」「性的マイノリティ」という言葉もLGBTと同様の意味合いで用いられています。

*性的指向や性自認に関して自らを表現するために人びとが使う言葉はさまざまです。このサイトでは、国際的な人権に関する議論の場でよく使用されている用語を用いています。人びとを一つのアイデンティティにまとめたり、固定したり、差別したり、また多様性を無視しようという意図はありません。

LGBT の人びとを取り巻く環境

黙認・助長される暴力と差別

世界の多くの地域で、LGBTであることは正しいことではなく、間違いとみなされており、同性愛は罪、病気、イデオロギーの逸脱または文化への裏切りであると考えられています。

LBGTの人びとは、宗教・文化・道徳または公衆衛生を理由に、政府あるいは個人からの激しい攻撃に直面しています。これらの暴力・差別に共通しているのは、社会に浸透している無知と偏見、暴力を容認している公認の差別と抑圧、そして暴力を持続させる免責です。

差別の制度化

性的指向あるいは性自認に基づいて人びとを差別することに対し、刑事処罰や懲戒処分を与えるといった法律を作る姿勢が見られない国ぐにが多く存在します。それどころか、少なくとも7カ国で、同性間の性的関係に死刑が適応される可能性があり、同性間の性的関係が違法あるいは処罰すべきだとされている国ぐには70カ国以上に上ります。

このような法律上の規定は、LGBTの人びとに向けられる差別、拷問そして虐待に拍車をかけ、さらなる人権侵害を生む環境を作り出します。また、同性間の性的関係それ自体は犯罪ではないものの、他の規定を用いて、性的指向や性自認を理由に人びとを拘禁したり、情報を規制したり、LGBT関連の活動を訴追したりする国も多く見られます。

このような法律は、事実上LGBTの人びとが自らの性的指向や性自認に基づいて生きるための適切な情報の入手、支援、保護を妨げることにもなります。

変わりゆく世界

2010年6月、アイスランドの議会は、同性婚を認める法案を全会一致で可決しました。また、同国首相のシグルザルドッティル氏は、レズビアンであることを公言しています。

現在、ベルギー、スペイン、カナダ、南アフリカ共和国を含む9カ国が、国全土で同性婚を合法化しています。また、パートナーシップ法に異性婚と同等、あるいは同等に近い権利、または部分的に権利が与えられている国・地域は、イスラエルをはじめ20カ所以上あります。同性カップルの共同養子縁組の権利が法律で承認されている国も徐々に増えてきています。

さらにEU諸国を中心に、性的指向あるいは性自認に基づく雇用上の差別を禁止している国ぐにも存在します。2011年には、国連人権理事会が性的指向や性自認に基づく暴力行為や差別に重大な懸念を示す決議を採択しています。

LGBTの人びとに対する人権侵害

全ての人間は、世界人権宣言に記されている全ての人権を享受できるはずです。
しかし、世界中で何百万もの人びとが、性的指向または性自認を理由に、死刑、拘禁、拷問、暴力そして差別に直面しています。

その一例:

  • レズビアンの女性を「治療する」という目的で、時には親の命令によって、 女性が強かんされること
  • 私的で合意に基づく関係が社会的危険因子であるとみなされ、 それが理由で告訴されること
  • 子どもの養育権の喪失
  • 警官による殴打
  • 路上で襲撃され、時に殺され、「ヘイトクライム(異なる集団に対する偏見・差別による犯罪)」の 犠牲者になること
  • 常に言葉による虐待を受けること
  • 学校でのいじめ
  • 雇用、居住もしくは医療サービスの拒否
  • 虐待から何とか逃れようとする際の亡命拒否
  • 拘禁中に強かんや拷問を受けること
  • LGBTの人権を求める活動に対する脅迫
  • 自殺に追いやられること
  • 国家による処刑

性的指向あるいは性自認に基づく人権侵害には、子どもの権利侵害、拷問や残酷で非人間的かつ品位を汚すような扱い、アイデンティティや信念を理由とした恣意的拘禁、そして結社の自由と基本的権利の適正な行使の制限が含まれます。

これらの侵害は、数十年間にわたり、国際人権法および国連人権諸機関の議題の中心となってきました。

国際法と国連の声明・決議

国際社会の動き

  • 1990年5月17日、WHO(世界保健機関)が治療の対象から同性愛を除外する(日本精神神経学会は1995年に削除)。
  • 2007年3月、「性的指向と性自認の問題に対する国際法の適用に関するジョグジャカルタ原則」が公表されました。これらの原則は、国連特別報告者、国内・地域および国際的人権委員会のメンバー、そして前国連人権高等弁務官を含む、人権の専門家グループによって作成され、人権擁護の普遍的広がりを保証するために、国際人権法をLGBTの人びとが受けた人権侵害に適用しています。
  • 2008年12月、性的指向および性自認に基づいた人権侵害をなくすよう求め、全ての人への人権の促進と保護を訴える「人権と性的指向と性的自認に関する声明」が国連総会に提出され、日本政府もこの声明に賛同しました。
  • 2011年6月、国連人権理事会は、性的指向と性自認に基づく人権侵害に明確に焦点をあてた初めての決議を採択しました。この決議は、人権の普遍性を確認し、性的指向や性自認を理由に人びとが受けている暴力行為や差別に重大な懸念を示しています。

日本

2008年10月、自由権規約委員会による第五回日本政府報告書の審査の最終見解が発表され、パラグラフ29では、LGBTの人びとに対して、雇用、居住、社会保険、健康保険、教育および法によって規制されたその他の領域における差別があることに、懸念を有するとしています。また、同年6月には、国連人権理事会の普遍的定期審査による勧告のうち、性的指向と性自認に基づく差別を撤廃するための措置を講じるよう求める勧告(サブパラグラフ11)を日本政府は受け入れています。

難民認定

性的指向による迫害から身を守るために、祖国から逃れざるを得ない人びとがたくさんいます。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、性的指向を理由とする迫害も難民となりうる要件の一つとして認めていますが、各国政府や各ケースによって庇護の申し立てが却下される場合は少なくありません。また、LGBTの人びとは難民申請の理由が何であれ、裁定が出るまでの間、看守やその他の職員、あるいは周囲の被拘禁者から拷問や虐待を受けることもあります(多くの国では、難民申請者は申し立ての審査中、拘禁センターや刑務所に収監されることが多い)。
ニュージーランドやオーストラリア、カナダなどの欧米諸国では、性的指向に基づく難民申請が認められたケースもあります。

LGBTの人びとを取り巻く日本の状況

日本では、LGBTの人びとが全人口の3~10%いると言われています。しかし、社会に誤った情報や差別が蔓延しているため、多くの当事者が身体の性と心の性が一致しないことや、自分の性的指向について戸惑いや不安を感じています。

また、差別やいじめの問題だけでなく、LGBTの人びとをねらった襲撃事件も起きています。そのため、自殺を考えたり、うつを経験したりする人も多く、状況は深刻です。

現在日本では、同性カップルは異性カップルと同等の権利が法的に保障されていません。

例えば、共有財産の許可や子どもを持つこと、遺産を相続すること、年金や保険金をもらうことなど、法律の整備が行き届いていない点が多くあります。また、同性カップルの間で起きたDVが法的保護の対象になっていなかったり、平成22年の人権週間には、石原都知事が性的指向を理由とした差別発言をしたことなどが問題になっています。

2004年、「性同一性障害の性別の取扱いの特例に関する法律」が施行され、生物学的・社会的に割り当てられた性別に一致しないことを理由に戸籍上の性別の変更が認められました。しかし、未成年の子どもがいないことや、実質的に子孫を残すことを不可能にする性別適合手術などの治療が前提となるため、手術を望まない人びとは戸籍の性別を変更することはできません。

また、家族や職場の理解が得られなかったり、経済的、健康上の理由から手術を受けられない人も多くいます。

アムネスティの取り組み

アムネスティの第一歩

アムネスティは1979年にはすでに「同性愛を理由として人びとを迫害することは、彼らの基本的権利の侵害である」との見解を表明していましたが(1979年アムネスティ国際大会の決議7)、本格的にこの種類の迫害への反対キャンペーンを展開しだしたのは、1990年代初頭になってのことでした。
この時代は国際的な運動の中で、一体どの程度アムネスティがレズビアンとゲイの人びとの権利を守るために介入できるだろうか、という激しい論争の渦中にあり、運動の手法も文化的に様ざまな手法が思考された時期であり、なおかつ、国際的な人権基準も不明瞭な時期でした。

アムネスティ内部での議論、およびレズビアンとゲイの人びとの権利運動や内部での多数の運動による持続的なキャンペーンが展開された後、1991年にアムネスティは、同性間の性的関係を理由に人びとを起訴することは迫害であるという方針を採用するという、非常に重要な前進を遂げることとなりました。(拷問や処刑またはゲイとレズビアンの人権活動家の恣意的拘禁のような他の形態の迫害は、すでにアムネスティの責務として活動対象になっていました。)
そして現在、アムネスティは単に同性愛を理由に拘禁されている人びとの釈放運動に取り組み続けています。この中には、異性愛においては罪に問われない状況で性交した、という理由で起訴されている人びとも含まれます。

良心の囚人

アムネスティは、同性間で性的関係を持った、あるいは持ったとされるだけで拘禁または投獄された人びとを「良心の囚人」と考え、即時かつ無条件の釈放を求めます。これには、異性間の関係では犯罪にはならない状況で(同性間で)性交渉をおこなったという罪で、あるいはその性自認を理由に起訴された人びとも含まれます。アムネスティは、1991年にギリシャ人のジャーナリスト女性とロシア人男性をLGBT良心の囚人として以来、これまで多くのLGBTの良心の囚人の釈放に尽力してきました。

アムネスティの役割

国際的な草の根の人権団体として、アムネスティには、LGBTの権利が特別な権利ではなく、基本的権利が社会の全ての人びとに保証したように、通常の人権として捉え、位置づけられるために、特定の有益な役割があります。

アムネスティはまた、脅迫を受けているLGBTの人権活動家に貴重な支援も提供しています。活動家の多くは、彼らの所属する団体の当然の権利が、法律によって否定されるような状況下で活動しています。つまり、あなたの愛したい人を愛し、共に生きたい人と生きる権利は、罪を犯すことだ、と規定されているのです。

アムネスティは、議論やネットワークするための安全な場所を提供したり、LGBTの人権活動家たちが活動できる場の保護をしたり、研究やキャンペーン、政策提言のためのスキルを分かち合うなどで、この国際的な運動を強化する、独自の団体です。
アムネスティはLGBTの権利運動や国際的な活動会員の支援を、国連でのロビイングやキャンペーンのような広範囲にわたる経験とスキルで提供できます。
アムネスティはまた、ほぼ地球規模に存在しているということや、継続的に国家を監視する能力、そして国際的な視点という利点を提供することができます。

「私が警察やその他の当局から嫌がらせを受けていない、と強く信じる理由は、アムネスティと国際的な記者団に私が注目されている、ということをこれらの当局側がよく知っているからなのです。」
(ジンバブエのゲイ&レズビアン組織、GALZのキース・ゴダートの言葉)

多様性を認め合う社会をめざして

法の見直しと改正

アムネスティは、同性間の性的関係を理由に拘禁されるような法律が依然として存在しているところに、同性愛の犯罪化をやめるよう要求しています。これには、性的指向または性自認のみを理由に、人びとを差別、訴追、処罰することを可能にしている全ての法律の見直しを伴います。

その中には、ソドミー法*や同性間、またはトランスジェンダー個人間の性行為を違法とする同様の規定、差別的な承諾年齢を定めた法律、性的指向や性自認だけを理由に人びとを訴追し、処罰するための口実として使用される治安法が含まれ、さらにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、同性間で性的関係を持つ者、トランスジェンダー、および人権を擁護する者を刑務所に入れるために利用することが可能な同性愛の「推進」を禁止する法律が含まれます。このような法律は、全て廃止あるいは改正されるべきです。 (* 現在では、一般的に同性間の性的行為を禁止し、処罰の対象とする法律)

アムネスティは、個人が国家によって殺害されることを許容する全ての法律の見直しを要求しています。当面の目標として性的指向と性自認を理由とした死刑が行なわれないよう、死刑の適用範囲を徐々に制限し、最終的には死刑と鞭打ち刑を全廃することを目的として、その他の全ての体罰と残虐で非人道的かつ品位を汚すような刑罰が法的に撤廃されるよう求めます。

そして、実際の、または転嫁された性的指向と性自認に基づき拘束された全ての良心の囚人を、即時かつ無条件に解放することを求めます。

アムネスティの要求

その他にも、下記のような要求を各国の政府にしています。

  • 性的指向または性自認に基づいた人権侵害に関する全ての申立ておよび報告が、速やかにかつ公平に調査され、加害者が説明責任を問われ、法に基づいて裁かれることを保証すること。
  • 裁判のどの段階においても、性的指向または性自認に基づいた有害な処遇を禁止し排除するために、立法、行政およびその他の必要なあらゆる手段を用いること。
  • 性的指向または性自認に基づいた婚姻法における差別をやめ、必要に応じ、国境を超えた家族の選択を認めること。
  • 人権や性的指向、および性自認のための活動を理由に危険にさらされている人権活動家に十分な保護を保証すること。

LGBTキャンペーン「Love Beyond Genders」に参加しよう!

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同性を好きなことで、からかわれる。女性の格好をしたら「男なのに」といじめられる。そして自分がおかしいと悩み、誰にも相談できずに追い詰められてしまう…。

恋愛・結婚は異性とするもの、性別の区別は男女だけ、という価値観が多数を占める社会では、その価値観にそぐわないLGBTの人たちが、暮らしのさまざまな場面で、生きにくさを感じています。

「Love Beyond Genders」キャンペーンでは、性的指向、性自認を理由とした差別のない社会にするために、日本政府や自治体への働きかけを行っています。悲しい思い、つらい思いをする人が一人でもいなくなるよう、みんなで社会を変えていきませんか。

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ボランティア募集中!ジェンダーチーム

ジェンダーチームは、「ジェンダー差別に基づく人権侵害」について取り組んでいます。主な活動内容は、女性とLGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーなど)の人びとに対する暴力と差別に関する情報発信で、情報誌『のら』の他、アピールはがき付きのアクションキットを作成し、販売しています。また、ウェブサイトでの情報発信も行っています。

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