米国:恥ずべき金字塔、1000人目の処刑が目前に迫る

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2005年11月28日
国・地域:米国
トピック:死刑廃止
刑務官が一人の男性を房から出し、死刑執行室へ連れて行く。そして立会人たちが見守る中、死刑囚は毒殺される。

立会人たちの多くは、生涯消えない傷を心に負う。執行に直接関与した刑務所当局の人びとも同様だ。ジャーナリストは、目の前で殺されたばかりの男性について記事を書く。刑務所の職員は次回にそなえて部屋をかたづける。

米国では、こうした光景はほぼ日常的に見られる。1976年に米連邦最高裁で死刑が復活してから、正義の名のもとに国家が殺した男女の数は1000人に近い。

米国で1000人目の死刑執行が近づいている。アムネスティは、人権団体、社会正義を求める団体、関係者など多くの人びととともに、米国政府と連邦当局に対し、すべての死刑執行を即時停止するよう求める。

「死刑は本質的に、効果的でなく、恣意的であり、犯罪を抑止しない。それどころか、死刑は被害者を増やし、社会を全体としておとしめるものである。」とアムネスティは訴える。

この30年間に米国で処刑された人びとを見ると、貧しい人びと、有色人種、適格な弁護人がつかなかった人びとの割合が偏って高い。またその多くは知的障がいを持つ人びとや元子ども犯罪者で、こうした人びとに対する死刑の適用は国際人権基準によって禁じられている。重い精神病にかかっている人びとも処刑されてきた。無実の可能性が非常に高いにもかかわらず処刑された人びとも多い。誤判によって死刑を言い渡されたのちに無実が証明されて釈放された人びとの数は、米国全体で、現時点で122人である。

さらに、米国の死刑執行全体の80パーセントが南部のごく限られた州で行なわれている。約1000件の死刑のうち半数近くがテキサス州とバージニア州のわずか2州で執行されたものである。ニューヨーク州、イリノイ州、ニュージャージー州では死刑の執行を停止しており、死刑制度の公正さと有効性に関して、米国全土で多くの問題点が持ち上がっている。米国連邦最高裁は、ここ数年で、知的障がいの人びとと犯行時18歳未満であった人びとに対する死刑の適用を禁止した。

アムネスティは言う。「このことは、米国が近い将来死刑を廃止することが可能であることを示している。連邦と州の政治指導者たちに今必要なのは、勇気と智恵とリーダーシップを発揮して、死刑をきっぱりと廃止することである。」

「暴力犯罪の被害者に対しては、敬意と思いやりと正義が与えられるべきである。しかし死刑は、この中の何ひとつ与える事が出来ない。緊迫した社会問題を死刑が解決できるという考えは錯覚であり、政治的展望がないことのあらわれに過ぎない。」

「死刑執行のために費やした財源を、包括的な更生プログラム、有効な被害者支援、犯罪防止計画などに利用することができたであろう。また現行の法執行活動の強化のために利用することさえできたであろう。」

法律上あるいは事実上、死刑を廃止した国は世界で121カ国である。

「1000人もの人びとを処刑することで、暴力犯罪の被害者、死刑囚の家族、そして死刑に関わった人びとが受けた影響ははかりしれない。今こそ米国は死刑の持つ究極のむなしさに気づき、死刑廃止へと向かう世界の流れに合流する時である。」

さらに詳しい情報は www.amnesty.org と www.1000execution.org 
を参照。

アムネスティ発表国際ニュース
(2005年11月28日)
AI Index:AMR 51/191/2005

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