- 2025年5月 8日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:米国
- トピック:
アムネスティは就任後100日間におけるドナルド・トランプ大統領による国内外の人権への攻撃を分析し、権威主義的な手法、差別的・人種差別的な政策、危険な巧言によって人権危機を引き起こしていると指摘した。
トランプ政権は2期目の100日間で、反対意見を抑圧し、移民を悪者扱いし、世界の人権保護を目的とする多国間機関から脱退するなど、人権保護体制を打ち砕き、恐怖と分断を助長し、法の支配を弱体化させる行動を次々と繰り出している。抑圧的な指導者がよく使う権威主義的な手法を用いて反対意見を封殺し罰する一方で、「政府を武器化」して米国内外の人びとや機関を攻撃し、自身の権力を強化し、人権を否定する政策を推進しているのだ。トランプ政権がもたらした残酷さと混乱は、米国、そして世界中の何百万という人たちの人生に壊滅的な影響を及ぼしている。
- 難民保護の廃止と移民の標的化:大量の強制送還、「敵性外国人法」に基づく強制失踪、家族分離、難民保護権に対する厳しい制限は、国際法に違反する。これらの措置はコミュニティを分断させ、安全を求めて米国にやってきた人びとを含む移民は恐怖の中で暮らす事態に追いやられている。
- 表現の自由と抗議の権利への攻撃:学生の抗議活動、特にパレスチナ支援を掲げる学生に対する弾圧は、表現の自由と平和的な集会の権利を脅かしている。特に米国市民でない学生が標的にされ、表現の自由を行使しただけで拘束や強制送還の脅威にさらされている。
- 法の支配の弱体化:裁判所命令を無視し、判事を弾劾すると脅し、法律事務所や弁護士を攻撃し、大統領令を乱用して、三権分立を蝕んでいる。トランプ政権はこうした権威主義的な手法を用いて反人権政策を推進している。
- 報道の自由の侵害:ジャーナリストを標的とし、メディア機関を提訴し、世界中の自由な報道を支援する資金を削減し、連邦通信委員会(FCC)を通じて規制権限を乱用し、人権擁護に不可欠な議論、討論、異論を促進する独立メディアの重要な役割を損なっている。
- 女性とLGBTQIA+コミュニティの権利への攻撃:トランスジェンダーの人びとに対する政策と大統領令は、差別的な空気を助長し、法の下でのトランスジェンダーの存在を消し去ろうとする試みだ。また、すべての人に対する性と生殖の権利の保障を弱体化させる措置が取られており、特に妊娠中絶の権利が標的にされている。
- 非白人コミュニティの周縁化: 多様性、公平性、包摂(DEI)プログラム終了の強要と、人種的公平性を重視する大学への資金削減の脅威は、人種的正義への明白な攻撃だ。
トランプ大統領による人権侵害は多層的だ。数百人の大学生が強制送還の対象となっているが、人種差別的な行動、抑圧、人権無視の象徴的な例として、パレスチナ人学生のマフムード・ハリールさんのケースが挙げられる。永住権を持つハリールさんは、コロンビア大学での平和的な抗議活動に参加し、強制送還の危機にある。人権のために声を上げれば標的にされ、罰せられ、適正手続きが補償されないのだ。これは学生や移民だけでなく、すべての人にとって恐ろしい未来を示す。トランプ政権の数々の行動は、人権と人権を支える体制に対する広範な攻撃に他ならない。
トランプ大統領の混乱と残酷な政策は、世界中の人びとの権利を危険にさらし、安心、安全を脅かし、不安定さと不確実性を生み出している。それだけでなく、米国の人びとの繁栄をも損なう。
- 米国海外援助の突然の廃止:海外援助の大規模かつ突然の削減は、世界の人道支援、開発、人権活動に壊滅的な影響を及ぼしている。単なる財政的な問題ではなく、米国が表明してきた人権、公衆衛生、世界平和と安全保障への責任放棄を意味する。
- 世界中の人権保障を目的とする多国間機関からの脱退:人権理事会、世界保健機関、パリ気候協定からの脱退、ユネスコの加盟見直し、国際刑事裁判所への制裁など、トランプ政権は正義と責任追及の国際体制への攻撃を強めている。
- 民間人への被害軽減に対する取り組みからの後退:米国軍事作戦による民間人被害を軽減するための政府組織の縮小、米国の武器移転が国際法に違反しないための大統領令の撤回など、武力衝突により危険にさらされる民間人の命を歯牙にかけない姿勢を示している。
- 企業責任の監視体制の解体:外国腐敗行為防止法(FCPA)の執行一時停止など、企業責任の監視体制を撤廃し、汚職対策の努力を大幅に削減。テクノロジー企業は長年、差別的で権威主義的な風潮を助長してきたが、トランプ大統領の措置はこの傾向をさらに悪化させる。一方、地球上で最も裕福な人物であるイーロン・マスク氏がDOGE(政府効率化省)で自由に行動するのを許し、数百万人のアメリカ人の個人機密情報へのアクセスなど、連邦法違反と思われる措置を指示している。
米国の人権危機は、世界中で権威主義が増大する中で起きている。トランプ政権の人権への執拗な攻撃は、すでにある悪化傾向を加速させ、国際的な人権保護を骨抜きにし、地球上の数十億人を危険にさらしている。
世界中で国家が抑圧を強め、法の支配と人権規範を放棄している今、世界最大の草の根人権団体としてアムネスティは、市民空間を保護し、権威主義に反対し、長期的な市民の力を築くために行動を呼びかけている。人権は政治の道具であってはならない。各国政府は、人権を侵害する権威主義的行動に断固反対し、非難し、その場所がどこであろうと措置を講じるべきだ。世界中の人びと、特に人権と正義の運動に携わる人びとは、現在と未来の世代を破滅へと導くこの流れに抵抗し、果敢に立ち向かっている。政治指導者は、この極めて重要な局面を逃さず、すべての人の権利と尊厳を守り抜くために行動しなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2025年4月30日
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