スーダン:越境攻撃から市民を守るため、国際的な措置が必要

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2006年7月 7日
国・地域:スーダン
トピック:地域紛争
アフリカ連合の加盟国代表がガンビアのバンジュールに集結し、国連安全保障理事会がダルフールへの国連平和維持軍の派遣について検討するにあたり、アムネスティ・インターナショナルは本日、スーダンが火種となって発生したチャド東部での越境攻撃から市民を保護するため、国際社会が取るべき緊急措置を訴えた。

「これを機に、アフリカ連合と国連の双方は、ダルフールでの長期にわたる人権危機に対して、協調して実効的な対策を講じなければならない。危機は今や、国境を越えてチャドへ広がり、同地域を不安定にしている」と、アムネスティ・インターナショナルのアイリーン・カーン事務総長は語った。

「チャド政府は、市民の保護を保証するための責任を強化し、必要であれば国際的な部隊に支援を求めなければならない」

アムネスティ・インターナショナルの勧告は、スーダンとチャドの国境沿いで起きている殺害や破壊を撮影したビデオ映像とともに発表された。また同時にアムネスティは、人権侵害の分析と両政府の責任回避について焦点をあてた報告書も発表した。

「チャド政府は、スーダンとの国境沿いの自国民を守る責任を事実上放棄し、彼らをジャンジャウィド民兵による攻撃とチャド東部のスーダン武装勢力による搾取の危険にさらしてきた」

「スーダン政府は、ジャンジャウィド民兵の罪を問わないまま、境界沿いでの殺害や略奪、強制移住など、ジャンジャウィドによるチャド市民への越境攻撃を野放しにしている」

「ジャンジャウィドは、スーダン政府からもチャド政府からも何ら制限を受けることなく、無防備な村々を標的に攻撃している。状況がさらに悪化する前に、国際社会は効果的な措置を講じなければならない。」

「今週開かれるアフリカ連合サミットでは、結果を見ないで国連平和維持活動の展開を拒み続けることはできないという明確なメッセージを、スーダン政府に伝える必要がある。アフリカ連合は、経済制裁やスーダンが2007年のアフリカ連合の議長国を務める決定の停止など、スーダン政府に圧力をかけるための明確な行動計画を策定すべきだ」

国連安全保障理事会は今週、平和維持軍のダルフール派遣に関する国連調査団の結果を検討する。

「次々に明らかになるチャド東部の危機は、もはや残された時間は少なく、市民の保護に関する責務と越境攻撃を防止する能力を持った国連平和維持活動をスーダン政府が受け入れるよう、安保理が断固とした決意を持って同政府に圧力をかける必要があることを示している」

「チャド東部で明らかになっている人権侵害は、ダルフールにおける紛争の産物であり、国境を接する両国の人権と人道危機に取り組むことが国際社会の責務である」

「国連安全保障理事会は、チャド東部における無防御状態に対して早急の対策を示すだけでなく、スーダン政府がダルフール問題で動き出すことを待たずに、緊急にそのような行動に取り組まなければならない。チャド東部の市民は保護を切実に望んでおり、スーダン政府との和平交渉の切り札として利用されてはならない」

「政治的孤立と無防御状態はチャド東部に広まっており、状況がさらに悪化する差し迫った危険がある」とアイリーン・カーン事務総長は述べた。

2005年9月以降のチャド東部へのジャンジャウィドの攻撃によって、5万人から7万5千人の避難民が発生し、彼らはさらに内陸へと避難している。そのうちの1万5千人ほどが、いかなる避難経路からも遮断され、ダルフールに移動した。避難民は、ほとんどないし全く人道支援を受けることができず、必死に保護を求めている。避難民は、チャド東部に拠点を置くダルフールの反政府武装勢力が徴兵するための潜在的な人的資源になりつつある。

報告書は、ジャンジャウィドとダルフールに拠点を置くチャド系武装勢力との間の新たな連携の形態についても紹介している。チャド系武装勢力がある境界沿いにチャド政府軍に攻撃をしかける時、ジャンジャウィドは別の国境地域で、チャド系武装勢力と同盟関係のない特定の民族を標的として、住民を攻撃している。

ジャンジャウィドの攻撃は、最大規模で財力をもつ集団を標的とし、一方でより小規模な民族集団とは同盟を結ぶなど、意図的に地域の分裂を生んでいる。2006年6月にチャド東部で、多くの地元の指導者がアムネスティ・インターナショナルの調査団に、攻撃から自分たちの身を守るために武器を手に入れたいと語った。もし彼らが武装すれば、民族間の衝突が生じるにつれて暴力が激化する危険ある。

アムネスティ・インターナショナルの勧告には以下の事項が含まれている。

  • チャド政府は、被害地の市民を守り、必要であれば、難民や避難民、他の市民が攻撃の脅威にさらされている地域の安全を強化するために国際的な部隊の支援を求めなければならない。
  • 国連やアフリカ連合は、スーダン政府が国連平和維持活動を受け入れ、ジャンジャウィドの越境攻撃を防止するための措置をとるよう圧力をかけなければならない。
  • 国連はチャド政府と協力して、明確な市民保護の任務を持った平和維持軍をダルフールに派遣し、境界付近のチャド市民の安全を確保するための効果的な措置を模索しなければならない。
  • 国際社会は、アフリカ連合ダルフール派遣団が市民を保護する能力を強化できるよう、必要な政治的、財政的、後方的支援を行わなければならない。
  • 国連は、チャド東部の市民に対する攻撃を調査し、調査結果と勧告を公表しなければならない。
  • スーダンとチャド政府は、ダルフールとチャドにおける戦争犯罪と人道に対する罪に関する加害者を裁くために国際刑事裁判所(ICC)と協力し、被害者への賠償を実現しなければならない。

「チャド東部で今起きていることは、ダルフール紛争の初期に起きていたことを思い出させる。私たちは、同じ加害者による同じ形態の虐待を見ている」と、カーン事務総長は述べた。

「ダルフールの火種はチャド東部に広がっている。国境を接する両国に対して緊急で一貫した行動をとらなければ、国際社会は悲惨な結末を見ることになるだろう」

アムネスティ国際ニュース
(2006年6月29日)
AI Index : AFR54/028/2006

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