スーダン:デモ参加者多数が死亡 発砲した治安部隊の捜査を

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2021年12月 1日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:スーダン
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スーダンの首都ハルツームで10月に権力を掌握した軍に反発する市民の抗議デモが続く中、治安部隊はこの2週間、抗議する市民に容赦無く銃口を向ける姿勢を強めている。

事態を見守るスーダンの医師会によると、10月25日以降、少なくとも40人が死亡し、そのほとんどが治安部隊の発砲による犠牲者だった。

10月25日、軍は全土に非常事態を宣言し、内閣を解散し、多数の議員を拘束したが、この軍の対応に反発した市民が、抗議デモを始めた。

治安部隊による殺害

11月13日と17日、治安部隊による市民の銃撃が増え、医師会によると少なくとも23人が亡くなった。アムネスティの調べでは、この2日間の死者のうち9人は、銃傷がもとで亡くなり、少なくとも負傷者50人が負った傷は、銃傷だった。

軍に解任されたハムドク元首相が、11月21日の軍との合意に基づき首相に復帰した。ハムドク首相は、10月25日以降のデモ参加者に対するすべての人権侵害に対して、独立した透明性のある捜査をすることを約束している。

これまで同様の人権侵害があった際の当局の対応のまずさからすると、当局が捜査で結果を出すには、国際監視団の監視と支援が欠かせない。

激化する治安部隊の発砲

アムネスティの調べでは、11月13日と17日の犠牲者のうち9人は、頭部、首、胸を狙い撃ちされた。また負傷者のうち少なくとも50人は、被弾していた。武器を所持しない市民への銃器の使用は、明らかに不当だ。また、治安部隊が病院を襲撃していたことも明らかになっている。

医師会によると、11月13日に亡くなった4人のうち3人が被弾し、1人が催涙ガスを浴びて死亡した。アムネスティの調べでは、被弾して亡くなった1人は、狙撃弾を受けていた。

狙撃弾を受けて亡くなった高校生の友人によると、一緒に抗議に参加していた時、その高校生が「屋上に狙撃手がいる」と屋上の方向に指を差したとき、狙撃手が引き金を引いたという。撃たれた学生は、友人らに病院に運びこまれた時には息絶えていた。司法解剖によると、銃弾は肩口から入り、胸と心臓を貫通していた。

この事実は、狙撃手は、デモ参加者の頭や胸を狙っているという複数の証言と一致する。また、抗議する市民の鎮圧に手段を選ばず、狙撃も辞さないという治安当局の姿勢を表している。

加害者を裁きその責任を問うためにも、独立した公正な捜査が不可欠だ。

治安部隊の対応が過激になる中、11月17日には少なくとも市民15人が犠牲になった。ハルツーム北部の国際病院には、17日の午後の4時間足らずの間に被弾した8人が運びこまれたが、いずれもその後、死亡した。病院に着く前に出血多量で亡くなった人も多かった。

女性(25歳)は、治安部隊員の攻撃を逃れようとしていたとき、顔を撃たれて亡くなった。家族によると、女性は看護学生で、抗議活動にも熱心で、謙虚ながらいつもデモの先頭に立つ気概があったという。知人の話では、いつも「文民政権実現のために闘う」と繰り返し、「もし命を落とすようなことがあれば、治安部隊の責任を追求してほしい」とも言っていた。

スーダンの治安部隊は、これまでもデモ隊の排除に過剰な力を行使し、死者を出すことも辞さない対応を取ってきたが、10月に権力を掌握してから、その暴力は、一層過激になった。

治安部隊の暴力で犠牲者数が大幅に増えたことで、治安部隊が、市民の生存権や平和的抗議の権利を無視し、武器使用の規定を蔑ろにしていることがあらためて浮き彫りになっている。

恣意的逮捕と拘禁

一方、軍当局は10月25日以来、政治家や活動家多数を明らかな容疑もなく拘束してきた。しかし、11月21日に合意が結ばれて以降、拘束されていた人たちのうち数人が解放された。

ベテラン議員の1人は11月16日、自宅にいたところを押し入ってきた治安部隊に拘束された。その数時間前、同議員は、アルジャジーラのインタビュー番組で、軍による権力の掌握を批判していた。

アムネスティ・インターナショナルとヒューマン・ライツ・ウォッチは11月9日の共同声明で、少なくとも8人が、自宅にいたところを治安当局員に拘束され、秘密裏に拘禁されていることに対し、強制失踪のおそれがあるとして批判した。

また、抗議デモの計画や告知の規制を目論む当局は、10月25日からインターネットなどに通信障害を起こしてきた。その結果、インターネットは3週間以上も使えず、電話回線は11月17日に数時間切断された。いずれのサービスも、11月18日に復旧した。

治安当局は、何をしても罪に問われないという認識で行動していることは明らかだ。もし、この事態が続けば、市民の犠牲者がさらに増えることは言うまでもない。

当局は、最も重い責任を負う幹部を含め、重大な人権侵害の責任を問われなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2021年11月24日

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