中国:オリンピックまでに人権状況の改善を

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2006年9月21日
国・地域:中国
トピック:危機にある個人
「オリンピックを北京で開催することによって、人権の進展に協力することになる」
(2001年4月、北京五輪招致委員会の劉敬民副首席)

北京オリンピック開幕まであと687日となった。2008年のオリンピック開催までに人権状況を改善するという国際オリンピック委員会との約束を果たすためには、中国政府は迅速に行動する必要がある。

アムネスティ・インターナショナルの最新の評価では、人権の基準となる4つの問題について、オリンピックを前にした中国政府の動きの総合記録は、あいかわらず満足のいくものではない。死刑制度については若干の進展があったが、その他の重要分野において、政府の人権記録は悪くなった。

「オリンピック開催地に名乗りをあげた際に、中国政府は人権状況を改善すると約束したが、それに反して毎日のように国じゅうで重大な人権侵害の報告が続いている。オリンピック建設予定地にある建物から強制立ち退きさせられた住人たちとともに活動している人びとを含め、草の根の人権活動家はいやがらせを受けたり投獄されたりしている。密輸や汚職となどの犯罪で不公正な裁判にかけられ、処刑された人びとが数千人いる」と、アムネスティのアジア太平洋部のキャサリン・バーバー副部長は語った。

副部長はまた、「昨年は、ジャーナリストやインターネット利用者が再び弾圧された。この事実の前に、'メディアの完全な自由'という中国政府の約束がむなしく響く。現状は、'人間の尊厳を保つ'という'オリンピック精神'の根底にある最も基本的な精神に反するものである。」と述べた。

アムネスティは国際オリンピック委員会(IOC)に対して中国の人権状況に関する調査結果を送っている。IOCは、事実上中国が約束を果たさないのであれば行動を起こすと述べた。アムネスティはIOCが中国政府に対して影響力を行使し、葉国柱のような人を代弁して声をあげるよう求めている。

葉国柱 は、オリンピックの開催地として開発される土地の一部に家があったために強制立ち退きさせられた。彼は2004年12月に、強制立ち退きさせられた他の人びととともに北京でデモをする許可を求めた後で4年の刑を言い渡された。アムネスティは葉国柱を良心の囚人と考えている。葉が拘禁中に、両腕を天井から吊るされたり電気ショック棒で殴られたりといった拷問を受けていることが最近明らかになった。

オリンピック関連用地から人びとを強制的に立ち退かせることの他に、北京市当局はオリンピック前に市のイメージアップをはかるため、「労働による再教育」の対象者(犯罪事実がないのに投獄されている人びと)を拡大し、「非合法な宣伝活動やビラ配り、無免許タクシー、無認可商売、放浪、物乞い」を含めることを決定した。

「ジャーナリストや人権活動家が自由に発言できず、とらえられた人びとが拷問され、処刑された数千人の人びとについて政府が隠し続けるのであれば、きらめくスタジアムも絢爛豪華なパレードも価値がない。2008年8月のオリンピック開催時には中国の人びとが自分の国のあらゆる面を世界に誇れるように、人権状況の改善の約束の早期実現に向けて努力するよう、アムネスティは中国当局に求める。」とキャサリン・バーバー副部長は述べた。

背景情報
アムネスティはオリンピック前の人権改革における4つの基準となる問題についての定期的な評価を発表している。これは、中国における人権改革のためのより大きな行動計画の核をなす部分である。最新の評価における、主な進展と勧告は以下のとおりである。

死刑について
死刑は、脱税や薬物犯罪などを含めた約68の犯罪に引き続き適用されている。中国の研究者の推定によれば、毎年8000人から1万人が処刑されている。
すぐに弁護士に面会できない、無罪推定がない、証拠は拷問によって引き出されるなど、死刑判決は不公正な裁判で言い渡される。
執行された死刑囚からの臓器摘出が広く行なわれていた。2006年7月に定められた新しい法律には、生体ドナーからの移植についての規定しかない。
進展としては、最高裁判所がすべての死刑執行の最終見直しと承認の権限を再び行使することになった。これが死刑判決の減少につながることが期待される。

全面的な死刑廃止へのステップとして、死刑の判決と執行に関する完全な国内統計を発表し、透明性を高めるよう、アムネスティは中国政府に求める。

公正な裁判、拷問、犯罪事実のない投獄(行政拘禁)について
 全国で数万人の人びとが、「労働による再教育」施設などの犯罪事実のない投獄の形態で拘禁されていると考えられる。
 「軽い犯罪」で最長3年までの刑を言い渡すことができる権力を警察が持っている。警察のこの権力に対するチェック機能はない。
 こうした施設に投獄されている人びとは、とくに「矯正」に抵抗した場合は、拷問や虐待を受ける危険が高い。

アムネスティは、「労働による再教育」などの行政拘禁形態を廃止するよう求める。

人権擁護活動家について
 人びとがますます公然と不満の声をあげている。政府の統計によれば、抗議行動、デモその他の「公共の秩序を乱す行為」は2004年には7万4000件だったが、2005年は8万7000件だった。
 弁護士やジャーナリストを含む活動家は、人権侵害に注目を集めようとして重大な障害に直面した。こうした人びとはいやがらせをされ、恣意的に拘禁され、拷問された。
 2006年5月、弁護士に対する国の規制が強まり、地方レベルでは人権侵害の被害者を担当する弁護士がいなくなるおそれが出てきた。

アムネスティは中国政府に対し、法律上のあいまいな文言をあらためるよう求める。たとえば、「国家機密の国外漏洩」とか「国家権力の転覆」などは、合法的な人権活動を抑圧するために使われることが多い。

メディアの自由について
 昨年、中国当局は数百の国際組織のウェブサイトを引き続きブロックし、多数の国内ウェブサイトを閉鎖した。
 北京の外国人記者クラブによれば、警察が外国人ジャーナリストを拘禁したケースがこの2年間に少なくとも38件あった。
 この1年間、中国当局は国内メディアの管理を強化し、「氷点」などが停刊となり、主なジャーナリストが追放された。

アムネスティは中国政府に対し、平和的な報道活動のために拘禁されたすべてのジャーナリストを釈放すること、また、海外・国内のジャーナリストが検閲なしに公共の問題について取材できるよう保障することを要請する。

アムネスティの人権状況評価の全文はグリニッジ標準時9月21日午前0時1分より以下で閲覧可能。http://web.amnesty.org/library/Index/engasa170462006

ジャック・ロゲIOC委員長は中国とオリンピックについて公式に質問されると常に中国の人権問題に言及している。2002年4月、BBCの「ハードトーク」という番組で、ロゲ委員長は、中国の人権状況の改善が満足のいくものでなければ行動を起こすと約束した。

AI Index: ASA 17/051/2006
2006年9月21日

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