中国:香港国案法違反 大多数が不当逮捕

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2025年7月 3日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:中国
トピック:表現の自由

香港国家安全維持法(国安法)に基づき有罪判決を受けた人の80%以上が不当に犯罪扱いされ、そもそも起訴されるべきではなかったことが、同法施行5年を迎えるにあたり実施したアムネスティの調査で判明した。

2020年6月30日以降、香港の国家安全保障関連法の対象となった255人を分析した結果、起訴された案件のほぼ90%で保釈が拒否され、保釈が認められなかった人たちは裁判を受ける前に平均11カ月間拘禁されていた。国安法施行から5年が経過し、アムネスティの懸念が現実となったことを示す衝撃的な調査結果だ。香港政府は「国家安全保障」を口実にした表現への弾圧を直ちに停止すべきだ。

この過酷な法律と、同法から派生した他の国家安全保障関連法は、香港の人権と法の支配を保護する基盤となっていた主要な法的保障を蝕んできた。その結果、香港市民は逮捕を恐れることなく自由に表現できなくなった。

アムネスティの調査報告書は、国安法とその他の国家安全保障関連法に基づく逮捕、保釈決定、起訴のパターンを分析している。特に、次の3つの懸念に焦点を当てている。表現の自由という人権の正当な行使が犯罪とされていること、こうしたケースにおける保釈率の低さ、被疑者の大多数が事実上、長期に拘禁されているという3点だ。

国安法に基づく結審案件78件のうち、少なくとも66件(84.6%)は、国際基準に照らして犯罪とされるべきでない正当な表現行為であり、暴力行為や扇動の証拠はなかった。

香港基本法第23条に基づく国家安全維持条例と同条例施行以前の「扇動罪」に該当する事件も含めると、総計127件中少なくとも108件(85%)が同様に、正当な表現行為により不当に起訴されたものだった。

また、国家安全保障関連事件で保釈が拒否された件数は129件(起訴された個人の89%)に上る。129件のうち、拘禁期間は平均328日だった。52件(40.3%)は、裁判または有罪答弁前に1年以上拘禁されていた。

国安法により、この5年間で香港は、寛容で自由な議論の街から抑圧と自己検閲の街へと変貌した。アムネスティの分析は、香港の国家安全保障の枠組みが、国際人権基準を書類上で蔑ろにしているだけでなく、当局によって反対派の声を標的にし、恐怖の空気を作り出すために乱用されていることを浮き彫りにする。

国家安全保障関連の罪で起訴された大多数の人は、権利の範囲内で行動していた。一方、検察当局は、欠陥のある国家安全保障枠組みの下で起訴を続け、まれに裁判所が無罪判決を下せば控訴している。各国政府は、香港と中国当局に対し、同法を廃止するようすみやかに圧力をかけるべきだ。

また香港政府は、廃止までの間、国家安全保障関連法の適用を直ちに停止すべきだ。最低限、裁判を待つ間、被告人には原則保釈が認められるべきだという「保釈推定」を復活させて裁判前の釈放を認めなければならない。表現の自由を行使しただけで、投獄されるべきではない。

背景情報

2020年6月30日に国家安全維持法が施行されて以来、香港の人権状況は深刻な勢いで悪化している。市民社会は事実上解体され、表現の自由、平和的な集会の自由、結社の自由など長年にわたり行使されてきた権利が大幅に制限されている。

アムネスティの分析は、2020年6月30日から2025年5月31日までの間に、国安法、犯罪条例(香港の刑法)第1部・第2部の「扇動罪」、国家安全維持条例に基づく違反行為で逮捕あるいは起訴された255人の事例を対象とした。「扇動罪」は植民地時代に制定されたものだ。なお、犯罪条例第1部・第2部は、2024年3月23日施行の「国家安全維持条例」に移行した。 アムネスティは香港政府に報告書を提出したが、香港政府はこれらの指摘を「現実の歪曲」と一蹴し、国安法が「香港における権利と自由の享受を回復した」と主張した。

アムネスティ国際ニュース
2025年6月30日

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