イラン:平和的批判者に弾圧続く

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2006年10月11日
国・地域:イラン
トピック:危機にある個人
アムネスティ・インターナショナルは、イランの人権活動家、少数民族活動家、その他の表現と結社の自由の権利を平和的に行使する人々が集中的に逮捕、拘束されていることに大きな懸念を抱いている。最近勾留された人々には、学校ボイコットを擁護するイランのアゼルバイジャン人や、死刑が差し迫っている4人の女性のためにデモを行おうとした10人以上の人びとが含まれる。一方、告訴・告発もなく裁判もないまま100日以上勾留されている著名な人権擁護活動家は、イラン当局による『悔恨』するための圧力に絶え間なくさらされていることが明らかにした。

アムネスティはイラン当局に対し、人権擁護活動家、平和的に権利を行使している人びとの逮捕と嫌がらせを直ちに止め、勾留されている人びとを拷問その他の虐待から保護するよう求める。

イラン国内のアゼルバイジャン人への弾圧
イランのアゼルバイジャンコミュニティの15人以上が、新学年が始まる最初の日(1 Mehr-今年は9月23日)に学校をボイコットするよう生徒に呼びかけたとして、最近勾留されたと伝えられている。同様のボイコットの呼びかけは、以前にも行われていた。勾留者の1人、エセドゥラ・セリミ(52歳)はタブリーズへ旅行中、ボイコットを支持するデモを計画するちらしを所持していたという理由で2006年9月9日に逮捕され、タブリーズの情報省の拘禁施設へ連れて行かれたとされる。また、ナカデー(スルドゥズ)出身のイスケンダー・ミルザイとメフディ・バヒディは9月14日に、エリ・セディク・ベイレクは9月15日にタブリーズで逮捕されたが、デモの計画に関するちらしを配布していたと言われている。先のアゼルバイジャンコミュニティによる大規模デモ(2006年5月)の際に逮捕され、後に釈放された著名な活動家もまた勾留された。活動家には、チェンギス・ベックタバー、ゴラムレザ・エマニやハッサン・アーク(別名ハッサン・アリ・ハジャボル)が含まれる。(参照:UA 151/2006 AI INDEX MDE 13/055/2006、およびパブリックステートメント:イラン「当局はハベック城の集まりの取締りを自制し、イランのアゼリー・トルコ人に対する人権侵害に取組むべきである」 AI INDEX MDE 13/074/2006)エベスプール家の3人の兄弟は、9月21日早朝、タブリーズの自宅で逮捕されたと報告されている。ムスタファ(25歳)、モルテザ、ムハンマド・レザ・エベズプール(14歳)は、3人ともそれ以前の2006年4月に勾留されており(参照:UA 120/06 MDE 13/047/2006およびフォローアップMDE 13/068/2006)、ムハンマド・レザ・エベズプールは勾留中の3日間に拷問を受けていたらしい。フェレイドン・メディプールとムハンマド・フセイン・プーゴーバンはウルムのオロミエで9月23日に逮捕されたと言われる。彼らの勾留場所は不明である。未確認ではあるが、オロミエで数人のデモ参加者がイランの治安部隊により負傷したと伝えられている。

アリ・アクバル・ムサビ・コイニ
9月21日イラン当局は、良心の囚人アリ・アクバル・ムサビ・コイニに対し、彼の父の追悼集会への参加を父の死後40日たって許可した。彼は、イランの女性差別をなくすための法改正を要求して6月12日にテヘランでデモを行って逮捕され、セクション209に勾留されていたのだが、この日、逮捕されてから初めてエビン刑務所の外に出ることを許可された。(参照:UA 181/06 AI INDEX DE13/075/2006)厳重な監視の下で参加した追悼式で、彼の頭部には明らかな打撲や傷があり、勾留時の虐待について不平を訴えていたと報告されている。彼は「私は重圧に苦しみ、1日に5回の尋問を受けていると皆に伝えてくれ」と言い、心身ともに虐待を受けている不平を訴え、「毎夜、手錠と足かせをされて寝ており、彼らは私のあらゆる便宜を奪っている」と述べたとされている。彼は、当局に宛てて過去の自分の行動を後悔していることを表明する悔恨状を書くよう圧力を受けているという。式の後、彼はエビン刑務所に戻った。彼は拘束されて以来、弁護士と接見することは許されておらず、家族との面会が許されているだけである。

アリ・アクバル・ムサビ・ホイニは元学生リーダーで、イラン国会(イスラム評議会、マジリス)の元議員であり、イラン同窓会(サズマンダネシュアミクテガン イラン エスラミ〔アドバー ターキム バーダット〕)の会長でもある。この組織は、2000年に彼が設立を支援し、イランの大学の卒業生であれば誰でも会員になれ、イランの民主政治や人権活動を進めている。国会での任期中、彼は人権と民主主義の促進に尽力し、刑務所や違法な拘禁施設を視察するなどして、拘束された学生や政治囚の問題に焦点を当てた。

死刑反対活動家の逮捕
9月24日、少なくとも10人がテヘランの国連事務所の外で平和的デモを行っている際に逮捕された。彼らは、コブラ・ラーマンプール、ファテメ・ハギガット-パジョー、ナガニン・ファテヒ、シャラ・ジャヘドを含む数人の女性の差し迫った死刑に抗議していた。逮捕者の中には、エスファハン大学の学生シャヒン・ザイナリとアリ・ダウーディが含まれると伝えられているが、今のところ確認できていない。彼らはゴルハクにある警察128分署に連れて行かれ、彼らの今後の活動について何らかの署名をした後、釈放された可能性がある。アムネスティは、現在死刑の判決を受けているこれらの女性のために緊急行動(UA)を呼びかけている。

アムネスティの懸念
アムネスティは、ここに報告された人びとが、全員でないにせよ、多くが表現と結社の自由の権利の平和的に行使しただけのために拘束されていることを懸念する。彼らは、直ちに無条件で釈放されるべきである。あるいは、明らかに刑事犯罪で起訴され、即時で公平な裁判を受けるのでなければ、釈放されるべきである。彼らは、弁護士や家族を含む外界との定期的接触を即刻許可されるべきである。イラン当局は、表現と結社の自由の権利を平和的に行使する人々に対する嫌がらせの慣行に終止符を打つべきである。

アムネスティはまた、勾留されている人びとが拷問や虐待の危険にさらされていることも懸念している。アムネスティは、アリ・アクバル・ムサビ・ホイミの即時無条件釈放と、悔い改めの文書を書かせる目的でエビン刑務所において拷問や虐待が行われているという彼の主張を早急かつ公平に調査するよう繰り返し要請する。

背景情報
主にイラン北西部に住み、アゼルバイジャン・チュルク語を話すイランのアゼルバイジャン人は、イラン当局に対し、15年以上、自分たちの言語で教育を受ける権利を尊重することを要求している。イラン憲法第15条は、「ペルシア語の他、出版物やマスメディアにおける地域言語や民族言語の使用、また民族の文学を学校で教えること」を認めている。

国際法では、少数民族に属する人びとは私生活においても公の場においても、干渉またはいかなる形態の差別を受けることなく自由に民族の言語を使用する権利を保有している。国家は、自らの言語を使用する権利を否定することはできない。

国家が国民の大多数に公用語で教育を行う場合も、少数民族は、国が定める最低教育水準に従うのであれば、民族の言語で教育を行う学校を設立・運営する権利を持つ。親は子供に与える教育の言語の種類を選ぶ優先権を有する。この権利には、公共機関によって設立・運営される教育施設以外の施設を子供のために選択する権利も含まれる。

国家当局は、(a)場所の如何を問わず少数民族に属する個人が、母国語を学び、母国語で教育を受ける適切な機会を有することができ、(b)自国領土内に存在する少数民族の言語を知ることを奨励するため、肯定的な方策を図るべきである。

2006年5月12日発行のイラン国営新聞の漫画が多くのイラン・アゼルバイジャン人コミュニティを怒らせることになり、イラン北西部の複数の町で大規模なデモが発生した。イラン当局はデモ参加者を退散させるために過剰な武力を行使し、殴打や殺傷に至る銃の発砲もあったという。何百人あるいは何千人のデモ参加者が拘束されたとの報告がある。多くはその後釈放されたが、何人かは裁判にかけられ、投獄または鞭打ちの刑を宣告されたという。

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