- 2023年11月10日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イラン
- トピック:
イラン当局に抑圧されてきた少数派バルーチの人びとは、シスタン・バルチスタン州のザーヘダーンで毎週、平和的抗議デモを行なってきたが、10月20日のデモでは、治安部隊の暴行、催涙ガス、放水砲などにさらされた上、多数が恣意的拘束や強制失踪、拷問などの過酷な扱いを受けた。
アムネスティは当局に対し、次回の抗議活動での武力行使をやめ、集会の自由の権利を尊重するよう求めた。
アムネスティが確認したところでは、子どもを含む数千人の礼拝者や抗議者に当局の残虐行為が行われた。子どもを含む数百人が逮捕され、多数の人びとの行方がわからなくなった。また、身柄を拘束された人たちは、暴行など不当な扱いを受けた。
イラン当局による対応の残忍さは止まるところを知らない。
各国はイランに対し、平和的デモ参加者への武力行使や被拘束者への拷問をやめ、平和的抗議に参加した子どもを含むすべての人たちの釈放を求めなければならない。
目に余る銃撃と暴力
目撃者によると、10月20日の金曜日、イラン南東部の都市ザーヘダーンにあるモスクを立ち去ろうとした参拝者数千人に、治安部隊が石を投げつけた。また、すでに祈りの場を離れていた数千人を包囲し、事態が収束するまで待機するよう命じた。
待機命令の数分後、治安部隊はデモ参加者に催涙ガスやショットガンを放ち始めた。目撃者によると、何人かの少年の頭や胸に金属弾が刺さり、逃げ惑うデモ参加者が、隊員に殴打されたり、恣意的に拘束されたりした。一方で投石で応戦するデモ参加者もいた。
アムネスティの聞き取りでは、10歳ほどの子どもから若者、年配の人たちまでが暴行を受け、地面を引きずられ、拘束されるなどした。その後、デモに参加したとみなされた人たちだけでなく、弾圧の様子を撮影した人たちも拘束された。
治安部隊はイラン警察の特殊部隊、革命防衛隊、私服警官などで、バルーチの伝統的な服装とフェイスマスクを着用している者もいた。
アムネスティのクライシス・エビデンス・ラボは、当日の様子を撮った動画や画像32点を検証した。そのうちの5点には、頭部の裂傷や傷を負った幼い子どもたちが写っていた。
集団逮捕と拷問
また、治安部隊はモスクの外で数百人の礼拝者を拘束した。拘束されなかった人の中には殴打された上、今後金曜礼拝に参加しないよう警告された人もいた。
拘束された人たちは、スポーツ施設に連れて行かれ、激しい暴行を受けた。その後、数人は、釈放されるか、刑務所や少年拘置施設に移されるかした。子ども2人が30日間の留置を命じられたが、その場所は知らされなかったと語る家族もいた。
アムネスティは、子どもを含む多数の被拘束者たちが、留置所で拷問や不当な扱いを受けたという証言を得た。
治安部隊による暴行で骨折した人も多かったし、治療もせずに放置された例もあった。壁に向かって上半身裸で立たされ、ペイントボールガンで撃たれたという証言もあった。
さらなる弾圧のおそれ
目撃者によると、襲撃当日の朝、ザーヘダーン全域で治安部隊が配備を増やし、祈りの場に通じる通りに検問所が設けられた。
アムネスティは、今回の弾圧の激化は、ザーヘダーンで実施されてきた毎週の抗議活動を全面的に封じ込めるためと見ている。
国外で活動するバルーチの人権団体ハールヴシュは、イラン警察の長官がこの9月、毎週の抗議活動をめぐって地元の部族や宗教の指導者を脅したと報告している。金曜デモは、1年以上前に起きた「女性、命、自由」を訴えるデモが発生して以来続いてきた。地元の人たちは、当局が流血の事態を再度起こすのではないかとおそれる。
アムネスティは国際社会に対し、蜂起に関わる人権侵害を調査する国連事実調査団の活動を妨げのないようイラン当局に圧力をかけることをあらためて求めたい。
アムネスティ国際ニュース
2023年10月26日
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