オランダ:スキポール空港収容施設火災に対する懸念

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2006年10月15日
国・地域:オランダ
トピック:難民と移民
 2005年10月26日から27日にかけての夜間にアムステルダム・スキポール国際空港の一時収容センターで発生した火災に関して、2006年9月21日、「治安に関する独立調査会」(以下DSB、 Onderzoeksraad voor Veiligheid)が報告書を公表したことをアムネスティ・インターナショナルは歓迎する。火災によって、11人の非正規移民が死亡、その他に15人が負傷している。

DSBの報告書では、安全でない拘留状況、安全上の勧告の不適切な履行、看守の不十分な訓練及び火災発見時の不適切な処置について、先の報告書の内容を再確認している。DSBは次のように結論づけた。

「担当政府機関が火災に対する保安をより深刻にとらえていたならば、犠牲者の数をおさえられたか、あるいは一人の犠牲者も出なかったと考えられる。」

DSBは、建物から避難させられた収容者に対して、不適切な登録があったことを明らかにした。拘留者の中には、不適切または受け入れ準備のない他の収容施設に無作為に収容された者もいる。また、特に呼吸器系の病気を抱えた人への治療が不十分であった。避難の後に他の収容施設に移された収容者は、弁護士や家族を含む外部との連絡が困難となった。また、避難の余波として発生した混乱の結果、多数が所在不明となった。後に人々は解放されたが、特別に再収容された施設における治療が不十分であった。精神科医は、現在も続く国外追放の可能性についての不安感が、当時の適切な処置を妨げたと批判している。

収容者の避難の再現と評価によって、今回のような大規模な避難に対する計画の欠如と収容者の間に起こったパニック状態が避難の障害となったことが明らかされた。

生存者に対するアフターケアについて、収容者の移送に関する情報の不足と不十分な追加的な治療計画などの要因によって、火災後のトラウマからの回復が妨げられた。

今日付けで公表されている、3つのそれぞれ独立した調査機関による報告書の結論により、他の同様の5ヶ所の収容施設においても火災予防の不足、建築面およびスタッフの災害対策能力の不足が示唆されている。

DSBは、火災への安全意識の不足はひとつの出来事というよりも、構造的な安全性の不足であると結論づけている。

アムネスティ・インターナショナルは、報告書の結論に危機感を覚えるとともに、オランダ政府、特に刑務所施設局、政府建設部 、ハーレマミーア市に対し、以下の通り要請する。
・ 迅速にDSBの結論と勧告に従う。
・ その法的地位にかかわらず、火災の生存者、強制送還された者、犠牲者の親族を含め、適切な賠償を提供する。

背景:
 2005年10月27日の夜、スキポール・オースト送還施設で発生した火事により、11人の非正規移民が不慮の死を遂げ、看守を含む他の15人が負傷した。移民らは火災発生の夜、被害のあったJとK43ウイングに収容されていた。

アムネスティ・インターナショナルは、2005年11月8日と11日の2つの公式声明で独立の調査が発表されたことを歓迎したが、同時に、オランダ政府に対して、火災の生存者を釈放し、彼らに適した代替的な住居と医療を提供するよう要求した。

アムネスティ・インターナショナルは加えて、審査が係争中である生存者の送還の延期を要求した。DSBを含む他の団体等からの同様の要求にも関わらず、火災の数日後に、数十名の移民がオランダから送還されている。移民らの多数は火災の数ヶ月後に釈放された。彼らの何人かはアムネスティ・インターナショナルに対し、継続的な医療面での訴えにも関わらず、ほとんど、あるいは全く治療を受けられなかったと話した。

2006年8月31日、移民統合大臣は、現時点でオランダ国内にいる39名の火災の生存者は、スキポール火災の例外的な性質による人道的配慮の結果、在留許可を得られるだろうと表明した。現在、収容施設全体で222名のうち、44名はすでに強制的に送還されており、その中には火災で負傷した人も含まれていたことが分かっている。この件に関してDSBは、医学的な症状が本人に知らされる前に送還された可能性があると考えている。

移民の収容については、その法的地位にかかわらず、個々のケースにおいて、国際法に照らして必要かつ相当な措置として十分な根拠を示す必要があり、定期的な司法審査の対象とされるべきである。

アムネスティ国際ニュース
(2006年9月21日)
AI Index: EUR 35/001/2006

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