オランダ:大規模監視による犯罪予測実験 即時停止を

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2020年10月12日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:オランダ
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(C) veerlesillustraties

オランダで、法執行機関により犯罪予測アルゴリズムに基づく治安活動の実証実験が全国的に広がりつつある。これは、特定の人物が犯罪を行う危険性や特定の地域で犯罪が起きる危険性を数理モデルを使って算定し、危険性が高いとみなされた地域や個人を重点的に警戒していくというものだが、大規模監視と民族差別をもたらしている。警察はこの実験をただちにやめるべきだ。

アムネスティは、オランダ南西部の都市ルールモントで行われている実証実験の一つ「検知プロジェクト」を精査した。その結果、予測に基づく取り締まりは、人権への脅威になることが確認された。

実験では、ルールモントの市民が同意なく「モルモット」にされて大規模監視の対象となっている。さらに、その設計・開発には東欧の人たちに対する民族差別が内包されている。

最近までサイエンスフィクションの世界の話だったことが、オランダ全土で現実のものとなりつつある。この予測的取り締まりによる市民の無差別で大規模な監視は、明らかな人権侵害であり、治安上とはいえ決して正当化できるものではない。

検知プロジェクトのような実証実験は全国で急速に広まっているが、人権に及ぼす影響を踏まえた保護措置の整備は、まったく行われていない。オランダ国会は、根本的に欠陥がある犯罪予測システムの利用を直ちに中止する措置を取るべきだ。

犯罪予測システムでは設計・開発において客観性と中立性がしばしば強調されている。しかし実際は、数理モデルやアルゴリズムに偏見や固定観念が入りこんでおり、特定の集団に高い危険度を示す結果となる。

こうした技術を導入する前に、まず人権への影響を検証すべきだ。今までのところ、オランダの警察で使用されているシステムは、いずれも包括的な人権評価を受けていない。

検知プロジェクト

警察当局は、ルールモントにおける「検知プロジェクト」の狙いを、スリや万引などの犯行を各地で重ねる強盗団(移動強盗団)による犯罪を予測し、防止することにあると説明している。また、「プロジェクトは、過去の犯罪データに基づく客観的で中立的なものだ」と主張する。

だがアムネスティの分析では、設計自体が差別的であり、偏見が反映されている。このプロジェクトでは、主に移動強盗団に狙いを定め、「スリや万引は、特に東欧出身者の犯行であることが多い」と定義されている事実が、とりもなおさず民族差別的だ。

警察は、カメラなど各種センサーを使って、ルールモント市内や周辺を車で移動する人びとを監視し、車種や車の移動特性の情報を集める。収集した情報をもとにそれぞれの車の「危険度」をアルゴリズムで計算し、得られた数値をもとに、車の運転者や同乗者が窃盗などの犯罪を行う可能性を予測する。予測する上での指標の一つが、車両や車内の人物が東欧諸国から来たかどうかということだ。

危険度が高いと出た車は、警察に止められ、身分証明書の提示を求められ、職務質問を受ける。オランダの法律には、正当な理由がない停車や持ち物検査から市民を保護する規定がない。

検知プロジェクトのもと、ルールモントの全市民と訪問者は、同意なく実験のモルモットにされている。さらに、疑うべき集団として東欧の人びとが標的にされており、実験は本質的に差別的性格を持っている。

検知プロジェクトおよび類似の実証実験は、プライバシーと個人情報保護の権利の明らかな侵害であり、合法性と非差別の原則から外れており、中止すべきだ。アムネスティはまた、オランダ当局に対しこうした実証実験で、何人がどのような影響を受けたかを検証して公開すること、再発防止と影響を受けた人への補償の取り組みを求めている。

アムネスティ国際ニュース
2020年9月29日

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