- 2023年3月 6日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:オランダ
- トピック:
オランダの控訴裁判所は2月14日、国境検査での人種差別的な慣行を禁止する画期的な判決を出した。人種に基づいて検査対象を選ぶのは人種差別だと、アムネスティなど4団体と多くのオランダ市民が国境警察を相手取って提訴していたもので、2人の市民に対する対応が争われた。裁判所は警察の対応は人種差別を構成するとして原告側の主張を認め、国が上告するか否かを問わず、国境警察に対応の即時停止を命じた。
裁判の争点は、国境警察が検査対象の選別理由の一部として人種で判断するのが許されるかどうか、だった。原告側は、「人種差別にあたる」と主張していた。
悪質な差別
裁判所は、国境警察が日常的に人種を理由に検査対象を選んでいると判断。とりわけ悪質な差別行為だと結論付けた。裁判所は「人種を理由に選別されることは、社会に受け入れられていない、二流市民として扱われているとの思いを抱かせる」との認識を示した。
原告側の一人は、「この判決で、私たちの社会に人種差別が入り込む余地はないという思いを強くした。この判決は、私や有色人種だけでなく、長年人種差別やレイシャルプロファイリング(警察などの捜査機関が、人種や肌の色、国籍、民族的な出身をもとに職務質問や取り調べの対象者を選ぶこと)に抗議し、平等な扱いを求めて闘ってきた人たちにとっても大きな勝利になる」と話した。
負の影響
控訴審の判事は、「国境警察の対応は偏見をもたらすものであり、検査対象に選ばれた人たちが苦痛と苛立ちを抱える結果になった」と指摘した。また、レイシャルプロファイリングが社会への負の影響についても強調した。
反人種差別団体Control Alt Deleteの担当者はこう話す。「一審の判決を覆した今回の判決では、人種や肌の色がその人の国籍を示すものではないことを明確にした。国側を支持した一審の判決は、多くの有色人種の人たちにとってはかなり衝撃的で、『自分たちは二流市民なのか』という思いに駆られることになった」
次なる目標
今回の画期的判決は、国境警察などの法執行機関が実施するレイシャルプロファイリングに歯止めをかける上で重要な一歩になる。
訴訟を起こした4団体は、何年もレイシャルプロファイリングを批判し、当局に廃止を訴えてきた。今回の勝利は、私たちが共に闘えば、国を動かすことができることを示した。
アムネスティ国際ニュース
2023年2月14日
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