- 2007年1月15日
- 国・地域:イラン
- トピック:死刑廃止
2006年1月10日の審理を受けて、テヘランの刑事法廷判事は1月14日、ナザニン・フィテヒを謀殺について無罪とした。しかし、2005年3月に正当防衛によって殺害した男性の遺族に対し、血の代償(賠償金)を支払うよう命じた。ナザニンは2006年1月に殺人罪で死刑判決を受けたが、カナダ国籍のイラン人でミス・ワールド入賞者のナザニン・アフシン・ジャムなど国外からの抗議があったため、2006年5月に最高裁が死刑判決を破棄し、再審となった。
また、16歳の時の殺人で有罪となり死刑判決を受けたミュージシャンのシーナ・ペイマルドは、司法長官の命令で執行が停止されたと伝えられている。死刑の執行は2006年9月、18歳の誕生日の数日後に行なわれる予定だったが、被害者の遺族が彼のネイ(フルートに似た中東の楽器)の演奏に心を動かされ、直前になって執行が延期された。ネイの演奏は本人の希望によるものだった。和解調停のため執行は2カ月間猶予されたが、被害者の遺族が1億5000万トマン(16万米ドルあまり)というシーナ・ペイマルドの家族が払えない額の賠償金を要求したため、彼は今も執行の危機にある。弁護人は新証拠を提出した後の2006年11月に事件の再審理を求めたが、裁判所は、シーナ・ペイマルドが精神障がいであるという証拠を適切に考慮しなかった。
イランではほかに、少なくとも23人の未成年時犯罪者が死刑判決を受けていると伝えられている。名前および犯行時の年齢(判明しているもの)は以下の通りである。
- ベニアミン・ラズリ、Beniamin Rasouli, 17歳
- ホセイン・トラニ、Hossein Toranj, 17歳
- ホセイン・ハッギ、Hossein Haghi, 17歳
- モルテザ・フェイジ、Morteza Feizi, 16歳
- サイード・ジャジー、Sa’eed Jazee, 17歳
- アリ・マヒン・トラビ、Ali Mahin Torabi, 16歳
- ミラド・バフティアリ、Milad Bakhtiari, 16歳
- ファルシャド・サイーディ、Farshad Sa’eedi, 17歳
- ムスタファ、Mostafa, 16歳
- マハムード、Mahmoud, 17歳
- サベル、Saber
- ハミド、Hamid, 17歳
- サジャッド、Sajjad, 17歳
- ファルザド、Farzad, 15歳
- ホセイン・ガラバグルー、Hossein Gharabaghloo, 16歳
- アスガル、Asghar, 16歳
- イマーン、Iman, 17歳
- ネマト、Ne’mat, 15歳
- ムハマド・ムサヴィ、Mohammad Mousavi,
- デララ・ダラビ、Delara Darabi, 17歳
- ハムザー、Hamzeh S, 17歳
- シャーラム・プルマンスーリ、Shahram Pourmansouri, 17歳
- ヘダヤト・ニルマンド、Hedayat Niroumand, 15歳
イランは自由権規約と子どもの権利条約の締約国であり、18歳未満の時の犯罪に対して死刑を科してはならない。にもかかわらず、アムネスティはイランで1990年以降に21件の未成年時犯罪者の死刑執行があったと記録している。2006年には、未成年時犯罪者に対する死刑の執行を続けているのは世界でイランとパキスタンだけであった(パキスタンは、2000年の青少年司法制度法によって、国の大部分において、犯行時18歳未満の者に対する死刑を廃止していたにもかかわらず、執行を継続した)。クルド人の人権団体によると、2006年12月末、18歳未満の時に行なった殺人の罪で、22歳のナセル・バトマニがサナンダイ刑務所で絞首刑に処せられた。当局は、死刑判決を受けた未成年時犯罪者を拘禁しておき、18歳の誕生日を過ぎてから執行しているようである。
イラン当局は、数年間にわたって、18歳未満の時の犯罪に対する死刑の適用を禁止する法律を審議してきた。青少年特別法廷の設置法案が2006年の夏に国会で成立したと伝えられているが、法律がイスラムの原則と矛盾しないかどうか審査する憲法擁護評議会ではまだ承認されていない。
2005年1月、子どもの権利条約の遵守状況を監視する国連子どもの権利委員会はイランに対し、18歳未満の時の犯罪で有罪となったすべての人びとの死刑執行を即時停止し、未成年時犯罪者に対する死刑の適用を廃止するよう求めた。
2005年12月9日、超法規的、即決あるいは恣意的処刑に関する国連人権委員会特別報告者のフィリップ・アルストン氏は次のように述べた。「実質的には世界中の他のすべての国が、未成年時の犯罪に対して死刑を適用しないときっぱりと決めている中で、イランのしようとしていることは殊に容認しがたい。犯行時に未成年だった者を死刑にしない義務があることは明白かつ疑いようもないものであるだけでなく、イラン政府自身が子どもの死刑をやめる予定であると宣言しているにもかかわらず、このような処刑が行なわれようとしていることに驚きを覚える。」
ナザニン・フィテヒに対する死刑判決が破棄され、シーナ・ペイマルドの死刑執行が一時停止したという知らせをアムネスティは歓迎する。しかしイランが自由権規約および子どもの権利条約の締約国としての義務に従い、未成年時犯罪者のすべての死刑執行を停止するため緊急に措置をとること、またすべての未成年時犯罪者への死刑を廃止するために直ちに手段を講じることを要請する。
アムネスティ国際ニュース発表
(2007年1月15日)
AI Index: MDE 13/002/2007
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