スーダン:戦争犯罪の容疑者二名の国際刑事裁判所への召喚を申請―ダルフールにおける正義の実現に向けて小さいが重要な一歩

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2007年2月27日
国・地域:スーダン
トピック:地域紛争
国際刑事裁判所(ICC)の検察官が本日、ダルフールにおける人道に対する罪および戦争犯罪の容疑者二名に対する召喚状を申請したことは、何百万にものぼる、ダルフールで起こったそうした犯罪の被害者の正義の実現に向けた、ささやかだが重要な一歩である。アムネスティ・インターナショナルは、そのように述べた。アムネスティは、検察官に対し、できるかぎりすみやかに、さらなる召喚状や逮捕状を発布するよう求めた。

アムネスティは、また、国連安保理に対し、二人の容疑者が自発的に出頭しなかった場合、彼らを逮捕してICCに引き渡すだけでなく、ダルフールにおける人道に対する罪や戦争犯罪に責任のある者すべてを裁判にかけるために、スーダン政府が必要な国内法を整備し実施するよう求めることを、要請した。

アフマド・ハルンとアリ・ムハンマド・アリ・アブデルラフマン(別名 アリ・クシャイブ)は、殺人、財産破壊、略奪、強制的移転、強かん、自由剥奪、拷問、個人の尊厳を侵害する行為、その他の非人道的行為などの人道に対する罪および戦争犯罪の嫌疑で起訴された。

アフマド・ハルンに対して令状が出されたのは、大変重要なことである。これは、ICCが元政府高官を訴追しようとする最初の試みなのである。それはまた、スーダン政府とジャンジャウィド民兵との関係を示すものでもある。スーダン政府は、未だにその事実を否定しつづけている。

二人に対する召喚状申請は、ダルフールでの人道に対する罪や戦争犯罪に関する捜査開始後、一年半で実現した。現在に至るまで、スーダンその他の国の検察官は、そうした犯罪の訴追や捜査に真剣に取組んではいない。本日、召喚状申請が出たことで、ダルフールでそのような犯罪を犯し、現在も犯し続けていながら処罰されないままになっている何千もの加害者たちが裁判にかけられ、何百万もの被害者やその家族たちがICCやスーダン、あるいは普遍的管轄権を行使している国々の裁判所の手続によって完全な賠償を得られるよう保障するという、国際社会が直面している課題が明らかになった。

ICC検察官は、戦争犯罪や人道に対する罪について、各国が捜査や訴追できない、もしくはその意思がない場合、捜査を行い、どのような容疑者であっても訴追するという権限を、ローマ規程に基づいて有している。しかし、それにもかかわらず、「そうした犯罪について最大の責任がある指導者」だけを訴追する、と申し述べている。スーダンには、他にも、このような責任者がもっとおり、その十分な証拠を得ることが可能なことも明らかである。したがって、ICC検察官が責任者を訴追しようとする方針を貫くならば、近い将来により多くの召喚状や逮捕状を申請しなければならない。アムネスティは、本日、ICC検察官が、ダルフールで続いている他の犯罪も捜査すると約束したことを歓迎する。

安保理は、2005年の決議1593において、スーダンに対し「ICCに対する完全な協力と必要なあらゆる支援の提供」を求めている。しかしそれにもかかわらず、スーダンのモハメド・アリ・アルマルディ法相は、今日、「ICCは、いかなるスーダン国民に対する管轄権も有さない」と述べ、「スーダン政府は、自国の司法制度外で、スーダン国民を裁判にかけ、処罰することを許すつもりはない」と表明したという。ICCは、被疑者が召喚に応じない場合、令状を執行するための警察力を持たない。ICCは、被疑者の逮捕について、居住国政府の意向や、アフリカ連合(AU)のスーダン派遣団(AMIS)のような、平和維持活動に頼っている。しかし、アフリカ連合は、ICCの捜査や被疑者引渡しを支援するための、ICCとの協力協定への署名を1年以上も拒んでいる。

スーダンが被疑者引渡しを拒んでいるため、現在、被疑者が引き渡されない場合にICCの召喚状を執行するという義務は、AUを含む国際社会の側にある。召喚状その他の令状が、何らのフォローアップもなしに発布された場合、被害者やその家族は正義や賠償を受けられないままとなる。国際社会は、スーダンの問題に関して、ダルフールでの犯罪を裁判にかけるためだけではなく、ICCの持続的な有効性を守るためにも、行動しなくてはならない。

ダルフールで行われた犯罪は、極めて規模が大きい。紛争がはじまって以来、200万人以上の人びとが避難し、約8万5千人が殺害され、何千人もの女性が強かんされた。

安保理がすでにルワンダの事例で認めているように、人道に対する罪や戦争犯罪を捜査し、その被疑者を訴追するのは、世界共通の責任である。安保理は、スーダン政府が役割を果たすよう求めるだけでなく、その他のあらゆる国々に対しても、ダルフールで起こっている戦争犯罪や人道に対する罪の被疑者が処罰を逃れられる場所を作ってはならない、と求めるべきである。すべての国は、戦争犯罪者を裁判にかけるために必要な法律を制定しなければならない。また、各国領域で被疑者を発見した場合にはいつでも当該立法を実施しなければならない。各国はまた、そうした被疑者を裁く能力や意思のない国の管轄権から、事件の移管を受け入れる意思を持つべきである。

スーダンに関してもっと詳しく:
アムネスティ・インターナショナル、スーダン:主要な関係者は、ダルフールにおいて正義が行われることを確保するために、今こそ断固たる行動を取らなくてはならない(英文)
http://web.amnesty.org/library/index/engior410322006.

AI Index: IOR 10/002/2007
2007年2月27日

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