- 2009年7月28日
- [日本支部声明]
- 国・地域:日本
- トピック:死刑廃止
近年、志布志や富山の冤罪事件が明らかになり、今年に入ってDNA鑑定に誤りがあった「足利事件」の再審開始が決定された。これらの冤罪事件は、代用監獄や捜査取調べ中の自白強要など、日本の刑事司法が国際人権基準に合致せず、人権侵害と冤罪の温床になっていることを示している。昨年10月に執行された「飯塚事件」の久間三千年さんの死後再審の動きも進められおり、死刑制度を含む日本の刑事司法制度の見直しが国内外から強く要請されている。今回の死刑執行は、こうした声に背を向けるものである。
法律上、事実上の廃止を合わせると世界の70%以上の国が死刑を廃止している。2008年に死刑執行を行った国は25カ国である。東アジアを見ると、韓国では10年間、台湾では約3年間死刑執行は行われていない。G8諸国で日本のほかに唯一死刑を執行している米国でも死刑執行は抑制傾向にある。さらに死刑の適用に積極的であるとされるイスラム諸国の中にも、近年、死刑の適用について慎重な国々が増えつつある。日本は死刑の適用を増やしている、世界で数少ない国となりつつある。
国際的な死刑廃止の流れを受け、2008年12月18日には国連総会において2年連続となる死刑執行の一時停止を求める決議が採択された。また、2008年10月には、国連自由権規約委員会が、「世論の動向にかかわりなく、締約国は死刑の廃止を考慮すべき」とし、世論を口実に死刑廃止に向けた措置を一切とろうとしない日本の態度を非難している。
本日執行されたうち、陳徳通さんは死刑判決確定から3年あまりでの執行だった。山地悠紀夫さんと前上博さんは2009年2月より執行の危険性が高まっていたため、アムネスティは緊急行動(UA)の対象としていた。当局に対しても世界中から執行停止などを求める要望が寄せられていた。
山地さんと前上さんは、本人が控訴を取り下げており、第一審の死刑判決の再審査を経ないまま死刑が確定した。自由権規約委員会は、死刑判決の義務的な再審査制度の導入を求めている。さらに山地さんは、犯行時の責任能力について争いがあり、責任能力を認めた鑑定結果について、鑑定人と被告人との面会回数が少ないなど、その信用性に疑問が指摘されていた。
日本政府は、人権諸条約の締約国として、死刑に頼らない刑事司法制度を構築すべき国際的な義務を負っていることを再確認するべきである。日本政府が、一刻も早く人権保障の大原則に立ち戻り、死刑の執行を停止し、近い将来に全面的に廃止することを、アムネスティは心から期待する。
2009年7月28日
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
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