日本:日本の難民認定制度の改善を求める ―カメルーン人難民に関する東京高裁判決の確定を受けて―

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2026年6月25日
[公開書簡]
国・地域:日本
トピック:日本の難民・移民

法務大臣 平口 洋 殿

2026年4月15日、東京高等裁判所は、カメルーン国籍の難民認定申請者について、原審である東京地方裁判所判決(2025年6月17日)を支持し、難民該当性を認める判断を示しました。その後、国が上告しなかったことにより、本判決は確定しました。

アムネスティ・インターナショナル日本は、本判決を、日本の難民認定制度における事実認定や評価のあり方について、国際的な難民認定基準との整合性を示した重要な判断として歓迎します。同時に、本件の申請者が14年間にわたり不安定な立場に置かれてきた事実を重く受け止めています。本判決の確定を踏まえ、以下の改善を日本政府および入管当局に求めます。

  • 本判決で示された供述の信憑性評価、偽造の疑いのある文書の取り扱いおよび「迫害」概念の判断を踏まえ、司法判断と行政実務との乖離を防ぐため、難民認定実務における審査指針および判断基準の見直しを進めること。
  • 難民申請者が迫害主体から個別的に把握されていることを重視する「個別把握説」に偏重せず、出身国情勢や申請者個人の状況を総合的に踏まえたリスク評価を行うこと。
  • 本判決を踏まえて国際基準に沿った判断基準を行政実務に反映し、初回審査段階から適切な難民認定を実現するとともに、判断理由について申請者への説明責任の強化や一次審査の聴取手続における代理人立会い、録音録画の実施等により審査の透明性と制度への信頼を向上させること。

本判決は、日本の難民認定制度における事実認定のあり方を見直す契機となるものです。アムネスティ・インターナショナル日本は、日本の難民認定制度が国際基準に沿った形で一層改善されることを強く求めます。

公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
2026年6月25日

背景情報

長期化が示す制度運用上の課題

本件申請者は、2012年2月の来日から2日後に最初の難民申請を行いました。その後、2回の難民認定申請と、却下に伴う不服申し立てを経て、実質的に4回の審査過程を経験しました。しかし、それぞれの過程では、主として供述の信憑性に関する評価を理由に、難民認定は繰り返し否定されてきました。2人の難民調査官と5人の難民審査参与員が関与した審査を経たものの、難民該当性は適切に認定されなかった結果として*、最終的な司法判断が確定するまでに14年以上を要しました。

難民認定手続には、迅速かつ公正な審査が求められます。「公正な審査」とは、難民として保護されるべき人を適切に認定し、「迫害の危険がある場所へ人を送り返してはならない」というノン・ルフールマン原則を厳格に遵守することを意味します。難民として認定されないまま、帰国できない人びとを長期間にわたり不安定な在留状況に置くことは、彼らの生活や尊厳に深刻な影響を及ぼします。

本判決が示した重要な視点

  1. 供述の信憑性評価
    裁判所は、供述の一部に不整合がある場合でも、その核心部分・大筋の一貫性や申請者の置かれた状況を踏まえ、供述全体の信憑性を総合的に検討し、肯定しました。このアプローチは、個別事情を踏まえて柔軟に評価を行うという、国際的に確立された難民認定基準とも整合するものです。
     
  2. 迫害リスクの現実的評価 ―「個別把握説」の否定―
    裁判所は、当局から敵視される組織において指導的立場にある者に限定せず、申請者が置かれた状況全体を踏まえて、帰国後の危険性を検討しました。その結果、組織の末端構成員であっても、迫害を受ける現実的な危険があり得ることを認めました。
    これは、入管実務や裁判所がたびたび採用して長年批判されてきた、いわゆる「個別把握説」を明確に退けるものであり、出身国情報などに基づく現実的なリスク評価を重視する難民保護の基本原則に沿う判断です。なお「個別把握説」とは、出身国の状況にかかわらず、難民申請者自身が迫害主体から個別的に把握されて迫害の対象とされていなければ難民該当性を認めないとする考え方です。
     
  3. 出身国情報の適切な活用
    本件では、他国政府の資料に加え、国際機関や人権団体による報告書も参照され、客観的状況の把握に活用されました。判決では、「米国務省や国際人権NGO『アムネスティ・インターナショナル』作成の報告書も、逮捕、抑留、暴行の核心部分にあたる具体的な供述を裏付ける」と明示されています。多様な情報源を踏まえた事実認定は、供述の信憑性判断の精度を高める上で重要です。
     
  4. 偽造された疑いのある証拠の扱い
    裁判所は、申請者が提出した一部文書について「いずれも偽造の疑いがあることは否定できない」としたものの、「偽造された疑いがあることが、被控訴人の供述の信用性を揺るがすものとは言えない」と述べました。この判断は、難民が出身国から有効な証拠を入手することの困難さを踏まえ、文書の真正性と供述の信憑性評価を区別して評価したものといえます。
     
  5. 「迫害」概念の解釈
    本件では、東京高裁は、「迫害」を「生命、身体又は自由の侵害又は抑圧及びその他の人権の重大な侵害」と定義しました。これは、原審が示した極端に限定的な定義「生命又は身体の自由の侵害又は抑圧)よりも、国際基準に近い理解を示したものとして重要です。

*同人については2回目の難民不認定処分に対する審査請求手続で難民審査参与員1人は難民該当性を認め、個別意見も提出されましたが、多数決で参与員の意見は難民該当性否定に傾きました。