リビア:行き詰まる難民・移民たち

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. リビア:行き詰まる難民・移民たち
2010年12月28日
国・地域:リビア
トピック:難民と移民
迫害や武力紛争から逃れてきた移民・難民・庇護希望者がリビア経由でヨーロッパへ渡航する際に、拷問や無期限の拘留を受ける危機にさらされている。アムネスティ・インターナショナルは12月14日に発表した最新の報告書でこのように述べた。

「リビアに戻るくらいなら、海で死んだほうがましです」
~2010年7月、リビア経由でマルタに到着したソマリア人女性、ファラ・アナムの言葉~

報告書「安全を求めたのに、恐怖に直面:リビアとマルタの難民・移民」では、避難と保護を求めて欧州連合(EU)に向かう多くの人びとの窮状と、彼らがリビアおよびマルタで直面した人権侵害が明らかにされている。

「リビアでは、難民・庇護希望者・移民も含め、外国人は非常に弱い立場にあります。彼らは、逮捕され、長期間の拘束や拷問および虐待を受けるのではないかと常におびえながら日々暮らしています」とアムネスティ中東・北アフリカ部長マルコム・スマートは語った。

「さらに、多くの外国人は母国に送還されることを恐れています。母国で迫害される危険があろうとも、彼らはお構いなしに送還されてしまうのです。」

リビア当局によれば、リビア国内には300万人以上の「非正規移民」がおり、その多くはアフリカの他の地域から来た人びとである。だがリビア当局は、これらの人びとは誰一人として難民ではないと主張している。

1991年以来続いている、ソマリアを荒廃させてきた紛争から逃れるために、毎年数万ものソマリア人が母国を離れ、リビアのような国を通る長く危険な旅をしている。全財産をはたいて地中海を渡る危険な旅に出る者も多い。

リビアでは、難民や庇護希望者は保護を必要としているにもかかわらず、法的に不安定な立場で暮らしている。リビアは難民条約に批准しておらず、難民認定の制度がない。リビアは難民条約を批准し、国連の難民機関である国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と協調する覚書に合意するよう勧告を受けていた。覚書は、リビア国内の難民や庇護希望者に対するUNHCRの支援を可能とするものだった。だが2010年11月、リビア政府はこの勧告を公式に拒否した。

「リビアの難民や庇護希望者は、どこにも助けを求めることができません。さらに昨年の6月にリビア当局がUNHCRに活動を一時停止するよう命じてからは、彼らの立場はいっそう弱いものとなっています。リビア当局は少なくとも、迫害や紛争から逃れてきた人びとが逮捕されたり暴力行為や虐待を受けたりしないよう保護し、迫害や深刻な危害を受ける危険性のある場所への送還を行わないよう保証しなければなりません」とマルコム・スマートは述べた。

ソマリア人のカップル、アーメド・マームードとマリアム・フセインは戦火で荒廃した母国から逃れてリビアに辿り着いた。当局に拘留されることを常におそれながら暮らしていた二人は、仕事を見つけることができず、何度も強盗に遭った。二人はついにヨーロッパに船で発つことを決意した。そのとき、マリアムは妊娠7カ月だった。

二人を含むソマリア人グループ55名は、海上を小型ボートで漂流しているところを2010年7月17日にマルタとリビアの船舶に拿捕・救助された。彼らはリビアからヨーロッパへと地中海を渡る危険な航海の途中だった。マリアム・フセインと他の26人は直ちにリビアに送還され、アーメド・マームードを含む残りの28人はマルタに連行された。

リビアにて、マリアム・フセインおよび拿捕されたその他の人びとは送還された直後に拘留された。男性は殴られ、電気ショックによる拷問を受けたと言われている。2カ月後にマリアムは赤ん坊を死産した。

難民・庇護希望者・移民に対する拷問や他の虐待行為は、リビアでは組織的に行われている。守衛が拘留されている人びとを殴ったり、金属の杖や警棒で殴打するのはしょっちゅうで、拘留の状況に不満を述べたり、治療を求めたりすれば、暴行や他の処罰を受ける。

このような事態にもかかわらず、10月に欧州委員会はリビア当局と「協力協定」を結んだ。これは2013年までの「移民流入の管理」と「国境警備」に関するもので、EUはリビアに5000万ユーロを支払うことになる。

一方、リビア経由でEUに入国した「第三国」国民にリビアへの「再入国」を認めることを含む、EU・リビア間のより広範な「包括協定」は協議中である。

「EUとリビアの協力は、国際的保護の基本的原則である人権と責任の分担を核としたうえで、なされなければなりません。EUとその加盟国は、アフリカからEUへの人びとの流入を防ぐためにリビアの協力を求めているからといって、リビアで続いている人権侵害を無視してはならないのです」とマルコム・スマートは語った。

2002年から2009年5月の間に、およそ13000人がリビアから船でマルタに到着したと見られている。しかしマルタは、彼らが望んでいたような安全な避難先ではない。マルタの法律では、難民を含むすべての新規入国者は「不法移民」と見なされる対象であり、強制的に収容される可能性がある。収容期間は定めがなく、実際には最長18カ月に及ぶ。

収容に対抗するための既存の法的救済措置は、欧州人権裁判所によって「実効的ではない」と判定されている。

「マルタはその地理的位置から、多数のさまざまな非正規移民や難民に対処しなければなりません。これが重大な課題であることは明らかです。しかし、だからといって欧州人権条約を含む国際的な難民法・人権法の義務をマルタが免除されるわけではないのです」とマルコム・スマートは述べた。

「マルタ当局は、海上での捜索・救助活動が、すでに弱い立場にある人びとを、リビアや、彼らが深刻な人権侵害にさらされる危険のある国へ強制送還・退去させることにつながらないよう保証しなければなりません。」

アムネスティ発表国際ニュース
2010年12月14日

関連ニュースリリース