- 2023年10月 4日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:リビア
- トピック:
リビア東部を実効支配する武装集団、リビア・アラブ軍(LAAF)は、メディア規制を直ちに解除し、被災地域への迅速な人道援助を進めるべきだ。
9月上旬、東部を襲った暴風雨で沿岸都市デルナ郊外の2つのダムが決壊し、市街地の大部分が水浸しになった。多数の家族が暮らす地区全体が濁流に飲み込まれ、海に流された。数千人が行方不明になり、数万人が家を失った。
洪水で壊滅的な被害が出る中で9月18日、住民数千人とボランティア支援者が街に繰り出し、ダムの決壊はLAAFの責任だと訴えた。一方、武装勢力は記者らの取材活動を厳しく制限する措置をとった。
LAAFは、過度のメディア規制を解除し、甚大な被害を受けた地域の人びとが速やかに人道支援を受けられるような対応を取るべきだ。
抗議する市民は、被害地域の迅速な復旧と復興支援を訴え、洪水は人災だとして国と地元の為政者の辞任を求めた。またアムネスティが得た証言よると、LAAFがメディアを規制し情報を操作する中、権力に批判的な市民を拘束しているということだった。LAAFは、被害地域への人道支援をないがしろにし、批判封じや責任回避などに躍起だった。
当局は人びとへの抑圧をやめ、被災者に人権本意の対応を取るべきだ。危機的な状況にある今こそ、住民が最低限の生活と安全を保障され、住まい、食料、健康、情報などが得られるようにすべきだ。
インターネットなどの通信網の遮断で状況の把握が困難な中、アムネスティは住民、記者、人道支援者、市民社会関係者、医師などから話を聞いた。LAAFの人間からも情報を入手した。
洪水の数時間後に現場から生中継で報道し、被害拡大の責任は汚職が横行する当局にあると批判した男性が、9月17日に拘束された。この拘束がきっかけとなり、LAAFが当局に批判的な市民の取り締まりを始めるのではないかとの不安が広がり始めた。もっとも、複数の情報によると、拘束された男性は数日後、LAAFの司令官の指示で解放された。
洪水の発生当初から、報道陣は情報統制やLAAF関係者からの報道干渉などを記事にした。アムネスティが聞き取りをした記者2人は、地元当局者から尋問を受けた後、市外退去を命じられたとのことだった。
デルナ在住の活動家は、反LAAF派とみられる番組の取材で洪水をめぐる状況を説明した後、拘束された。LAAFは市内に残るジャーナリストに救援隊に近づかないよう指示したり、取材中尾行したりしたという。
国連の報道官は9月19日、デルナへの国連チームの派遣について「受け入れ許可が出ていない」とメディアに語った。アムネスティはまた、LAAFによる検問もあって一部の被災地への援助が遅れている、リビア西部の医療チームや国際救助隊が退去を指示された、などの報告も受けている。
独立した調査が不可欠
長年リビアでは、複数の勢力が派を争う中、統治不全が続き、民兵や複数の武装集団が群雄割拠する状況が続いてきた。そんな中で今回、洪水が発生し、被災住民や人権擁護者の間で関係当局に責任を問う声が高まっている。
リビアでは不処罰がまん延している。当局が捜査に入ると発表したが、同国の司法に、真実を明らかにし、正義を果たす能力と意欲があるか、懸念される。
したがって、リビアの人権状況に関する調査には、独立した立場から国際調査団の派遣が不可欠だ。国が責任を果たす見通しが立たない以上、今回の災害についても、多数の犠牲者と町の崩壊という惨事の背景と要因を詳らかにする必要がある。
明らかにすべきことの一つは、被災地域を事実上支配してきた権力者らが、住民の生命、健康、その他の人権を保護することができなかった要因を検証することだ。
2011年の武力紛争以来、民兵や武装集団は、国際法上の犯罪にあたる行為を行ってきたとされるが、不処罰がまかり通るばかりか、武装集団が国家機関に組み込まれ、国家の資金援助を受けてきた。抗議する市民への容赦ない対応は、LAAFが公正な捜査や被害者への補償にはまったく無関心であることを示している。
背景情報
2011年以来、リビアでは武力紛争と政治的分裂がはびこり、責任の所在を明らかにせず、組織としての正当性を主張する民兵や武装集団が、政府機関や政治の権限を主張してきた。LAAFはリビア第二の都市ベンガジとリビア東部・南部の大部分を支配し、政治的な機能を果たしているが、反対意見を抑圧し、市民の意思と活動を制限し、権力維持に手段を選ばないことはよく知られている。
9月11日、リビアが熱帯性サイクロンの直撃を受け、何十年も管理・補修されないまま放置されてきたデルナの2つのダムが決壊し、町中が洪水に見舞われた。アムネスティは、難民、移民、国内避難民などを含め、被災した地域の人びとへの救助と復興活動の支援のために、世界中に迅速な行動を呼びかけている。
アムネスティ国際ニュース
2023年9月21日
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