リビア:難民・移民に対する虐待 容認するEU

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2021年7月22日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:リビア
トピック:難民と移民

(C) Amnesty International
(C) Amnesty International

地中海から欧州を目指す難民・移民がリビアの沿岸警備隊に拘束され、暴力や性的暴行を受け、リビアに送り返され、拘束施設で目に余る人権侵害を受けている。アムネスティの調査で明らかになった。この凄惨な人権侵害は、難民・移民を拘束するリビアと、リビアを支援する欧州の協力関係がもたらした結果だ。

リビアの難民・移民を収容する施設での人権侵害は10年にもおよぶ。リビアは、人権侵害への対応を公約しているにもかかわらず約束を果たさず、今も人権侵害は続いている。

昨年末からリビアの「不法移民対策局(DCIM)」は、管轄する収容施設を増やしており、人権侵害の拡大を招いている。新たに加えた2カ所は、元は民兵が独自に運営していた施設だったが、その2施設ではこの数年、収容された難民ら数百人が行方不明になっていた。

一方、リビア当局は、人権侵害にあたる行為に対する褒賞として民兵や係員に権限や地位を与えているため、人権侵害をさらに招く結果となっている。

地中海で暴力的に拘束し、地獄のような収容施設に強制送還するリビア沿岸警備隊への支援を続けている欧州諸国も、その責任が問われている。

アムネスティは欧州各国に対し、移民と国境警備に関するリビアとの協力関係を解除するよう求めている。イタリアは、7月半ばに開催される議会で、リビア沿岸警備隊への支援の継続について議論する。

アムネスティは調査の中で、DCIM管轄下の施設に拘束されたことがある53人の難民・移民に聞き取りをした。そのほとんどが、地中海上で拘束され、送還された人たちだ。

リビア当局はDCIMの施設を閉鎖すると公約している。にもかかわらず、収容施設の新たな開所や再開があり、それらの施設でも人権侵害が発生している。リビアが、人権侵害と不処罰を何ら問題視していないことのあらわれだ。

昨年、強制送還された難民ら数百人が行方不明となっている。当時はDCIMの管理下になかった民兵による拘束施設へ送り込み、数百人の行方不明者を出している。また、その拘束施設を、後にDCIMの管轄下に置き、「集合・帰還センター」(通称「アル・マバニ」)と改名したときには、嫌がらせや暴力で悪名高かく、2019年8月に閉鎖に追い込まれた施設の当時の責任者や係員をアル・マバニに配属した。

リビアの収容施設で続く人権侵害

今年6月末までの半年間で、難民・移民7千人以上が海上で拘束され、アル・マバニに送り込まれた。暴行を受け、劣悪で非人道的な収容施設に入れられ、強奪や強制労働、性的暴行などにさらされた、と拘束されていた人たちがアムネスティに語っている。

さらに、女性の中には看守に強かんされた者、自由や飲水と引き換えに性行為を強要された者もいた。そのために、自殺を図った人もいた。要求を拒んで、銃で殴られた女性もいた。また、病気だったにもかかわらず、治療を認められずに命を落とした乳児が、2人はいたという。

これらの凄まじい暴力的処遇と劣悪な環境は、アル・マバニ収容所に限ったことではなくDCIMの7カ所の収容施設で日常化していることが、アムネスティの調査で明らかになっている。

飢餓寸前までまともな食事を与えなかった施設もあった。アル・マバニと別の2カ所では、係員らが至近距離から銃の引き金を引き、死傷者を出したことがあった。

収容施設の組織全体が腐りきっており、施設は解体されるべきだ。リビア当局は、すべての収容施設を直ちに閉鎖し、難民・移民の収容を停止しなければならない。

命を危険にさらすリビアの「救助」任務

今年1月から6月までにリビアの沿岸警備隊に捕らえられ、リビアに戻された難民・移民はおよそ1万5,000人に達する。この数字は、昨年1年の総数を上回る。

アムネスティが聞き取りをした全員が、沿岸警備隊の対応を許せないと訴えた。乗っていた船に損傷を加えたり、転覆して溺死する様子を携帯電話アプリで撮影したりすることもあったという。この半年で、700人以上が地中海で溺死している。

難民・移民はしばしば、地中海上を飛行する機体や目前の船舶を見かけたが、支援の手が差し伸べられることはなかった。今年5月以降、欧州の国境警備機関は、地中海上の難民・移民が乗った船の捜索に、航空機とドローンを使い始めた。一方、欧州諸国の海軍は、これまで担っていた危機にある難民船の救助を原則、取りやめた。また、イタリアなど複数の国は、リビアの沿岸警備隊に高速艇を供与し、資金を拠出してトリポリの港に難民対応施設の建設を支援している。

リビアの沿岸警備隊や収容施設の係員らによる、難民・移民の命をないがしろにした不当行為を示す膨大な証拠があるにもかかわらず、EU諸国は、欧州を目指す難民・移民を捕らえ、非人道的な施設に連れ戻すリビアを支援し続けている。

自分たちの行動に弁解の余地がないことを認めるには遅すぎるものの、欧州諸国は難民と国境管理に関するリビアとの協力関係を即刻停止し、今も同国で苦境に置かれ、保護を切望する数千人の難民・移民の安全確保に一歩を踏み出すべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2021年7月15日

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