スリランカ:内戦に関する国連報告書を公開せよ

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2011年4月19日
国・地域:スリランカ
トピック:国際人権法
スリランカでの武力紛争中に行われた戦争犯罪の説明責任に関する国連報告書が作成された。12日、アムネスティ・インターナショナルは、潘基文国連事務総長に提出されるのを機に、この報告書を公開する必要があると述べた。

「スリランカの人びとに、委員会の見解を知らせる必要があります。この報告書はスリランカの直近の歴史における危機的な時期にかかわるものであり、スリランカの人びとにはこの報告書をすべて読む権利があります」とアムネスティのアジア太平洋部長サム・ザリフィは語った。

「潘事務総長は、『スリランカにおける持続可能な平和と和解のためには、説明責任が何よりも大切だ』といいましたが、潘事務総長はその言葉を守ってほしい−−直近の武力紛争中におきた国際法違反に対して事実解明と説明責任をとることが、将来の和解への第一歩です」

スリランカの武力紛争は2009年5月に終息したが、その最終局面で起きたとされる国際人権・人道法に対する違反行為の説明責任について事務総長に助言するために、2010年6月、国連専門家委員会が任命された。

2009年5月、ラジャパクサ大統領とスリランカを視察した潘事務総長が共同声明を発表した。国連専門家委員会はまた、共同声明にそって事実解明・説明責任を確実に実施する工程を進言するように依頼された。

アムネスティは申し立てのあった戦争犯罪に対して、独立した国際調査を実施するよう国連に求めた。こうした戦争犯罪には、1万人をこえる市民の殺害、反政府武装組織タミル・イーラム解放の虎(LTTE)が人間の盾として市民を利用し、子ども兵士を徴用したこと、スリランカ政府軍が人口過密地域を爆撃し、戦闘に巻き込まれた人びとへの食糧、水、治療などを容赦なく収奪したことなどが含まれている。

スリランカ政府は国連委員会の任命を「出過ぎた不当な」行為として抗議するとともに、全面的に協力することを拒否した。

「スリランカにおける事実解明・説明責任に関する委員会の仕事は、国際法違反に対する説明責任をとる一連の行動の始まりであって、終わりにしてはならない」とザリフィ事務局長は語った。

数十年にわたり、タミル・イーラム解放の虎(LTTEまたはタミルの虎)は組織的に民間人を狙い、バス停や駅に自爆テロ攻撃をしかけ、政治家や批評家を暗殺し、子ども兵士を徴用してきた。

また政府軍とその武装組織の行為は免責されており、法を無視した殺害、強制失踪、LTTEとの関係を疑われた人びとへの拷問などが罰せられることはなかった。

「スリランカでは、長期にわたる内戦をつうじて、国際法違反が責任を問われることはありませんでした。この国の歴史のなかで新たな1ページを開き人びとの信頼を得る方法は、真実と正義をもたらすことです」とザリフィ事務局長は語った。

「専門家委員会の報告書を発表し、独立性があり国際的な事実解明システムの設立にむけて動きだすことによって、国連は、こうした戦争犯罪は国際法に関わる問題であり、人権侵害に対して説明責任を求める機運が世界的に強化されているという強力なメッセージを送ることになるでしょう」

◆背景◆

スリランカの内戦終了前の数カ月、激化した闘争によって人道的危機が引き起こされ、約30万人の国内避難民が対立する両者から挟撃されることになった。

武力闘争の最後の数日、LTTEが市民を前後から挟み撃ちにし、逃げようとする人びとに対して銃口を向けたという複数の信頼すべき証言を、アムネスティは受けとっている。アムネスティはまた、スリランカ政府軍が犯した国際法違反に関しても、信じるにたる情報を得ている。スリランカ政府は、戦闘を避けるために市民がLTTEとともに移動することを許可した「非戦闘地域」を宣言したにもかかわらず、多くの市民が住む地域が政府軍から激しい砲撃をうけた。

2008年、スリランカ政府は救援隊、ジャーナリスト、独立監視人がLTTEに支配された北部地域に入るのを足止めして、悲惨な実態を適切に監視するのを妨げた。

スリランカ政府は危機的状況の規模をつねに矮小化して伝え、2009年の2月になってやっとわずかに「5万から7万人」の市民が戦闘地域にいるにすぎないと報告した。これは戦闘地域に取り残された市民への人道的支援が圧倒的に不足していることを意味している。

戦闘終了後、軍が統括する難民キャンプに30万人の人びとが数カ月も拘束された。スリランカ政府が、LTTEの脅威から人びとを守ろうと奮闘する国際的な人権擁護活動を妨害したためだ。そのご妨害はなくなったが、いまだに数千人がキャンプにとどまっている。

LTTEの構成員と疑われた数千の人びとが、「リハビリテーション・キャンプ」と呼ばれる状態で、起訴もされずに恣意的に拘束されている。
当局は国際法違反の申立てを認知し調査することを拒否することで、スリランカの無法状態を助長している。

2010年後半、スリランカ北部地域で拉致、強制失踪、裁判なしの処刑があったとの報告が激増した。犠牲者のなかには、武力紛争によって国内避難民となっていた帰還者も含まれている。

アムネスティ発表国際ニュース
2011年4月12日

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