スリランカ:経済的危機下で脅かされる人権

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2022年5月19日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:スリランカ
トピック:

スリランカの人びとが壊滅的な経済的危機に直面している中、政府は市民の人権を擁護し、平和的に反対意見を表明しうる環境を保障すべきだ。

アムネスティは、国際社会に対しスリランカの経済回復を支え、国際協力と援助の義務を果たすよう求めている。とりわけ、社会から取り残され、重大な危機に見舞われている人びとへの配慮を忘れてはならない。

スリランカの危機は、経済的、社会的諸権利と市民的、政治的権利とが、相互に依存し関連連していることを示す典型的な事例だ。したがって、経済の将来を議論する上で、人権を中心に据えなければならない。

スリランカの経済危機が人道危機の悪化につながらないようにするために、国際社会は人権擁護の視点から状況を見極め、債務救済や援助など同国が必要とする財政的、技術的支援に可能な限り乗り出すべきだ。

スリランカは新型コロナウィルス感染拡大によるロックダウン、新型コロナ危機以前からの税収減、国際資本市場からの締め出しなどが相まって、危機的な国際収支状況と深刻な外貨不足に陥っている。外貨は極端に不足し、必須医薬品、食料、調理用ガスや燃料などの輸入が著しく困難になっている。その結果、教育、保健、衣食をはじめとして社会生活全般に影響が出ている。

経済難民としてインドに渡った人はこれまでに75人になる。国内では市民数千人が路上に出て、スローガンやアート、芝居、ダンス、音楽などで抵抗の意志を示している。彼らの要求は大統領と首相の辞任だけでなく、国が人権侵害に対する責任を果たし、また、民族間、宗教間の団結と調和に取り組むことを求めている。

アムネスティが得た情報によれば、抗議行動はおおむね平和的に行われているにもかかわらず、当局は催涙ガスなどの武器の使用や恣意的な拘束などで、集会の自由を違法に制限している。

当局は、移動の自由、自由、人身の安全に対する人権を守る必要がある。また、スリランカは、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約を批准しており、国際的な援助や協力を得ながら経済的、社会的権利を保障する義務を負う。これらの権利には、健康、教育、社会保障、適切な食料、適切な生活水準に対する権利が含まれる。

今年2月、国際通貨基金(IFM)は、「社会保障費を増額し、対象を広げ、対象者を見直すことで保護策を強化し、マクロ経済上の調整が社会的弱者に及ぼす影響を少なくすべきだ」と勧告した。しかし、これまでに内閣が取った対策は、低所得世帯に3カ月間の給付金を支給するというだけで、その場しのぎだった。政府は、早急に社会保障に割り当てる予算を拡充し、底辺層を含めたすべての人びとを経済危機から保護しなければならない。

これまで、経済危機に陥った国で導入されてきた緊縮政策は、経済的、社会的諸権利に深刻な影響をもたらしてきたことが、アムネスティの調べで確認されている。例えばギリシャやスペインでは、緊縮政策で医療費が高くなって病院に行きづらくなり、低所得者、特に高齢者や心のケアを必要とする人、障がい者などが過度に厳しい状況に追い込まれた。

スリランカは、事態の深刻化を避ける上で他国が同様の経験で得た教訓から学ばなければならない。また、いかなる緊縮政策を導入するとしても、その政策が人権を侵害していないかどうかの評価は不可欠であり、誰もが分け隔てなく参加し、意見が言える評価の場を設けなければならない。

また、新たに代替政策を導入する場合も十分に精査する必要がある。さらに、緊縮財政は、底辺にいる人びとに過度な影響を及ぼしてはならず、あくまでも一時的でなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2022年5月6日

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