- 2022年9月16日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:スリランカ
- トピック:表現の自由
スリランカでは今年2月以降、独立後最悪の経済危機への抗議が広がっているが、当局はこれを容赦なく弾圧している。
抗議する権利を促進する義務があるにもかかわらず、政府は抗議活動の取り締まりに軍や警察を動員し、平和的に抗議する人たちを拘束してきた。市民に抗議する余地はないと言わんばかりの対応だ。
権利尊重の社会において集会の自由の権利は要であり、尊重され保護されなければならない。
抗議する市民の一部の暴徒化は許されないが、一方で当局には、人権に関わる法律の遵守が求められる。
催涙ガス、放水銃、実弾
5カ月前に抗議デモが始まって以来、警察や軍は催涙ガスや放水銃などを使用して、おおむね平和的なデモ隊を強制的に排除してきた。2度、実弾を発砲し、少なくとも1人の犠牲者を出した。当局の違法行為は他にもあり、集会の権利を無視する政府の姿勢が浮き彫りになっている。
ウィクラマシンハ大統領が7月21日に就任して以来、政府は警察や軍を動員して抗議する市民140人以上を逮捕し、18人に渡航禁止を言い渡した。さらに、大統領や国会議員は、抗議する活動家を「テロリスト」や「ファシスト」と呼んだ。
さらに当局は厳格なテロ防止法を適用して3人を逮捕した。過去にも社会の少数派や活動家、ジャーナリストらの拘束に適用されてきたこの法律は、国際人権法に違反しており、スリランカには同法の撤廃が求められている。
「連中は私を投獄したい」
4月2日以降、当局は身分証明書を提示せず令状も理由説明もないなど、適正手続きを無視して、数人を逮捕している。数時間拘置され、家族との連絡を断たれていた人たちもいる。
抗議活動の参加者は、「私の投獄を狙う治安当局は、やってもいない容疑で訴追しようとしているのではないかと不安だ」とアムネスティに話す。
治安当局は、恣意的な拘束を禁じ自由と安全の権利を保護する「市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)」などの国際法に則った対応を取らなければならない。国際法を遵守するためにも、当局は、適正手続きを無視した捜索や逮捕を認める緊急事態法の適用を停止すべきだ。
市民の側に立たない政権
アムネスティが話を聞いた別の抗議参加者は、「市民の多くは、渡航禁止や監視、暴力的扱いを受け、時には投獄されている。権力の維持にこだわる政府は、私たち市民の側に立ってはいない」と話す。
スリランカ当局は、当局が「不法集会」とする平和的な集まりに参加した人たちに対するすべての容疑を取り下げる必要がある。また、すでに拘束されている人たちを直ちに釈放すべきだ。同時に、警官によるデモ参加者への暴行容疑に対して、国際的監視団の協力を得た上での公正で透明性ある調査も求められる。
スリランカ当局は長らく、集会、移動、表現の自由の権利を弾圧してきた。平和的抗議活動への支持がかつてないほど広がる中、スリランカは抗議活動に対する方針を転換し、抗議の権利を認め、弾圧に終止符を打つべきだ。
アムネスティ国際ニュース
2022年9月9日
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