日本:袴田巖死刑囚の再審開始に新たな進展

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2012年3月12日
国・地域:日本
トピック:死刑廃止
アムネスティ・インターナショナルと死刑に反対するアジアネットワーク(ADPAN)は、1968年に有罪判決で採用された証拠に関する、新たな証拠にもとづく再審開始の手続きを、即時抗告などによって妨げないよう検察庁に求める。

3月10日に76歳の誕生日を迎える袴田巖さんは、逮捕以来45年以上拘禁され、また、1968年からは、43年以上死刑囚として投獄されている。

静岡地裁は検察側と弁護側からの各鑑定人に対し、被害者の衣服に付いていた被害者のDNAと、検察側が犯行時に袴田さんが着ていたと主張する衣服についた血痕のDNAとを比較するために、鑑定を行うよう命じた。鑑定結果は、2011年12月22日に出されたが、結論は一致しなかった。

弁護側は二つのDNAは異なるとしたのに対し、検察側は、両者は同一人物のものである可能性があるとした。静岡地裁は鑑定人に、新たな鑑定をするよう命じた。その結果は4月に出される見込みである。

袴田さんは1968年9月、静岡地裁で死刑判決を受けた。袴田さんは公判で、20日間の警察の取調べ中、暴行や脅迫を受け、最後は無理やり自白書に署名をさせられたと証言している。取調べには、弁護士は一切立ち会えなかった。そして彼は、勤め先の工場長と妻、その二人の子どもを殺害した容疑で起訴された。

袴田さんに有罪判決を下した一人である、熊本典道元判事は2007年、無実だと確信していたが、合議において多数決で押し切られたことを公にした。

アムネスティ・インターナショナルは、1980年に死刑が確定してから数カ月で、袴田さんの行動や思考に、深刻な精神障がいの兆候が現れはじめたことについて、一層の懸念をしている。拘置所は、家族や弁護団が本人の医療記録を閲覧することを認めていない。日本の刑事訴訟法第479条は、心神喪失の状態にある死刑囚の執行の停止を規定している。

日本では、1975年以来、死刑が減刑されたことがない。1983年から1989年の間に4人の死刑囚が、再審で無罪となった。2011年には二人の男性が、1996年までの29年間の獄中生活を経て、強盗殺人容疑を晴らし無罪となった。その再審で裁判官は、「自白」した録音テープは一部のみを録音したものであり、信用性に欠けると認定した(布川事件)。

死刑をめぐる背景

日本の死刑は通常、秘密裏に絞首により執行される。死刑確定者が執行を知るのは、当日の朝であり、家族には執行後に初めて知らされる。日本で最後に死刑が執行されたのは、2010年7月28日である。東京拘置所にて、尾形英紀と篠澤一男の両死刑囚に絞首刑が執行された。

世界の3分の2以上の国が、法律上または事実上、死刑を廃止している。アジア太平洋地域の41カ国のうち、17カ国が死刑全廃を法律で定め、9カ国が事実上死刑を廃止している。1ヶ国(フィジー)が、例外的に軍法上の犯罪についてのみ死刑を存置している。

死刑は生きる権利の侵害であり、アムネスティはあらゆる死刑に対して、犯罪の種類や、犯罪者の人格、執行方法に関わらず、例外なく反対する。

アムネスティは日本政府に対し、死刑廃止に向けた第一歩として、直ちにすべての死刑囚を減刑し、公式に死刑の執行を停止するよう求める。

2006年に発足した、死刑に反対するアジアネットワーク(ADPAN)は、アジア太平洋地域の24カ国の、弁護士、NGO、市民活動家、人権擁護活動家らによって構成される、政府や政党、宗教団体などに属さない独立系の地域間ネットワークである。アジア地域の死刑全廃に向けた運動を展開している。
http://adpan.net/

2011年、ADPANは不公正な裁判の報告書『When Justice Fails, thousands executed in Asia after unfair trials(不当に奪われる数千人の生命―アジアにおける不公正な裁判―)』 を刊行した。その中で、袴田さんの事件を取り上げ、再審の実現を求めている。

アムネスティ発表国際ニュース
2012年3月9日