- 2026年3月13日
- [公開書簡]
- 国・地域:日本
- トピック:日本の難民・移民
茨城県知事 大井川 和彦 殿
茨城県は2月、外国籍住民が非正規で働いている事例の情報を募り、摘発につながった場合に報酬金を渡すなどする「通報報奨金制度」を創設すると発表しました。住民サービスを提供し、住民の安全を守るべき自治体自らが通報報奨金制度を設けることは、正規に就労している外国籍の住民や、外見・言語に基づき「外国人」と認識される日本国籍の人を含むすべての人びとの尊厳を傷つけ、県民間での監視構造を促すものであり、地域での差別と分断を公然と助長することになりかねません。
外国人に対する差別的な言説の広がりや、国際的な人権基準を満たしていない日本の難民・移民受け入れ制度については、既に当団体を含む多くの市民団体や専門家、個人が警鐘を鳴らしています。通報制度の下では、疑心や不安に外見・言語に基づく推測が入り混じることで、その人権状況がさらに後退してしまう懸念があります。
茨城県は、あくまで対象は事業者であり、「排外主義の助長や国籍・人種等を理由とした外国人の差別などにつながるといった一部の批判については、まったく当たらないものと考えて」いるとしています。しかし、特定の集団に対する差別感情がすでにある状況で住民間の監視を促すことは、差別を助長しないと言い切ることはできません。
在留資格や就労資格の適法性は、外見、言語、職種だけで判断できるものではなく、専門的な法的確認を必要とする事項です。このような性質の事項に対し、一般住民による通報を地域自治体が金銭を伴う形で奨励すれば、客観的な証拠ではなく「疑わしい」という主観的な印象のみに基づく通報が急増する可能性があり、正規に在留・就労している住民までもが行政や警察の調査行動により個人のプライバシーや名誉、尊厳を恣意的に侵害される危険があります。差別を助長する通報制度ではなく、分断を煽らずに県民が非正規就労の問題を乗り越えられるよう努めるべきです。
また、非正規滞在や非正規就労が増える背景には、技能実習制度で正規に来日し就労したが一方的に辞めさせられてしまい困窮する事例や、雇い主から法律の範囲を超えた労働を求められる事例なども多くあります。入管制度・技能実習制度の問題への対処、また非正規就労に陥る前や後に相談しやすい支援体制を充実させることが重要です。
すべての人は、その在留資格や就労資格の有無にかかわらず、日本も承認している国際人権法により保障された基本的人権と尊厳を有しており、日本政府および地方自治体は、移民政策を実施するにあたっても、これらの普遍的人権を尊重する義務を負っています。私たちは、茨城県に対し、この通報報奨金制度創設を直ちに撤回するとともに、差別や分断を助長しない、人権に根差した政策の検討と実施を強く求めます。
2026年3月13日
アムネスティ・インターナショナル日本
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