シンガポール:薬物犯罪者を死刑にしない画期的な判決

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2013年11月21日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:シンガポール
トピック:死刑廃止

ヨング・ヴイ・コンさん(左)は死刑囚として6年間過ごした。(C) Save Vui Kong Campaign
ヨング・ヴイ・コンさん(左)は死刑囚として6年間過ごした。(C) Save Vui Kong Campaign

シンガポールは、薬物取引で有罪となった被告への死刑判決を終身刑に減刑するという画期的な措置を取った。今後も死刑状況の改善を続けていくべきである。

マレーシア人男性、ヨング・ヴイ・コンさん(25歳)は6年前に薬物関連の容疑で逮捕され、死刑を宣告された。 シンガポールの高等裁判所は11月14日、その死刑判決を終身刑とムチ打ち刑15回に減刑した。

これは画期的な判決である。シンガポールの厳格な薬物取締法のもとで死刑判決を受けていた囚人が減刑されたのは、おそらく同国史上初めてのことであろう。

シンガポールの法律ではヨング・ヴイ・コンさんのように47グラムのヘロイン所持は、麻薬取引に相当し、当時、刑罰は裁量の余地のない絶対的法定刑である死刑しかなかった。しかしこの絶対刑は国際法では禁止されている。

シンガポール議会は2012年11月14日に、特定の状況下での殺人と薬物取引に関して、死刑の絶対的な適用を廃止する改正法案を採択した。

ヨング・ヴイ・コンさんの罪は死を招くものではなく、国際法では死刑適用の根拠とならない。死刑囚として6年間も苦しむことは、あってはならなかった。 彼はムチ打ちも免れるべきである。ムチ打ちは残虐、非人道的かつ人間としての尊厳を損なう刑罰にあたる。

法改正により、囚人34名の刑が見直されていたが、ヨング・ヴイ・コンさんもそのひとりである。2013年に死刑からの減刑を受けたのは、これまでのところ4名のみだが、ヨング・ヴイ・コンさんは薬物関連としては初めてであった。

シンガポール当局は、11月14日の減刑判決をきっかけに、死刑に関して最終的には廃止することを視野にいれた真剣な議論を始めるべきである。 アムネスティは、他の死刑囚も減刑を受けること、そして2012年にとった死刑執行停止措置が無期限に延長されることを期待する。 シンガポールは薬物関連の犯罪に絶対的法定刑としての死刑を完全に廃止すべきである。

背景情報

シンガポールの改正法のもとで、裁判所には特定の状況下では裁量により死刑を適用しない権限が与えられた。

殺人の場合、被告は相手を殺す意思がなかったことを証明できれば死刑を避けることが可能になった。 薬物関連のケースでは被告が違法薬物を運ぶか、送るか、届けるかのいずれかの行為に関わっただけ、またはその行為をもちかけただけの場合、死刑を免れる。 同様に、被告が「自分の行動、または行動をとらないことへの判断能力が実質的に機能しないほどの精神異常」を患っていたことが証明できれば、死刑を回避できる。

このように死刑の絶対的適用を制限することは歓迎すべき措置だが、提案されている対策は人権法および人権基準に適合していない。特にむち打ち刑を代替刑罰とすること、精神障がい者への死刑の適用を認めることは国際法に違反する。 また、薬物犯罪で死刑を免れるには、中央麻薬局が薬物取引活動を阻止する上で被告が実質的に協力したと検察が認めることが必要とされている。

11月14日の判決は、薬物取引への絶対的法定刑を含め死刑を存続させているマレーシアでの論議をも促す契機になるべきである。 2012年にマレーシア政府は死刑の絶対的適用を懲役刑に変えることを検討中であると発表したが、減刑は薬物関連の犯罪と特殊な状況下の犯罪に限られている。

死刑は生きる権利を侵害する最も残虐かつ非人道的で人間としての尊厳を損なう刑罰であり、アムネスティはいかなる場合にも例外なく死刑に反対する。

アムネスティ国際ニュース
2013年11月14日

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