シンガポール:2年ぶりの死刑執行 死刑で薬物犯罪はなくならない

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2022年4月 5日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:シンガポール
トピック:死刑廃止

2年間、死刑執行がなかったシンガポールで3月30日、執行があった。

絞首刑に処されたアブドゥル・カハール・ビン・オスマンさんは、薬物関連の罪で絶対的法定刑(裁判所の裁量の余地のない刑罰)としての死刑を宣告されていた。絶対的法定刑としての死刑は、国際法違反である。

薬物の使用や保持に死刑を科す懲罰的薬物対策が、薬物問題の解決にならないことは、多数の事実が示している。政府は、薬物依存などの社会問題に対して、公衆衛生と人権尊重の視点で、正しい事実と地域の状況に応じた対策を取るべきだ。

世界では多数の国が死刑を廃止する中、薬物犯罪に死刑を適用するシンガポールは、世界の流れに逆行していると言える。アムネスティは、シンガポール政府に対し直ちにすべての死刑執行の一時停止を宣言するよう求める。今、停止しなければ、死刑執行が立て続けに起こるおそれがある。

また政府は、死刑執行を一時停止した上で、全面的死刑廃止に向けた一歩として、薬物関連罪への死刑の適用範囲を見直さなければならない。

背景情報

シンガポールでの過去の死刑執行は、2019年11月が最後だった。

3月30日に執行されたオスマンさんの家族は、3月23日付の通知書で本人との最後の面会となる来所を促されていた。

オスマンさんが執行された前日の3月29日には、知的障がいがあると診断されていたマレーシア人ナガエンスラン・ダーマリンガムさんに対する死刑判決が上告審で支持され、死刑が確定した。彼の処刑も、いつ行われてもおかしくないだろう。

ダーマリンガムさんは昨年11月、新型コロナに感染したために上告審が延期されていた。減刑を求める請願はすべて出尽くしたため、今回の審理が死刑を免れる最後の機会だった。だが、裁判長は判決言い渡しの中で、被告人の精神鑑定に基づく指摘と知的能力への申し立てのいずれも退けた。

昨年後半以降に死刑が確定した死刑囚は全員、薬物の罪で有罪となり、絶対的法定刑としての死刑を宣告されてきた。

国際人権法と国際人権基準は、薬物犯罪に死刑を科すことも、絶対的法定刑としての死刑も禁じている。

アムネスティは、いかなる場合でも無条件で死刑に反対する。世界の3分の2以上の国が、法律上または事実上、死刑を廃止している。

アムネスティ国際ニュース
2022年3月30日

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