セルビア(コソボを含む):ロマの強制立ち退き 3年経っても進まぬ再定住

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2015年4月10日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:セルビア(コソボを含む)
トピック:強制立ち退き

ベオグラードのベルヴィル居住区から100家族以上のロマが強制的に追い出されてから3年経つが、官僚の無能、怠慢、差別という始末が悪い要因が重なり、欧州委員会が多額の資金を出したロマの再定住プロジェクトは、まったく実を結んでいない。

国際ロマ記念日に公開した報告書の中で、アムネスティは、立ち退かされた家族の大多数が、いまだに人種的に隔離され、荒れ果てたコンテナに住んでおり、およそ50家族は再定住の見込みがたっていないことを明らかにした。

ロマの人びとは依然として満足のいく住居を待っているが、ベオグラード市の取り組みや欧州委員会からの360万ユーロ(約4.6億円)の拠出にもかかわらず、計画した新住居区は一つも完成していない。

当局の怠慢が続く間も、住居を失ったロマは、学校や職場から遠く離れ、公共サービスも受けづらい居住区でずっと暮らしてきた。

2012年4月欧州委員会は違法な強制立ち退きの救済措置として、ベオグラードのベルヴィルにある非公式の居住区を追われたロマの家族に新しい住居を提供する資金360万ユーロを拠出した。ベオグラード市は、ロマ家族と誠実な話し合いのもと適切な転居先を手当し、2015年2月までに再定住を終えることが求められていた。しかし市は、この期待にまったく応えることができなかった。

オーロヴスコ・ナセルエに12家族用のアパート1区画が、2015年7月末にようやく完成する予定である。一方で、2015年4月現在、再定住の対象となっている167家族のうち、不適切な住居立て直しのための支援を受けられたのは、わずか10家族のみである。さらに39家族が再定住用に開発された公営住宅に住めることになったが、この開発自体、不備な点の多いプロジェクトである。

残りの家族は、ベオグラード周辺の街から隔離された4区画で、コンテナに住み続けている。臨時の措置だとしても、このコンテナは適切な住居基準を満たしていない。このうち2カ所はベオグラードの中心部から20km以上離れているため、都市で生計を立ててきた多くのロマにとってその維持が難しくなり、国の食糧支援と生活保護に頼ることを余儀なくされている。

欧州委員会の規定によれば、360万ユーロは2015年2月までに活用されることになっていた。しかし、ベオグラード市はこの期限を守ることができず、期限は1年間延長された。にもかかわらず、市は50家族に新しい家を提供する資金は残っていないと説明した。欧州委員会が、ロマ家族に対する救済をやり遂げる覚悟で追加資金を確保しない限り、ロマ家族はコンテナの中にとり残されたまま、数が不足している市営住宅の空きを待つしかなくなる。

長年虐げられてきたロマの人びとにとって、わが家を追い出されるだけでも心理的負担は深刻だ。その上、孤立した一角でコンテナに何年も住まわせられれば、命と暮らしに与える影響は計り知れない。

アムネスティ国際ニュース
2015年4月8日