- 2015年9月16日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:セルビア(コソボを含む)
- トピック:難民と移民
セルビアのブチッチ首相は、難民と認められずに帰国する人から社会的支援を受ける権利をはく奪する法令制定を予定していると発表した。9月7日、ドイツでのメルケル首相との会談で明らかにした。
アムネスティはセルビアの首相に対して、方針を見直すよう求める。この対応は、帰還者の困窮状況をさらに深刻化させ、再び出国に追いやってしまうことになる。また、セルビア憲法が禁止する差別に当たる。
一方、メルケル首相は、ブチッチ首相に対して、今後ドイツが実施する施策をあらためて説明した。その中には、バルカン半島からの難民申請者に対する給付の削減も盛り込まれている。その大多数が、セルビアからの人びとである。
EUとセルビアとのビザ自由化合意後、2010年から2014年の間にドイツにおいて71,740人のセルビア人が難民申請手続きを行った。ほとんどが生活に困窮した人びとである。特に、その85%を占めるロマ民族は、社会的、制度的な差別を受け、失業率が高い。またアムネスティは、セルビアで強制立ち退きを受けて帰国したロマの人びとを調査したが、その多くは、代替の住居を提供されないため、国外に出るよりほかなかったということだった。
8月、ドイツは難民認定を受けられなかった最大9万人の難民申請者と非正規滞在者を、セルビアに送り返すと発表した。EU諸国からセルビアに送還される人びとに対する実効性ある支援や社会復帰支援策がなにもない状況では、最低限の社会サービスが得られず多くの人びとがホームレスとなる恐れがある。今回発表された方針が実施されれば、経済的支援もまったくなくなる。
セルビアが、市民の流出を本気で思いとどまらせようとするのであれば、社会支援の削減ではなく、彼らを他国へと追いやっている元凶である人権侵害に対し、具体的な措置を講じるべきだ。ロマに対する社会的な差別への対処も必要だ。
また、EUとその加盟国は、欧州委員会でのセルビアの加盟審査過程の中で、ロマの権利を保障するために取るべき施策に関して同国を支援することを検討するべきだ。対象を絞った経済支援も考えられる。
さらにアムネスティは、EUが「安全な出身国」リストを作成しないよう求める。特定の国を「安全」と指定することは、個人の状況に基づいて審査するという、公平で効率的な難民申請手続きの根幹を損なう。そして多くの場合、庇護の必要性を立証するにあたり、「安全な国」からの申請者に、過度な負担を強いることになる。また、出身国によっては事前に振り分けられて手続きから締め出され、最終的には送還されるという事態になりかねない。それは庇護希望者の国籍に基づく差別であり、難民条約第3条に違反する。
アムネスティ国際ニュース
2015年9月11日
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