イラン:国際法を無視する少年の死刑執行

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2016年8月11日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イラン
トピック:死刑廃止

他の少年を強かんしたとして一人の少年に死刑が執行された。イランでの少年の死刑執行としては、今年初めてケースとなった。

アムネスティはこれまで同国の少年の犯罪者に死刑が適用される状況を大規模に調査してきた。その調査の中で、ハッサン・アフシャーさん(19才)が、7月18日に死刑を執行されたことが判明した。罪は、男同士のアナルセックスを強要したというものだった。司法長官室が、少年の家族に再審議を9月25日にすることを約束していたにもかかわらず執行が行われた。

国際法違反であろうとも、あくまで少年への死刑を執行する意欲が見て取れる。アフシャーさんが逮捕された時は、まだ17才の高校生だった。当局の捜査、起訴、裁判が逮捕から2カ月という短時間で進められ、被告は、弁護士の接見も認められなかった。あたかも、急がなければ、執行ができないというかのようだった。

8月3日には、別の少年の執行が予定されていた。しかし、社会の圧力が強いために、8月1日に延期が決定された。

18才未満で犯したとされる罪で死刑を受けているイランの死刑囚は、現在162人にのぼる。彼らは、今回の執行で、とてつもない恐怖心を抱くことになる。

次には自分の番が回ってくるかもしれないという恐怖だ。不当な司法制度が与える少年たちの恐怖は、死刑の減刑およびいかなる場合も18才未満での犯罪への死刑の廃止という刑法改正なしには、終わらない。まずは、死刑の完全廃止に向けた一歩として、この措置をとるべきである。

アシャーさんは、2014年12月に逮捕された。彼を含む3人の少年が別の少年に性行為を強要したとする訴えがあったからだ。ハッサンさんは、あくまでも同意に基づく性行為だと主張した。相手とは、これまでも好意的に性行為をしていたという。

強かんの申し立てがあれば、当然当局は捜査し、その根拠が十分あるなら、加害者を公正な裁判にかける必要がある。とはいえ、国際法は、強かんを死刑の対象として認めていない。さらにイランでは、同意のもとでの男性間の性行為を死刑になり得る犯罪としているため、もし今回の件が同意に基づくものと見なされていたら、相手の少年も死刑を科されていただろう。同意の上での成人同性間の性行為を犯罪とするのも、国際法違反である。

最高裁は当初、捜査が不十分だとして死刑判決を破棄していたか、最終的にはこの3月、死刑を支持した。

背景情報

一般にイランでは、男性間のアナルセックスへの懲罰は、能動的か受動的かという役割によって、また、同意か強要したかによって、異なる。同意に基づく場合は、受動的な側が死刑を言い渡される。能動的な側が死刑となるのは、当人が既婚者、あるいは当人が非イスラム教徒で相手がイスラム教徒の場合に限られる。もし、性交に同意がない時は、能動的な側は死刑を受け、受動的な側は被害者となり罪を問われない。この法律では、同意のもとでの行為でも、能動的な側は死刑を免れるために、強要されたものと申し立てたくなるだろう。

子どもの権利条約をはじめとする国際法は、18才未満で犯した罪への死刑の適用は、断固として禁止している。

アムネスティ国際ニュース
2016年8月2日

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