- 2017年5月16日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:リビア
- トピック:
リビアでは、法の支配が失われ、民兵による市民の拉致が多発している。その結果、社会秩序の混乱に拍車がかかり、市民は身の危険を感じる日常を強いられている。民兵による身代金目的などの拉致は、2014年以降急増している。特に同国の西部では、拉致が日常化し、数百人が消息不明だ。
トリポリ大学教授のセーラム・モハメド・バイタマルさんも被害に遭った一人だ。2週間ほど前、トリポリ郊外の自宅近くで拉致された。その後行方が分からず、家族も連絡が取れていない。
自宅近辺の地区は、複数の民兵組織の支配下にある。民兵組織の中には、内務省と国防省の管理下で活動するとされる組織もある。犯行声明は出されておらず、どの組織が関与したのか分かっていない。
民兵らは、大学教授であろうと容赦なく拉致しており、いつ民兵に狙われてもおかしくないという恐怖と不安を市民に植え付けている。またバイタマルさんの拉致は、政治家と役人が拉致の共犯者であるため、政治家と役人にとって利益となる拉致を止めさせることができないということを物語っている。
活動家やジャーナリストは、拉致が同国の極めて悲惨な現実であるとしている。内務省トリポリ刑事捜査部の情報にもとづく報道によれば、昨年12月15日から今年1月末までの1カ月半で発生した拉致は、293件に達する。多くの家族は、報復を恐れて警察に被害届を出さないため、実際の件数は、もっと多いとみられている。
狙われる理由は、政治的、部族的な立場や、職業、資産などだ。彼らの機密情報や高額の身代金が目的だ。ほとんどの拉致は身代金目的だが、拘束されている人物との交換が条件になることもある。また、民兵に批判的な人物、ジャーナリスト、人権擁護活動家などを沈黙させる手段に利用されることもある。
さまざまな民兵組織や武装組織が対立する中、こうした組織が目に余る人権侵害を犯しても、そのほとんどが罪に問われない。国防省や内務省の管轄下にあるような民兵組織も、実際には国の監督や指示を受けることはない。
リビアはまずなによりも、法秩序を回復すべきだ。統一政府は、これまでの拉致事件を徹底捜査し、バイタマルさんらすべての被害者が1日でも早く無事に帰宅するよう、手を打つべきだ。
また、国際社会は、民兵組織や政治家との対話の機会があれば、拉致問題を取り上げなければならない。犯罪を見て見ぬふりをすれば、犯罪と不処罰の悪循環を助長する。
また、政治家は、拉致に関与する組織への財政的支援を中止し、人権侵害の停止に尽力すべきだ。
国際刑事裁判所はこれまで、民兵組織や武装勢力の人権侵害の捜査を優先してきたが、歴代政権とつながりがあったこともあり、目に見える成果を上げていない。今後は、武装勢力と民兵双方の犯罪にメスを入れるようにすべきだ。 国際社会もまた、国際刑事裁判所への支援とリビアの法秩序の回復に向けて、それぞれの役割を果たすべきだ。
アムネスティ国際ニュース
2017年5月8日
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