- 2018年3月22日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:スペイン
- トピック:
スペインでは、治安関連容疑で逮捕・起訴されるソーシャルメディアの利用者が、急増している。起訴された人たちの中には、ミュージシャン、ジャーナリスト、人形師らもいる。彼らの表現手段である歌詞や政治的風刺が問題だとされている。
「歌詞が問題だ」とラッパーを刑務所送りにしたり、政治的風刺を違法化したりするなど、インターネットでの表現行為に対する締め付けが、まずます厳しくなっている。
こうした状況の中、表現者たちは萎縮し、異なる考えや物議を醸すジョークの発言や発信に慎重にならざるを得ない。
刑法第578条は、テロの賛美やテロ被害者の侮辱に対して、罰金、公職からの追放、懲役刑などを科す。
同法違反で起訴された人は、2011年は3人だったが、2017年には39人に増加し、また、有罪判決を受けた人は、過去2年で70人近くに達した。
テロの脅威は、確かにある。治安の維持は国の重要な課題であり、時には、表現の自由を制限する正当な理由になる場合もあるだろう。しかし、同法はあまりに曖昧で対象範囲が広いため、当局に恣意的な解釈を許し、音楽やアートの表現活動を委縮させている事態は、極めて問題である。
音楽で政治を語るラッパーの集まり「ラ・インスルヘンシア」の12人は昨年12月、武装グループをたたえる歌を歌ったとして、有罪判決を受けた。他にも多数のアーチストが摘発されてきた。刑法第578条を乱用した抑圧を報じることも同法に抵触することになり、実際に「テロをたたえた」として起訴された人たちのインタビューを映像化した映画制作者が、起訴された。
2015年、パリの襲撃事件と国際的なテロへの脅威の高まりを受け、同法が拡大適用されたが、摘発されたケールの多くは、解散済みか、活動休止中の国内武装グループに関する表現だった。
加盟国にテロ対策を求めるEU指令(EUの法令の一種)が、今年9月までに全欧で施行されるが、この指令も、処罰の対象の一例に「テロの賛美」を挙げている。スペインの事例から得るべき教訓は、「テロの賛美」や「犠牲者への侮辱」など定義があいまいな罪が、表現の自由の権利の重大な脅威となるということである。
国の治安名目で自由を制限し、権利を守ると見せかけてはく脱するという不穏な風潮は、スペインだけでなく、ヨーロッパ各国に見られる。
各国政府は、テロの犠牲者の権利を守るべきであって、彼らを利用して表現の自由を抑圧すべきではない。また、スペインは、刑法第578条を廃止し、自分を表現しただけで起訴された人たちに対する起訴を取り下げるべきである。
ラップは犯罪ではない。ツイートでジョークを飛ばすのはテロではない。人形劇を上演して、刑務所送りではたまらない。
アムネスティ国際ニュース
2018年3月13日
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