中国:天安門事件から29年 犠牲者家族に今こそ正義を

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2018年6月 4日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:中国
トピック:

© Amnesty International France / Photograph © Stuart Franklin
© Amnesty International France / Photograph © Stuart Franklin

1989年6月3日から4日にかけて、人民解放軍の部隊が北京に入り、天安門広場に集結して政治改革を求めていた学生たちを武力で鎮圧し、学生ら数百人以上を殺害した。犠牲者数は数百人とも数千人とも言われている。

天安門事件から29年目を迎えるにあたり、アムネスティは、政府に対し軍による弾圧について捜査を求めるとともに、表現、結社、平和的集会の自由の権利を全面的に擁護するよう、あらためて要求する。

アムネスティは、引き続き政府に対し以下の要請をする。

  • 天安門広場での軍による弾圧について、公正で独立した捜査を開始し、人権侵害の加害者の責任を問うこと。
  • 人権侵害のあったことを公に認め、弾圧の死傷者全員に説明責任を果たすこと。
  • 犠牲者とその家族に十分な補償を提供すること。
  • 表現および平和的な集会の自由の権利の行使に対する嫌がらせや訴追をやめ、権利を行使したために拘束されてきた人たちを直ちに釈放すること。対象者には、天安門での抗議行動の再評価を求めた人たちや、その犠牲者を追悼する人たちも含む。

政府はこれまで、弾圧による人権侵害の責任を認めず、加害者を裁いてもいない。

あれから29年、犠牲者の遺族は高齢化し、裁判を待つ時間も尽きようとしている。わが子を失った遺族の団体「天安門の母たち」もそうだ。彼らも国に対して事件の真相解明や関係者の処罰などの正義を求めてきた。

「天安門の母たち」の広報担当によると、グループのメンバーのうち51人がすでに他界した。そのうちの1人は、「政府の事件に関する見解が変わるとは思わないが、決してあきらめない」と言い残して逝ったそうだ。

一方当局は、軍による弾圧を批判する意見やコメントを検閲し、天安門事件の犠牲者を追悼すると、嫌がらせ、弾圧、起訴をしてきた。

2016年5月、符海陸(Fu Hailu)さん、陳兵(Chen Bing)さん、張隽勇(Zhang Zinyong)さん、羅富誉(Luo Fuyu)さんの4人は、天安門事件を追悼する白酒(パイチュウ・中国でよく飲まれる酒)を製造・宣伝して逮捕され、昨年3月、国家政権転覆扇動の容疑で起訴された。その後2年が経つが、いまだ裁判は始まっておらず、さらに最高人民法院はこの5月、審理の3カ月延期を決めた。

活動家の史庭福(Shi Tingfu)さんは昨年6月4日、南京大虐殺記念館の前で「6月4日を忘れてはならない」と演説をして逮捕され、今年2月、騒動挑発罪で懲役1年、執行猶予18カ月を言い渡された。

自由アジア放送によると、ウイグル人の自治体職員2人が5月、天安門事件に関わる英文のレポートを閲覧したことが「表裏のある偽善者の行為だ」とされ、懲役11年を言い渡された。この罪は、漢人の権力者側がウルグル人の政治的忠誠心に疑いをかけるときに適用されてきた。

民主化運動の活動家、董廣平(Dong Guangping)さんは、2014年2月の天安門事件の犠牲者の追悼式に出席して以来、さまざまな圧力を受けてきた。2015年9月にはタイへ逃れ、難民認定を受けたが、その年の11月、中国に強制送還され、国家政権転覆と不法出国の容疑で起訴された。

詩人で活動家の朱虞夫(Zhu Yufu)さんは、「是時候了(時が来た)」という詩を発表した。この詩が、国家政権転覆扇動罪にあたるとして2012年2月、懲役7年の刑を受け、釈放後は監視下に置かれてきた。

詩の仮訳は、「時は来た、中国の人びとよ/広場は皆のものだ/脚は自分のものだ/自分の脚で広場へ行き、選択をする時だ」。

天安門事件から29年目を迎える今、まさしく時は来た。

中国政府は、いつまでも責任逃れはできない。事件に関わる声や追悼行為を封じ続けることもできない。今こそ天安門事件を直視し、犠牲者家族に対し、真相の説明や加害者の処罰などの正義を果たす時である。

アムネスティ国際ニュース
2018年6月1日

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