ベネズエラ:空腹と処罰で市民を抑圧

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2019年2月28日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ベネズエラ
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ベネズエラの旗をもって抗議する人たち © Roman Camacho/SOPA/LightRocket/Getty
ベネズエラの旗をもって抗議する人たち © Roman Camacho/SOPA/LightRocket/Getty

ニコラス・マドゥロ大統領が統制を強化する中、治安部隊はこの1月下旬、抗議デモの関係者らに対し、武力と暴力で対応し、数百人を恣意的に拘束した。

ベネズエラの市民は長年、食料や医薬品の不足、ハイパーインフレ、暴力、弾圧などによる深刻な人権の危機に見舞われてきた。そんな中、国を脱出する人が後を絶たず、2015年以降では300万人以上が国外に逃れてきた。

厳しい状況の中、多くの人びとが政権交代を求める抗議デモに参加した。1月21日から25日にかけては、食糧の配給が制限された貧困地域の住民などによるデモがあちこちであった。

5日間のデモで、少なくとも41人が銃弾を受けて死亡し、900人以上が拘束された。

アムネスティは1月末から2月中旬にかけて、ララ州、ヤラクイ州、バルガス州、首都カラカスで聞き取り調査を行い、15件の人権侵害を明らかにした。

それぞれのケースは、治安部隊が、政権批判を効果的に抑え込む目的で、処刑対象を選んでいる点で共通していた。当局は、被害者に落ち度があったとしていずれの殺害も正当化した。

超法規的処刑

アムネスティは、6件の処刑について詳細に調べた。

いずれの被害者も、殺害される数日前にあったデモに関わり、SNSで大統領を批判し、その書き込みが拡散していた。また、6人とも治安隊員との小競り合いで亡くなったと発表され、殺害現場はそのように偽装された。

スアレスさん(29才)は1月24日、ララ州カロラの自宅で急襲した部隊に射殺された。犯行の痕跡は、消されていた。その前日、ネット上で拡散された大統領抗議デモの計画の中に、主催者の1人としてスアレスさんの名前があった。

恣意的拘禁

ベネズエラの人権団体フォロペナルによると、1月21日から月末にかけて、全国で137人が法的な根拠なく拘束された。アムネスティは、そのうちの6人に聞き取りをした。

その中の4人(いずれも10代)は、裁判所命令で8日間、拘束された。そのうちの4日間は、軍のリハビリ施設に入れられ、頭を剃られ、洗脳教育を受けさせられた。

4人の拘束命令を下した判事の1人が、「収監を継続するよう命じられた」と公表して解任された。裁判を待つ4人の勾留は、今も続く。

政治、経済、社会のすべてに行き詰まる中、4人の若者は、食事や衣類に事欠き、勉学もできない状況にいらだちを隠せなかった。「ベネズエラを出たい」ともらす人もいた。

予備審問への勧告

ベネズエラは、抑圧政策に終止符を打ち、人権侵害の被害者に対する正義、真実、賠償の義務を果たすべきである。しかし、自力での遂行には障害があるため、アムネスティは国連人権理事会に対し、ベネズエラの人権状況を監視・報告する独立した調査機関の設置を要請する。

また、国際刑事裁判所は、すでに進むベネズエラの公判前の予備審問でアムネスティが特定した人権侵害の事案を審理に組み込むようにするべきである。

さらに、各国は、普遍的管轄権の適用の可能性を探るべきだ。外国による司法手続きは、自国で正義を期待できない被害者にとって、大きな救いとなる。

アムネスティ国際ニュース
2019年2月20日

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