スリランカ:死刑で薬物犯罪はなくせない

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2019年4月 7日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:スリランカ
トピック:死刑廃止

マイトリーパーラ・シリセーナ大統領は薬物犯罪の撲滅に向け、43年ぶりに死刑を再開しようとしている。しかし、死刑で薬物犯罪をなくせると考えているのであれば、それは誤りである。

スリランカでは死刑執行は長年なかったが、死刑判決は出している。判決は国際法あるいは国際基準に違反するかたちで下されることが多く、不公正な裁判によって命が奪われる危険性は拭えない。また、他の国の例を見れば、死刑に特別な犯罪抑止効果があるわけではない。死刑判決を受けるのは社会的弱者に偏りがちという問題もある。

死刑が薬物犯罪を抑止するという根拠はなく、犯罪者を処刑すれば薬物問題が解決するわけでもない。

一方、死刑をやめた国の統計を見ると、死刑廃止は、以前は死刑を科していた犯罪の増加につながっていない。

薬物犯罪に対する法律を見直した国もある。例えば、マレーシアでは一昨年、薬物犯罪に適用する刑罰に幅をもたせた上で、死刑の執行停止と死刑関連法規の見直しを発表した。イランは、直近の法改正の結果、薬物犯の死刑執行が著しく減少している。

国連の専門家やスリランカの国家人権委員会が指摘するように、スリランカでは、暴力などによる自白の強要が日常的に行われている。その点を考えると、死刑を言い渡された人たちの裁判が、国際的に求められる公正な裁判の基準に達していない可能性は高い。

完全無欠な司法制度はないし、失われた命は、戻らない。無実の人を死刑にするおそれは常につきまとい、一旦、なされた不正義は、あがないようがないのである。

また、他国の事例が示すように、人種、民族、宗教などの違いによる社会的弱者や少数者が死刑判決を受けやすいという問題も忘れてはならない。

アムネスティは、スリランカ政府に対し現行の死刑執行計画を破棄し、死刑の完全廃止を視野に入れた死刑の執行停止を決断すべきである。

スリランカは、40年以上にもわたり、残虐で品位を傷つけ、非人道的な、この刑罰を執行してこなかった。命を尊ぶこの伝統を守りぬくべきである。

アムネスティ国際ニュース
2019年4月3日

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