- 2019年9月14日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:南スーダン
- トピック:
アムネスティ・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、リーガル・アクション・ワールドワイドは、2016年のテレインホテルでの兵士による性暴力と殺害事件をめぐる裁判で、訴訟記録の紛失により控訴審の審理が停止したままであることを批判した。
2016年7月11日、兵士集団がジュバのテレインホテルを襲撃し、少なくとも5人の救援活動者に強かんなどの性暴力を加え、ジャーナリスト1人を殺害した。この事件で兵士10人が罪に問われ、昨年9月の一審で、被告たちに対して、強かん被害者に一人当たり賠償金4000米ドル(約40万円)、死亡したジャーナリストの家族に牛51頭の提供を命じる判決を下した。
これに対して、被害者たちは、賠償内容が犯罪の重大さ、受けた精神的苦痛とあまりにもかけ離れているとして控訴した。被害者の1人は、「この判決で、2度目の人権侵害を受けた気がする」と怒りを隠さなかった。
ところが、一審判決を出す直前の2018年9月6日、確認を得るためにキール大統領に送致された訴訟記録が、行方不明になってしまったのである。控訴審には、訴訟記録不可欠とされる。複数の国連関係者らは、書類が本当に大統領官邸で失くなったのか疑問視する。
「書類紛失で審理ができないというのは、許しがたい。当局は、審理を阻止する目的で故意に書類を隠していないか確認しなければ、二審を開いてはならない」とリーガル・アクション・ワールドワイドの創設者のアントニア・マルビー事務局長が語った。
「被害者や家族らは、すでに多大な苦痛を味わってきた。裁判の引き伸ばしは、彼らの苦痛を長引かせるだけだ」とアムネスティ東アフリカ地域のセイフ・マガンゴ副部長は語った。
被害者は賠償を受ける権利を、加害者は迅速で公正な裁判を受ける権利を、それぞれ保障されなければならない。
「この裁判は、人権侵害の責任を問う一歩だが、まだ終わっていない。書類の紛失で裁判が停まり、罪を犯しても責任を問われない南スーダンの悪弊が、ますます助長される」とヒューマン・ライツ・ウォッチのジュアンヌ・ヘンリーアフリカ副局長は語った。
性犯罪が横行する南スーダンでは、2013年以降、紛争における戦術の一つとして性暴力が利用されてきた。今回の裁判は、今後の強かん事件に対する判例とし大きな意味を持つだろう。
これまでに大勢の女性や少女、男性や少年が、強かんや拉致に巻き込まれ、心に深い傷を残してきた。にもかかわらず、加害者は、逮捕されることも処罰されることもなかった。
一例は、政府軍による強かん被害者たちが2017年2月から裁判を待っている。他にも、北部の町ベンティウで複数の強かんがあったという報告は、強かんを示す明らかな証拠があったにもかかわらず、政府によって「虚偽」だと退けられた。
テレインホテルでの性暴力事件で、加害者に有罪判決が出たのは正義への一歩だが、結審まで公正な審理が尽くされなければならない。
最高裁長官の今年8月、家庭内性暴力を含む性犯罪に特化した裁判所を設置する計画だと語った。
南スーダンの法律では、テレインホテルの事件のような民間人を巻き込んだ犯罪は、軍事法廷でなく文民法廷で裁かれる。
アムネスティ国際ニュース
2019年9月6日
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