南スーダン:今も続く武器違法使用 国連は禁輸継続を

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2020年5月15日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:南スーダン
トピック:地域紛争

(C) ALEX MCBRIDE/AFP via Getty Images
(C) ALEX MCBRIDE/AFP via Getty Images

  • アムネスティは南スーダンの12軍事施設を現地調査
  • 調査と衛生画像から複数の部隊での武器禁輸違反が判明
  • 子ども兵士、武器の不法隠匿・拡散も確認された

 

アムネスティは停戦合意後も治安情勢が安定しない南スーダンで現地調査を行い、複数の治安部隊による武器禁輸措置の違反行為と武器の不法隠匿を明らかにした。同国に対する武器禁輸措置の期限がこの5月末にくるが、国連安保理は同措置を更新し、強化しなければならない。

今年初旬、アムネスティの調査団は全土12の軍事訓練施設や野営地に入った。施設はかつての反政府勢力である南スーダン人民防衛軍(SSPDF)、スーダン人民解放軍 (SPLA-IO)、南スーダン野党同盟(SSOA)や警察、消防、野生生物保護局などが運営するものだ。

アムネスティは、小型武器・弾薬の輸入、武器の不法隠匿、軍用装甲車の転売を示す証拠を入手した。政府と元反政府勢力らが行ってきた武器をめぐる報告は、東アフリカ諸国からなる政府間開発事業機関(IGAD)をあからさまに欺いており、第三者による徹底検証が急がれる。

アフリカ連合は2020年を大陸から銃声をなくす年と位置づけ、武器禁輸違反を阻止する対策を打ち出している。南スーダンへの禁輸措置の更新は、その意味でも重要だ。

国連の武器禁輸措置は万能薬ではないが、この措置がなければ、状況が悪化するのは目に見えている。停戦合意違反が頻繁に起こり、治安の安定化、ガバナンス、説明責任などへの対応が遅れる一方だ。

南スーダンも現在、コロナ感染で公衆衛生の危機に直面しており、武器の輸入どころではないはずである。

明らかな武器禁輸違反

アムネスティの調べでは、兵士が手にする銃のほとんどは、2018年7月に南スーダンに対する国連安保理の禁輸措置が始まる前に流入した武器だった。しかし要人護衛の中には、以前には流通していないはずの東欧の武器モデルを所持している人物もいた。これらの武器は、禁輸措置に違反する形で南スーダンに持ち込まれたと考えられる。

また、首都ジュバ郊外の秘密基地で国家安全保障局(NSS)隊員が使用する弾薬の写真を入手したが、弾薬は2016年製造の中国製だった。中国から南スーダンへの最後の輸入が記録された後に作られたものであり、その入手は、武器禁輸違反か第三者ルートでの、違法なものということになる。

小型武器だけではない。情報筋によると、武器禁輸措置が課された頃、戦闘ヘリコプターMi-24を搭載した艦隊の機能が麻痺し、座礁したことがあった。その後、政府は禁輸措置をかいくぐってMi-24を修理する部品を調達している。衛星画像の分析からは、2018年に複数のMi-24が、大規模な保守の後に数度の飛行をしていたことがわかった。

昨年3月に2機が、今年2月には1機の姿が見えなくなった。飛び立った理由はいくつか考えられるが、昨年3月の場合は、南部イエイで救国戦線との戦闘だろう。Mi-24ヘリというのが特に懸念される。政府は攻撃機を使ってロケットや機関銃で地上の標的を攻撃し、違法に民間人を殺傷していたという前歴がある。

Mi-24ヘリは、1機3,600万米ドル(約38億円)もする。国連の武器禁輸措置に抵触する場合、部品やメンテナンスは特に高額になる。南スーダンの社会福祉制度が巨額の資金不足に直面し、コロナ危機で一層、逼迫している今、国の予算は、武器の購入ではなく、市民の健康と安全に向けられるべきである。

武器禁輸措置は、今後も継続されるべきであり、禁止免除の物資に対する第三者の検査を義務付ける必要がある。

禁輸をすり抜ける武器

政府と反政府勢力間で2018年9月に結ばれた「衝突解決合意」に基づき、兵力の移動、武器の差し出し、新たな軍隊作りのための統一部隊編成に着手した。

しかし、アムネスティが12 の軍事施設を見た限りでは、いずれの施設でも武装解除に向けた動きは確認できなかった。和平プロセスへの警戒感から、武器を差し出さない戦闘員もいたし、武器を持ってきても宿舎に隠してしまうこともあった。

唯一の兵器庫が設置されていたのはゴロムだった。そこでは要人護衛の特別部隊が結成され、訓練を受けていた。訓練を指揮する英国の准将は、外交官や停戦監視員に対し、武器保管用にコンテナを用意したと説明したが、どのコンテナも穀物袋でいっぱいで、武器を置くスペースは残されていなかった。

南スーダン政府は、検査対象を慎重に選択し、戦略拠点への接近を阻止し、開示する情報の絞り込みに躍起だった。2018年12月には、停戦監視員らを拘束し暴行を加え金品を奪う事件まで発生した。

子ども兵士

調査中、少なくとも2つの軍事訓練所に、政府と元反政府勢力の中に子ども兵士がいることがわかった。ユニセフの推定では、昨年7月現在、子ども兵士が1万9,000人いるとされた。そのうち、今年2月7日までに解放されたのは53人に過ぎなかった。

2月、南スーダンと国連は、子どもに対する人権侵害の全廃に取り組む行動計画を作成した。この行動計画は、敵対勢力にも参加が呼びかけられ、スーダン人民解放軍と南スーダン野党同盟は、同計画を受け入れた。

行動計画の調印から2週間後の2月26日、子ども15人が解放されが、加害者を裁き、子ども人権が守られる社会を実現するには、さらなる取り組みが必要である。

武器禁輸違反以外にも、同国は、合法的に入手した武器の販売契約でも違反行為があった。2014年、カナダの武器大手ストレイト社から警察活動の名目で装甲車を購入したが、アムネスティが入手した写真から実際には軍事作戦に使われていたことがわかっている。また、この数年、激戦が続く地域でもストレイト社製の装甲車を確認している。これらの事実は、政府による不正流用を裏付けている。

国連は、南スーダンが武器の不法隠匿を完全にやめるまで武器禁輸措置を続ける必要がある。治安が最悪である一方で、子ども兵士の徴用を続けるなど、国際法に違反する行為が後を絶たない。南スーダンは、こうした行為が違法であることを再認識し、問題の解決に真摯に取り組まなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2020年4月30日

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