- 2019年11月13日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:トルコ
- トピック:
トルコ政府は、シリア東北部への軍事侵攻を批判する発言や報道への弾圧を強めており、これまでで数百人が拘束され、不当な容疑に問われている。
弾圧の対象はジャーナリストや報道関係者、SNS発信者、政治家、組合員などで、多数がテロ関連容疑で取り調べや恣意的勾留、移動制限命令などを受けている。反テロ法で起訴され有罪になれば、長期にわたる刑を受ける可能性がある。
トルコ軍が越境してシリアに入ると同時に、政府は、批判的なメディアやSNSの弾圧や、クルド人の権利の擁護に対する摘発の強化が始まった。
標的になる報道関係者
シリアに侵攻した10月9日の翌日、メディア監督機関は各メディアに対し、「兵士の士気を損ねたり、テロを助長するような情報で市民に誤解を招いたりするいかなる報道も、一切容赦しない」と警告した。
その日、報道関係者2人が拘束された。1人は、所属する日刊紙の公式ツイッターで「トルコの戦闘機が、民間居住区に空爆開始」というNBCの記事をツイートしたことで尋問を受けた。もう一人は、編集長をするニュースサイトで市民の死亡を報じて拘束された。2人とも「敵意と憎悪を煽った」として起訴された。
シリア侵攻を批判したり、平和を求めたりする意見をSNSに発信しただけで家宅捜索を受けたりや拘束されたジャーナリストも複数いた。
取り締まりの対象は、トルコのメディア関係者に限らない。フランスの雑誌編集者は、「民族浄化、エルドアンのやり方」と題する記事を書き、大統領側から「大統領への侮辱であり、トルコの法律違反だ」として告発された。
狙われるソーシャルメディア利用者
侵攻が始まってから1週間に、ソーシャルメディアアカウント839件、186人が、犯罪に関わるコンテンツを共有した疑いで拘束された。
1人は、「クルド人自治区が勝つ。戦争は反対」などをリツイートして、「テロ組織のプロパガンダ」の容疑で起訴され、海外渡航禁止と警察署への出頭を命じられた。他のSNS利用者もそうだが、容疑とされるツイート内容は、国際法で定められた犯罪に当たるはずもなかった。
ある弁護士はアムネスティに「『戦争』や『占領』という言葉やクルド人自治区名を使うことは、もはや犯罪である。司法の場で『戦争反対』は禁句だ」と語った。
野党系政治家や活動家も検挙
シリア侵攻は、政権が野党系の議員や活動家への弾圧を強化する格好の口実にもなっている。現在、数人の議員が、捜査の対象となっている。その1人は、メディアへのコメントやツイートで「政府は知っておくべきだ。クルド人に仕掛けたこの戦争は正当化できないことを」などと語っていた。
トルコ東南部のシャンルウルファ県の弁護士によると、10月9日と10日の2日間に少なくとも同県のクルド系人民民主党の党員や労働組合員ら54人がテロ対策警官に拘束された。
マルディン県では、人民民主党系の27人が、テロ関連容疑で拘束された。
また警察は、80年代、90年代に我が子が治安当局に拘束されて行方不明になった母親らが長年、毎週土曜に実施してきた平和の集いに対しても、「『戦争』を口にすれば、集会を解散させる」と警告した。しかし母親らは、軍事侵攻を批判する声明を読み上げ、たちどころに警官の襲撃を受けた。
軍事作戦の開始以来、トルコの国内には監視と恐怖の空気が重く漂い、恣意的な拘束やねつ造された容疑による戦争批判の封じ込めが日常化している。
トルコ当局は、自由な言論への抑圧や摘発をやめ、平和を求め、軍事行動に批判的な人びとに対する起訴を直ちに取り下げるべきである。
アムネスティ国際ニュース
2019年11月1日
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