- 2019年11月23日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イラン
- トピック:
国内外から入手した動画、目撃証言などで、イラン各地で始まったほぼ平和的なデモ隊に対して、治安部隊は過剰な力を行使し、多数の死傷者や逮捕者を出していることが明らかになった。
11月15日、ガソリン価格の突然の値上げで、経済危機ですでに困窮する市民の不満が爆発し、激しい抗議デモが始まった。
21都市で少なくとも106人が死亡したと伝えられたが、200人を超えるという情報もあり、実数は、かなりの数にのぼると推測される。
入手した動画には、治安部隊が、棍棒、銃器、放水砲、催涙ガスなどでデモ隊を追い散らす様子が写っていた。抗議する市民が退散した通りには、実弾の薬きょうが多数、転がっていた。
治安部隊は、過去においても平和的デモに対して殺傷武器をたびたび使用してきたが、責任を問われた者はほとんどいない。デモ鎮圧に殺傷力のある武器を使うことが国策となっているのではないかという深刻な懸念は拭えない。アリ・ハメネイ最高指導者ら政権幹部は、治安部隊にデモ鎮圧を指示する声明の中で、強硬手段を認めるかのように、抗議者を「悪党」と呼んでいた。
国際法では、身に危険が差し迫り、他の手段がない場合のみ、殺傷武器の使用を認めている。
何百人が抗議デモに集まった動画では、道路の封鎖に自分の車を使った人たちが、車から出る前に警官に車の窓をたたき割られている様子が写っていた。また、屋上やヘリコプターからデモの群衆に向けて発砲する狙撃手たちの姿もあった。
デモは当初、ほとんどが平和的だったようだが、治安部隊の攻撃が激しくなるにつれ、一部の抗議者が投石や銀行など建物の放火・破壊を始めた。
しかし、たとえ一部が暴徒化したとしても、当局のデモ隊への過剰な力の行使を正当化することはできない。
数人の目撃者によると、治安部隊は、路上や病院にあった死体や助けを待っていた負傷者を車両に載せて連れ去ったという。これまでにも、当局が、遺体を遺族に渡さなかったり、引き渡しても解剖を認めることなく埋葬させたりしてきた事例は、数え切れないほどある。
国営メディアは11月17日現在、今回の一連のデモで1,000人以上を拘束したと報じた。これまでの事例からすると、拘束されている人たちは、拷問など過酷な扱いを受けるおそれがある。
平和的に抗議しているときに拘束された人たちは、即時無条件で釈放されるべきであり、いかなる理由で拘束されたにしても、非拘束者への暴力は許されない。
アムネスティは、国連を含む国際社会に対して違法な殺害と、集会・表現の自由の権利を暴力的に抑圧したイラン当局の責任追及に向け直ちに行動を起こすよう求めている。
インターネットの遮断
抗議デモが始まってから数日後、当局はインターネットや遠距離通信をほぼ全面的に遮断し、ネット上でデモ鎮圧などの画像や動画が共有されるのを阻止した。インターネットの自由を監視するNGO「ネットブロックス」によれば、イラン国内の接続率は通常の4%にまで下がっているという。
インターネット接続の意図的遮断は、表現の自由の権利を侵害するものであり、直ちに解除しなければならない。
周到に計画された弾圧
最高指導者、大統領、司法長官ら国の中枢を担う権力者らは、反政府デモを悪し様に批判し、参加者には治安部隊が実力行使に出ると警告した。
デモ初日から多数の死傷者を出したと報じられていたにもかかわらず、その翌日、内務大臣は、デモに対して「もはや寛容な対応はしない」と語った。司法や治安当局も、「違法な集会に関われば法的措置を受ける」などと警告する文書を大量に配信した。
アムネスティは、イランに対し、平和的な集会の自由と表現の自由の権利を尊重するよう求める。
イラン当局は、デモ隊を過激な手段で鎮圧する治安部隊の対応を抑え、これ以上の流血の惨事を回避しなければならない。長年続いてきた治安部隊による違法な殺傷とそれを処罰しない風潮に終止符を打つためには、第三者による公正な捜査を実施し、重大な犯罪や人権侵害を行った者の責任を問うしかない。
国連と各国は、今回のイランのデモ弾圧を強く非難するとともに、インターネット遮断の解除、国連による事実調査受け入れ、人権監視団による病院や拘置施設などの訪問を許可するよう、イラン当局に圧力をかけるべきである。
アムネスティ国際ニュース
2019年11月19日
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