- 2020年3月13日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イラン
- トピック:
(C) Amnesty International
昨年11月15日に始まった抗議デモでの武力鎮圧で、多数の死傷者を出したことはすでに明らかになっているが、その中に少なくとも子ども23人が含まれ、そのうち22人が銃弾に倒れていたことが、アムネスティの調べでわかった。
アムネスティは、動画や写真、死亡証明書、亡くなった子どもの親族や目撃者の証言、活動家らから得た情報を精査し、集計した。その結果、12才から17才の男子22人、10才前後の女子1人が、武力鎮圧の犠牲になっていたことが明らかになった。
全土に拡大したデモへの対応では、治安当局が殺傷武器を違法に使用したが、犠牲者に子どももいたとわかったことで、当局の残虐ぶりがあらためて浮き彫りになった。
死亡時の記録文書によると、死亡した子ども23人のうち、10人は頭部や胸部に被弾、大量の出血、頭部や心臓などの損傷などが致命傷になった。頭部への殴打、あるいは至近距離から放たれた金属球の被弾が、致命傷になった子どももいた。いずれの場合も、当局に殺害の意思があったことをうかがえた。
アムネスティが確認した23人の死が、13もの都市で発生していたことは、血の弾圧が広く組織的に行われていたことを示す。また、子どもたちの死亡日が、昨年11月16日と17日の2日間に集中しており、短期間でデモを封じ込めようとする当局が、手段を選ばなかったことを物語る。
イランは、公正で実効性ある捜査を拒否しており、国連人権理事会は、子ども23人を含む殺害の捜査を強制的に行う必要がある。
アムネスティは2月25日、イランのアブドッレザー・ラフマーニー・ファズリー内務大臣に名前、年齢、死亡場所を記載した23人のリストを送付し、コメントを求めたが、3月3日現在、回答を得ていない。
徹底した隠ぺいと嫌がらせ
これまでも、デモ抗議の犠牲者家族が、亡くなった家族のことを外で話題にしないよう圧力を受けていることが大きな問題になっていたが、今回も繰り返された。
家族らは、愛する子どもを失って悲嘆にくれる中、その思いを踏みにじるかのようなさまざまな嫌がらせを受けていた。
多くの家族が、メディアに話さないことや、遺体の受け取りと引き換えに、葬儀は当局の指示に従うことなどを当局に約束する文書に署名させられたという。さらに、当局の係員が、葬儀に出席し、その様子を監視する徹底ぶりだった。
家族は、当局の監視の下での手早い埋葬を強いられたという。遺族側が解剖措置を取ることを恐れたのである。
ほとんどの家族は、我が子がどういう状況でどんな傷を負ったのか、何が致命傷になったのか、何も知らされなかった。
遺体が家族に引き渡されるのは、湯灌も着替えも終わった後の埋葬の直前という家族も何件かあった。それらの家族は、当局員が立ち会う中で、遺体を包む白布をめくることも許されず、怪我の状況を見ることさえもできなかった。
また、銃撃など当局の違法性を示す証拠の発覚を恐れたのか、数家族は、携帯電話など子どもの所持品を返還してもらえなかったという。
いずれも、当局による露骨な介入と情報操作により、遺族の人たちは、愛する我が子の突然の死の真相を知ることもできず、満足な埋葬もできない事態に置かれている。
子どもたちの死をめぐる真実を遺族や社会から隠ぺいするために、当局がいかに腐心してきたかがうかがえる。
背景情報
昨年11月15日、イランでガソリン価格の突然の値上げに抗議するデモが発生した。当局が殺傷武器を使った鎮圧に乗り出し、18日までの4日間で、少なくとも死者304人、負傷者数千人、逮捕者数千人を出した。
アムネスティ国際ニュース
2020年3月4日
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