バングラデシュ:コロナ危機対応 取り残される高齢のロヒンギャ難民

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. バングラデシュ:コロナ危機対応 取り残される高齢のロヒンギャ難民
2020年4月17日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:バングラデシュ
トピック:

(C) Amnesty International/Reza Shahriar Rahman
(C) Amnesty International/Reza Shahriar Rahman

新型コロナウィスルがパンデミック(世界的大流行)となった中、バングラデシュ南東部コックスバザール郊外のロヒンギャ難民キャンプでは、高齢者が人道的対応から置き去りにされる事態が起きている。

高齢者は重症化するリスクが高いとされるが、対応から取り残されたロヒンギャの高齢者は、さらに悲惨な結末を迎えるおそれがある。

難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、ロヒンギャ難民は約86万人で、その内60才以上は、31,500人を超える。

バングラデシュ政府は、国連などの人道支援機関とともにロヒンギャ難民キャンプで、感染拡大を防ぐ取り組みをしてきた。しかし、支援が機能しているときですら、人道機関は、高齢者の対応に苦戦し、個別ニーズに応えられなかった。

健康、食料、衛生などの人道支援において、なぜ高齢者の権利が尊重されていないのか。多くの場合、支援を計画する段階で、高齢者の考え方や意見、そのニーズやリスクが考慮されていないからである。

今回のコロナ危機で同じ過ちが繰り返されているが、これでは高齢の難民の命を奪うことになりかねない。

まん延する恐怖

アムネスティは3月下旬、ロヒンギャ難民キャンプを訪れ、高齢者15人に話を聞いた。

話を聞いた高齢者の大部分が、新型コロナウイルスについての具体的な対処法などについて、ほとんど何も知らされていなかった。

大規模な集会の禁止や社会的距離(人と人との距離)の確保などの感染防止対策が指示される前から、ウイルスについての情報を共有する集会が何度か開かれていた。しかし、高齢者の多くは、集会の開催を知らされなかったし、知らされても体が不自由なため出られなかった。15人の中でも出席したのは1人だけだった。

一方で、聞き取りした中には、家族や隣人、宗教的リーダーなどから新型コロナのことや感染予防策などについて聞いたという人が何人かいた。

しかし、ウイルスがとても危険で、清潔が大事だなどという程度の情報であり、具体的な対応や注意点はほとんど知らされなかった。その結果、「ウイルスは怖い」という恐怖心だけが、一人歩きをしている。

届かない情報

バングラデシュ当局が昨年9月に電話やインターネットを遮断して以来、難民キャンプでは情報入手が制限されている。アムネスティや国連などは制限を直ちに解除するよう求めているが、解除されたとしても、高齢者の多くはスマートフォンホを持たないため、高齢者向けの取り組みが必要である。人道的対応では、情報や支援が家族を通じて高齢者に届くという前提で行われがちだが、これでは高齢者の権利が尊重されず、被害をもたらしてしまう。

もちろん、バングラデシュ当局と人道支援機関も、情報や対応策を一人でも多くの難民に届けようと、伝達方法などに工夫を凝らしている。

しかし、話を聞いた高齢者のほとんどは、当局、支援機関が情報を送っていることは知っているが、自分たちには、まったく届かず、届いても一部でしかないということだった。

正しい医療情報がないため、ウイルスから身を守ると謳ういかがわしい薬を買った人もいた。

対応の改善策

人道的対応では、ロヒンギャのボランティア・ネットワークを活用する必要がある。ボランティアは、避難所を回って高齢者が必要とする情報を提供したり、高齢者の要望を聞きだしたりすることができる。

また、高齢者は特に、必要な時に正しい情報を受け取ることが難しいため、その点を考慮した対応が求められ、ボランティアの人たちにも、この点を取り入れた研修を提供すべきである。

優先されるべきは、感染時の症状や予防策の正しい理解である。例えば、ほとんどの高齢者は、衛生的であることの大事さは知っているが、トイレの後や食事の前に手を洗うこと、子どもを汚い場所で遊ばせないことなどだと思っていた。大切なことではあるが、新型コロナ対策には十分ではない。

支援国、国連、人道団体は、高齢者、特に独居や自由に動けない高齢者が、感染防止に必要で十分な対応を取れるようにする取り組みが必要だ。

また、高齢者のニーズが高い医薬品に関して、難民キャンプ内の診療所には、高血圧などの非感染症疾患用の薬が不足しているため、一般の薬局を利用せざるを得ない。3月31日現在、開いている薬局の数には限りがあった。今後さらに減る可能性があり、この点でも高齢者に特段の対応が求められる。

今、高齢のロヒンギャ難民は、最も人道的対応から取り残されている上に最も重症化しやすいという最悪の状況に置かれている。

今こそ、高齢者が抱える問題をしっかり見据えることが必要である。

政府、支援国、人道支援機関は、新型コロナウイルス対策の中心に高齢者を据え、死をも招くウイルスから高齢者を守るべきである。

アムネスティ国際ニュース
2020年4月6日

英語のニュースを読む

関連ニュースリリース