- 2024年7月27日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:バングラデシュ
- トピック:表現の自由
バングラデッシュで公務員採用枠の割り当て(クオータ制度)復活に抗議の声を上げる中の改革を求めて、全土の学生が6日間、抗議の声を上げる中、当局は違法な力を行使し、各種施設の封鎖、交通機関の停止、インターネットの利用制限に加え、軍の出動、デモの弾圧、夜間外出禁止と違反者への即射殺命令の発動など、強行姿勢を強めてきた。
7月23日にはインターネットが一部で回復したものの情報網が遮断され、人権状況の把握が難しい事態が続いている。
アムネスティはこの状況に対応し、入手可能な動画や写真を検証した。動画の中には、治安当局が抗議する人たちに対して殺傷兵器を使用した事例を記録した3本の動画があった。
アムネスティの検証から、バングラデシュの現状がかなり深刻であることがわかる。政府と治安部隊がこれまでも深刻な人権侵害を犯してきたため、部隊の出動で抗議する権利が損なわれることが強く懸念される。とりわけ、インターネットや通信の利用制限や国外の監視の目が十分届かないため、その懸念は高まるばかりだ。
政府と関係機関は、抗議する権利を尊重し、直ちに弾圧を停止し、ソーシャルメディアの制限を解除すべきだ。
兵器の乱用と負傷者の放置
7月18日、デモ参加する男性が写った動画がソーシャルメディアに流れた。男性は大学生で、ダッカ近郊であった抗議デモへの参加時、警官隊と衝突した際に怪我を負い、その後死亡した。
アムネスティが検証した3本の動画は、この男性ヤミンさんを死に至らせる当局の卑劣な対応をとらえていた。
1本目の動画は、治安隊員が意識不明のヤミンさんを装甲車のルーフに乗せて走行しているところ、2本目は隊員がヤミンさんの頭部を路面に叩きつけているところ、最後の1本は、ヤミンさんを中央分離帯まで引きずり出して路上に放置し、その後立ち去る様子を撮っていた。ヤミンさんは負傷が元でその日のうちに死亡したという。
治安部隊の隊員が誰1人としてヤミンさんを手当しなかったのは、法執行官に負傷者への医療措置を義務づけている国連の基本原則に違反する。病理学者によると、ヤミンさんの死因は胸部に受けた銃弾が肺を貫通したことによる可能性が高いという。法執行官の発砲は極めて不適切だったと言える。
催涙ガスの危険な使用
別の動画では、大学の校門越しに隊員が催涙ガスを打ち込んでいた。大学内部を撮った動画によると、抗議する学生たちは封鎖された中庭に集まっていた。
これらの映像から、隊員は違法で不必要な力を行使したことがわかる。治安当局が化学的刺激物から逃れられない閉鎖的空間に向けて催涙ガスを発射したのは、決して許されことではない。地元のメディアによると、この催涙ガスで少なくとも30人が負傷した。
殺傷力がある銃器の使用
別の動画では、隊員がライフル銃で発砲していた。警察官ら数人が装甲車近くに立っていた。そのうちの1人は、動画の画面外の標的に発砲していた。
人が集まる場での警備に銃の所持は適切とは言えず、銃の使用はなんらかの暴力行為で死者が出るおそれがある場合のみに限られる。
当局は、「目標を発見次第、即座に射殺せよ」という発令を停止し、国内全域のインターネットを回復させ、軍を撤収し、抗議活動に対する軍や民兵の出動を停止をすべきだ。これらの抑圧的対応は抗議活動を封じ込むだけでしかない。
多数の学生が犠牲になったことを含めて当局が犯したすべての人権侵害に対して、適切な捜査を進める必要がある。また当局の責任者は、説明責任を果たされなければならない。当局の違法な力の行使による被害者や犠牲者家族は、補償を受ける権利がある。
背景情報
報道によると、抗議活動が激しくなった7月16日以降、死者200人弱、負傷者数千人、逮捕者2500人前後が出た。また、6万1000人が抗議関連の暴力で起訴されたという。
アムネスティ国際ニュース
2024年7月25日
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