サウジアラビア:劣悪な環境で拘束されるエチオピアの人びと

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. サウジアラビア:劣悪な環境で拘束されるエチオピアの人びと
2020年10月15日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:サウジアラビア
トピック:難民と移民

(C) iStockphoto.com/helenecanada
(C) iStockphoto.com/helenecanada

新型コロナウイルス感染症拡大を受けて3月以降、イエメン北部を実効支配するフーシ派は、エチオピアからの移住労働者や家族らをサウジアラビアに追放している。彼らはサウジアラビアで拘束され、壮絶な扱いを受けていることが、アムネスティの聞き取り調査でわかった。

アムネスティは6月24日から7月末にかけ、サウジアラビアの刑務所や拘置所に拘束されているエチオピア人12人にメッセージアプリを使って聞き取りをした。また、聞き取りで得た証言内容を動画、写真、衛星画像などで検証した。

より良い暮らしを求めて故国を離れた数千のエチオピアの人たちは、主に3つの刑事施設に拘束されている。女性、妊婦、子どももいる。部屋はどこも過密で場合によっては、350人が一部屋に押し込められるほどで、食事やトイレ、シャワーなどの衛生や医療面でも劣悪さは想像を絶する。

満足な食事や水を与えられず、病気になっても必要な治療を受けられないため、病気がまん延し、少なくとも7人が亡くなったという。実際の死者数は、もっと多いと思われる。あまりにも不潔で過密な部屋に24時間、閉じ込められ、病と死との隣り合わせの中で自殺をした人もいる。聞き取りをした人の中で2人が、自殺しようとする人に止めに入ったと話す。

治療を受けられない病人、けが人

エチオピアからの移住労働者らは、イエメンから国境を越えてサウジアラビアに入るや否や治安当局に拘束された。拘束された人の中には、国境での武力衝突に巻き込まれて負傷した人もいたが、サウジアラビアで拘束後、必要な治療を受けらず、傷が悪化し、命を失うおそれがある人もいる。

衛生面での問題も深刻だ。イエメンを出国するとき所持品をすべて没収されたため、着ている服以外、何も持っていない。施設によってはシャワーがなく、シャワーがあっても石鹸がない。また、部屋によってはトイレさえなく、床に用を足すしかない。トイレがあっても詰まっていて、ほとんど使い物にならないこともある。

その結果、どの施設でも、皮膚病、下痢、黄熱病などの病気が流行っている。この夏の数カ月は、酷暑にもかかわらず与えられる水は少なかった。新型コロナウイルスの感染が拡大しているだけに、不衛生は特に懸念されている。

拘束中の死

聞き取りをした12人全員が、刑務所で死亡した例を知っていた。4人は直接遺体を目撃したという。2人は自ら命を絶とうとした人を止めたと話す。収容されている人たちは、先が見えない不安、酷暑、不衛生、食料不足などの中、絶望感に襲われているのだ。極度の精神的ストレスから、独り言を言う、裸になる、小用をもらしてしまう人たちもいる。

また、イエメン滞在中に警官や越境請負業者に強かんされた人たちも多く、おぞましい体験がトラウマとなって今も苦しむ女性たちがいる。

妊婦や子どもがさらされる危険

拘束された人の中にはかなりの数の妊婦がいる。聞き取りしたうちの一人は、強かんされた妹がいるという。聞き取りした別の女性は、妊娠6カ月で、同じ監房に30人ほどの妊婦がいるが、どの妊婦も産婦人科医の満足な診察を受けられない。訴え続けてようやく医者に診てもらうことができたが、診察室に行く時は、2人1組で足を鎖で繋がれるという屈辱を受ける。診察や検査はおざなりで、超音波検査は受けられず、処方された薬は全員同じものだ。

妊婦の中には、出産した女性も数人いる。しかし、劣悪な環境とお粗末な食事でやせ細り、下痢を繰り返すなどして、母親3人、幼児3人、乳児2人の8人が命を落としている。

拷問と虐待

施設の環境や待遇を批判すると、背中に電気ショックを加えられた。証言者のうち8人は、刑務官から暴行を受けたし、他の人たちが暴行されるところも見ている。また、被収容者の中には、逃げようとして銃殺された人もいる。

アムネスティは、サウジアラビア当局に対し拘束されている全員の即時解放を求めている。また、当局は、収容環境を改善し、暴力的な扱いを停止し、収容されている人たちに十分な食事と水、衣類、医療などを提供するべきだ。また、被収容者に暴行した刑務官の取り調べと処罰が必要だ。

求められる国際協力

聞き取りに応じた12人のほぼ全員が、エチオピア大使館の領事を見かけたという。領事は、異常な収容状況を目の当たりにしているはずだ。また、12人は、大使館員と直接話しをする機会もあった。

しかし、10月2日現在、証言者の誰一人としてエチオピアへの帰国は実現していない。エチオピア政府は、検疫所の不足が受け入れの障害になっていると説明している。

新型コロナの流行で国内外の移動が制限される中、4月から9月までの半年間に、他国から34,000人超のエチオピア人が帰国した。その中には、サウジアラビアからの3,998人も含まれていた。そうであれば、サウジアラビアとエチオピア両政府の合意で、現在、拘束されている人たちも帰国できるはずだ。

アムネスティは、両国政府に対しエチオピアの人たちの自発的かつ安全で尊厳ある送還を実現するよう、両国が協力して取り組むよう求めている。

検疫所不足が送還の壁になっているならば、国際社会が、エチオピアが検疫所を確保できるよう支援すべきだ。そうでなければ、拘束されているエチオピアの人たちは劣悪な環境からいつまでも抜け出せず、事態は悪化するだけだ。

感染の大流行であれ何であれ、多数のエチオピア人を法的根拠なく拘束・拘禁、虐待していることは、決して正当化できない。

アムネスティ国際ニュース
2020年10月2日

英語のニュースを読む

関連ニュースリリース