- 2021年2月 9日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:中国
- トピック:
(C) AFP/Getty Images
香港政府教育局は2月4日、国家の安全を守ることに関する教育の指針と教育科目内容を各学校に通達した。指針には、生徒の振る舞いや言動を監視する特別チームの設置や教育課程で使用する学習や教材の詳細な規定などが盛り込まれており、校内での表現の自由を著しく制限する内容になっている。
指針によると、学校側は、校内での生徒や教員に対し政治的活動や政治的発言をしないよう求められる。また、国家の安全を危うくするおそれがあるとされる内容を含む教科書や教材を使用してはならないとされている。しかし、国家の安全が適用される範囲が広すぎ、意味が曖昧なため、校内での政府批判が、さらに抑え込まれるおそれがある。
校内での政治に関わる発言は、国家安全の問題ではない。その禁止は見境のない自由の制限であり、あからさまな人権侵害である。香港政府は、国家の安全を口実に、生徒の政治的意見を言う権利を奪ってはならない。
国際人権法では、国は、その存続や領土の保全を脅かす武力行使などの特定の脅威に対してのみ、市民の権利を制限することができるとされる。その点からして、校内での政治的議論や活動は、脅威になるはずがないのである。
香港政府は、校内での表現の自由を監視する口実に国家の安全を利用してはならない。
背景情報
香港政府教育局は、学校側に対し、香港の独立を求める文書などの掲示、政治的スローガンの斉唱、みなで手を繋ぐ「人間の鎖」など、校内での政治的言動の禁止を求めている。当局はこれらの行為が、国家の安全、国家の一員であること、法律遵守などの意識を高めるという観点に照らし、香港基本法、国家安全維持法などに抵触するおそれがあるとしている。また、平和で秩序ある校内環境づくりのための、学校運営、職員管理、生徒規律を監督する特別チームの設置も学校当局に求めている。
国際人権法によれば、国家当局が明らかに差し迫った暴力の脅威がある場合のみ、脅威となる表現の摘発が許される。しかし、政策の変更や政権交代の要求、国家制度や国家の象徴への批判や侮辱、人権侵害の訴えなどが平和的に行われた時は、処罰されることがあってはならない。
アムネスティ国際ニュース
2021年2月5日
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